工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

一仕事を終えて

横摺り

一仕事終えた後は皆さん、どうするのかな。
タバコを吹かす、コーヒーを煎れる、Macを叩く、一杯飲る‥‥
作業台周りを整理する、ま、さまざまだ。
画像はワークベンチのトップを横摺りしている、の図だが‥‥、
あるまとまった仕事を終えた段階で、こうした横摺りを行うことがある。
理由は簡単。
作業台というものは、様々な加工、仕上げのプロセスにおいて頻繁にに使われるものであり、家具制作環境において重要な位置を占めることは言うまでもない。
(途中だが「必須のもの」、と記述しようとして、止めた。作業台が置かれていなく、何と家具を機械の上で組んでいる工場があることを思い出したので‥‥)
それだけにかなり過酷な環境におかれているとも言える。
うちでも重厚な家具を制作することも多く、組み上げる時には大型のショックレスハンマーなどを用いるのだが、それだけに局所的に凹ましたりすることもある。
あるいは組み上げの際にカネ(矩)の修正で、ある部分をワークベンチ・トップに叩きつけることも屡々だ。

框組の場合のカネなどは、ハタガネなどの掛け方により修正することは可能だが、この一定時間の継続的な圧締よりも、むしろ衝撃力を加えての瞬間的な圧力でホゾの納まりを修正する方が合理的。
框組みの左右を両手に持ち圧力を加える側をワークベンチトップにバシッと叩き付ける。
(あまり使わない奥の方でやることが多いのだが、そこは凸凹しちゃっている)
序でに言ってしまうが、框組を組む際にその平面性が損なわれていた場合どうするか。
この段階でいい加減に組んでしまうと駆体にした場合のネジレがそのまま残り、歪んだ駆体になってしまう。
この修正はワークベンチの端に框を対角線上に置き、圧力を加える。
要するに両手で強くネジレ修正方向に圧力を加える。
この段階で修正できれば、そのまま正しくハタガネなどで圧締しておけば間違いない。


以上は前振り。
この横摺りはそれへの対応ではない。
既にお気づきの方もいると思うが、家具を組む際にはみ出たボンドなどがトップに付着することはある種避けがたく、この除去をしておかないとせっかく高精度に仕上げた板面に傷を付けることになってしまうことへの対応である。
局所的であればスクレーパーでも代用可能だが、スクレーパーでは平面精度を確保しながらの除去作業は困難。
やはり手鉋の裏金を引っ込め、横摺りするのが手早く、また賢明な手法と言えるだろう。
ところで、このワークベンチに関しては、このBlogでも断片的に触れてきてはいるものの、体系的な記述はしてこなかった。
特段の理由があるわけでもなく、ただ怠慢なだけ。
やはり時間的余裕が無いとできないので、手つかずということ。
なお、こうした横摺りはトップが無垢材だからこそ可能なのであって、合板で作ってしまった場合はやってはいけないよ。
合板などでの付着ボンドはどうするのか、って?
やったことないけれど、スクレーパーで合板のフェイスに傷つけないようにやるしかないだろうね。
デコラあたりを貼ればボンドの処理などは楽かも知れないな。
しかしいずれ局所的にダメージを受けて破損することは必定。
その場合は横摺りで修正、とはいかないね、やはり。
思い悩むよりも、やはり良い樺材を見つけてしっかりしたものを作ってしまおう。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • トップを無垢材で作る利点のひとつですね。
    私が下手に横ずりすると、逆に凸凹になるかもしれませんが(笑)
    私の作業台のトップは合板ですので痛んできたらトップだけ取り換えるか
    裏返して使うことになると思います。
    作業台特集、期待しています。

  • acanthogobiusさん、あなたほどの Hi アマチュアはぜひ無垢材で良いものを作ってください。快適な作業環境を作るためのものですし、また一生ものですので、それにふさわしいものを !
    >下手に横ずりすると、逆に凸凹になる
    さほど大層な技能ではないですね。
    刃を良く研ぎ、切削量を少なく(刃の出を小さく)腰を入れ、リズミカルに、安定的に、

  • お褒めの言葉をありがとうございます。
    artisanさんの「作業台特集」が始まったら参考にしたいと思います。
    これって催促?
    しかし、樺も最近は高価になりましたね。

  • 樺はストックがあるので最近の市況は分かりません。
    そんなに高価ですか。
    樺では真樺(別称:ウダイ樺)が望ましいところですが、雑樺でもある程度の径の良質なものがあれば代用できるでしょう。
    必要な材寸:3寸板、3寸角、2寸板、など

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