工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

郵便受けから嬉しさを

手紙
心ときめかす手紙が夕刊などとともに玄関の郵便受けに入っていた。
封筒は(イノシシくんなのかな、これって、)イラストが付いたポップで楽しげなもの。
青年期を除けばこういう手紙はあまりいただいたこともないので、それだけで心動かされるものだったが、宛名を見ると未知の人からのもの。
あれま、どこかですれ違って一目惚れされちゃった?
んなワケないか。
手紙は「突然のお便りで失礼します」との挨拶で始まり、およそ以下のように記されていた。
昨年の自宅新築でダイニングテーブルのセットを探し、○▽でテーブルを作ってもらった。
今度はカウンタースツールが欲しくなり、あちこち、ネットも含めて探したが良いのが見つからなかった。
そうした頃、立ち寄った店に置いてあった「暮らしの中の木の椅子展」チラシのスツール(ちょこっとハイスツール)写真ににひとめぼれ。
さっそく「小海町高原美術館」の展覧会会場に出向き、拝見、実際座ってみて更に一層惚れ込んじゃった。 ワォ !


そこでネットで工房住所を調べてお便りさせていただいた。

  • すべて木でできている
  • 安定して座れる広めの座面
  • カウンター下に納まる程度の低い背もたれがついている
  • 年配の母親にも動かせる軽量なもの
  • 見た目がシンプルであること

当初から考えていた、この5つの条件が満たされていて感動 !
等々。(ホントは、優しい女性の文体で書かれているが、気恥ずかしいのでママの引用は控えさせていただいた)
仕事の関係上いろいろとお手紙を頂くが、お若い女性からこのような定型的な挨拶、あるいは過度な装飾的な文面ではない、シンプルで適切に用件を伝え、そして心のこもったものをいただくことは希。
‥‥道で摺れちがったわけではなかったが、やっぱり一目惚れだったんだ。
言うまでもなく、このようにいろいろと探された結果、選ばれたものがうちのものだったというのは、この椅子に纏わり意図的に優位性を付与するような情報を排除したところでの選択、つまりご自身の美意識と、望まれる仕様においてジャストフィットしたものへの選択と言え、制作者としては素直に喜べるものだね。
もちろん、朝日新聞社のコンペの入選作、という属性は無視できないとしても、だ。
この人の眼に触れる機会を作ってくれたわけだからね。
実はこのスツールに関しては現在在庫は切れているものの、既にいくつもの受注があり、早く制作に掛からねばならない事情があっただけに制作態勢としても、このお話しはありがたい。
Tさん、お手紙ありがとうございました。
ご満足いただけるものを造りますので少しお待ち下さい。
※ 追記 (09/05/08)
うっかりしていたが、そういえばこの「暮らしの中の木の椅子展」の最後の巡回展がまだ開催されていた。
この週末、10日までの会期です。まだご覧になっていない方は以下のLinkを参照してください。
第6回暮らしの中の木の椅子展
小海町高原美術館
ハイスツール

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  • イノシシ君のパンツは郵便マークですか。
    手紙を前にニタニタしているオヤジの姿が目に浮かびます。
    気持ちは分かりますが。
    頑張って作ってあげてください。

  • 猪突猛進の“愛の告白”ですよ、acanthogobiusさん。(爆)
    (スツールへのものですがね)
    >手紙を前にニタニタ
    あなたにも少なくない数での経験がおありでしょう。

  • 再度のメールありがとうございました。自分のLOVEレター(?!)が公表されるのは何とも照れくさいような、でも気持ちを伝えられた達成感はなかなか気持ちよいものです。
    しかしながらS様の期待をうらぎるべく私は残念ながら「若い女性」ではなく小学4年生の息子を持つ母であります!
    あの便箋がまずかったかな、、、!?
    [絵本作家・故東くんぺい氏の便箋です]
    もっと沢山の方に「ちょこっとハイスツール」をみて、座っていただいて共感を味わってほしいです!
    それではS様また改めて連絡させていただきます。

  • Tさん、こちらへのコメントで恐れ入ります。
    >あの便箋がまずかったかな
    便箋の選択も含め、Young Heart ということで‥‥。
    (お声も若々しかったです)
    でもやはり、惚れられるというのは、正直嬉しいものですよ。
    あえてうちのようなところのものを、大切なお金を支払ってお買い上げ頂くという、「清水の舞台からの飛び降り」の如くの飛躍は、とても尊いものでして、本当に感謝しているのです。

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