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G20金融サミットを終えて

ワシントンD.C.で開かれた第1回緊急首脳会合(金融サミット=G20)は「必要なあらゆる追加的措置」を盛り込んだ首脳宣言を採択し終えた。(毎日.jp
・各国の協力を強化し、金融システムの改革を進める。
・世界的な不況の連鎖を回避するため金融・財政政策の協調や国際通貨基金(IMF)などの融資を通じ新興国や途上国へ流動資金を供給することを確認。
・新興国の発言権の拡大などを含む国際金融機関の改革
・金融市場改革のための共通原則を採択
・2009年4月30日までに再度会合を開く
経済はかなり苦手なのだが、今回のG20緊急サミットで明確なことは、戦後国際経済の基軸であった金本位制に代わるドルを基軸通貨とするブレトン・ウッズ体制のほころびを取り繕うための緊急会議であったということだね。
首脳宣言を受けて市場での評価は必ずしも芳しくないようだが、底が抜けた感のある株価を上昇させるような気運をもたらす景気刺激策が謳われなかったことは確かだろう。
しかし問題は投資家達の当面する株価上昇の期待に寄与するものではなく、何と言ってもズタズタに信頼性が崩れたドルの信頼をどう取り戻すのかという1点に議論は集中したに相違ない。
さらに特徴を上げれば、いわゆるG8ではなく、BRICs諸国を含めたG20という構成そのものに今回の金融危機をめぐる本質の背景がある。
要するにG8先進国クラブだけで物事を解決することのできる時代では無くなっているということであり、BRICsもG8と肩を並べ対等な席を与えられているところに歴史の大きな転換期というものを感じるよね。


さらに言ってしまえば、もはや如何に日本の首相が〈「最大の債務国である米国のドル基軸通貨体制が安定的に持続するか懸念が存在する」とは認識しながら、「ドル基軸体制の堅持が必要だ」と述べ、基軸通貨としての役割を果たすことができるのはドルだけだ、〉と強調しても、しかしそれは客観性を欠いた単なる期待以上のものではなく、〈一方、フランスのニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領は「20世紀に確立された金融システムを21世紀も踏襲することはできない」と述べ、ドルが唯一の基軸通貨であり続けることは不可能だとの見方を示している〉ことに示されるように、今般の金融危機というものの本質がドルを基軸通貨とするところのブレトン・ウッズ体制の崩壊の始まりであることへの認識が重要なのだよね。
まさに第2次ブレトン・ウッズ体制へ向けての模索がこの緊急G20でスタートしたということだろう。
恐らくは日本の多くの人々は認めたがらないかもしれないが、歴史的なパースペクティヴで見るならば戦後における米国の覇権に代わり、多極的な新世界秩序へ向けて動き出しつつあり、基軸としての機能を持つかどうかはともかくも、人民元が大きな位置を示していくのだろうと思われる。
日本はと言えば上述したように、こうした歴史的変動期にあるという認識がどこまであるのかは知らないが、相も変わらず米国追随でドルにしがみついているという感だし、さらにまた「日本の経験を示し、新しい枠組みを主導し、具体的な提言も行った。」(麻生総理)と胸を張るが1997年11月の金融パニックを受け、その後この金融システムの安定化にまで何と6年以上の年月を費やしてきた日本が、それを誇らしげに語るほど立派なものであったなどとどうして言えようか。
欧米各国は今次の金融危機を受けて一気呵成に金融機関救済へ潤沢な公的資金を投入することで決定的な破綻を押しとどめているのであり、日本の事例はまさに反面教師のそれであったわけだ。
日本独自の内需喚起を軸とする景気対策もなんと「定額給付金」のばらまきという頓珍漢なもので、果たして国際的な信頼を醸成させることができるとでも考えているのだろうかね。
日本としては次回のG20を日本で開催したいとの希望を持っているようだが、サルコジ主導によるロンドンという線が強いようだ。
今回G20は死に体のブッシュがホストであったわけだが、次回は本格政権のオバマが世界の舞台に登場することになり、実質的な協議へと進んでいくだろう。
やはりそこで問題は、日本が現政権で臨むことになるのかどうか。
さっさと民意の反映した体制、つまり総選挙をバシッと決めてくれ !
それとともにこの未曾有の世界大的危機の回避へ向けての新たなブレトン・ウッズ体制というものは、決して戦争経済のそれであってはならないという願いである。
何故ならば戦後国際経済とは米国一極支配体制の下で、長らく冷戦体制を敷く中で限りない軍拡競争と、また世界の各地域における紛争、内戦、戦争と、いつ止むとも知れない戦争経済によって支えられたいたという本質を見たとき、今回の金融危機が教えるものは、そうした在りようの本質的矛盾の露呈に代わる新たな枠組み、経済哲学といったものが求められているものと考えていきたい。
本件、オンラインのニュースサイトを狩猟しながら考えてみたが、どうも日本のメディアサイトは元気がない。(危機意識の欠如の反映?)
詳しく知りたい人は「REUTERS」が素材、解説ともにまじめに取り組んでいるのでお奨め。
REUTERS
■REUTERS/特集 米金融危機の行方
■REUTERS/金融サミット:識者はこうみる

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