工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

〈The Social Network〉オスカー主要部門は逃したがその威力は



週末は業務外の事柄など、例えばアート全般、IT情報機器関連、ネットメディア、あるいはエンターティメントなどについて書いていきたいと考えているが、映画をこよなく愛する者として02/28のアカデミー賞は外せない。
先のグラミー新人賞を取り上げたときのように、だね。
しかし意気込んではみたものの、今年の主要部門受賞作はあまり興味を惹くものが見あたらないという不幸に襲われている。

吃音の英国王の映画も、劇場でたまたま予告編を観たが、どうも本編を見るだけのインパクトは感じなかった。
事前の予想でも多くの話題を集めていた「ソーシャル・ネットワーク」(The Social Network)は早々と観たが、編集賞、作曲賞のみの受賞で、主要部門には届かなかった。
吃音と早口の対決などと揶揄されもしていたが、ハリウッド映画にも新しい世代が誕生しつつあることだけは確認できたので良しとしよう。

しかし受賞作品のどれをとってもあまり食指が伸びないというのも、ボク自身の鑑賞眼の貧困さを表すものなのか、あるいはカンヌ映画祭、ベルリン映画祭の方にこそ、現代社会のある断章を描き出していると考えることの偏倚の方を問題にすべきなのかは、問わずにおこう。

さて「ソーシャル・ネットワーク」はFacebookの創業者マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)を描いたもので、それなりに楽しめたが、しかしボク個人としては会員の一員になろうとは思わない。
ネット上でのコミュニケーションツールとして、かなり魅力のあるシステムだとは分かってはいても、登録と同時に住所録を覗き見されてしまうような作風には馴染まないしね。

またそうしたSNSとは目的も手法も異なるものの、このBlog運営管理で十分にネットに晒しているので、これ以上にバーチャルな世界に耽溺するのは心身のバランスを崩すようなキケンを感じるしね。


しかしところで、この間の中東・北アフリカを席巻している「ジャスミン革命」はすごいね。
数日間の抗争で、盤石のものと思われてきた強権的な政権がぶっ倒れてしまうのだから。
しかも中東・北アフリカ全域へとドミノ倒しの如くだものね。

さてこれらの怒れる市民たちの動員のツールとして有効活用されたのがSNSだったというのだから、驚きというか、あっぱれ ! といった感じでTVモニターに釘付けになってしまっていた。

東西冷戦がベルリンの壁崩壊で終焉を告げるという、戦後最大のエポックというものには、衛星TVが大きな影響を与えたと言われているが、この度の民主化要求のうねりはネット社会が準備したというのだから、その影響力の大きさ、広さ、深さにあらためて感じ入ってしまう。

例えば息子ブッシュによるイラン侵略戦争だが、あれは果たして米国としては勝利した戦争だったのだろうか?
目的の1つだったはずの民主化は果たしてできたのだろうか?
アフガンではどうなの?

実はご存じのように、この度の中東・北アフリカを席巻している「ジャスミン革命」に、米国は何らの影響力も発揮していたとは思えないよね。
影響力を発揮しようにも、アメリカの手の届かぬ別次元のところでの民衆革命だったのだろうから。(ALJAZEERAサイト:「18日間のエジプトの革命」

エジプト民衆のあの弛まざる激しい抗議とデモの波には、洞察力のありそうなオバマ政権でさえ、方針定まらず小田原評定の様子ありありで笑ってしまった(国務長官クリントンのあの苦々しい顔が象徴していた)。
(今や新政権構想に何としても影響力を行使すべく介入しているはず)

これは何を意味しているのだろう。
傾きかけているとはいえ、世界最大の国が莫大な予算と軍事力を投下し、先制攻撃を仕掛けてはみたものの、結局はすさまじいまでの累々とした屍の山を築くことはしても、なお、抵抗する市民の怒りを封じ込めることにはならず、いよいよ混乱を増大させ、世界を危ういものへと追いやっているだけなのに、
一方ではわずか数日、数週間にして強権を誇ってきた政権がぶっ倒れてしまい、何とそれが掌中に収まるケータイでのSNS接続が有効機能し、自律(自立)した民衆の力でやり遂げてしまう、というこのパラドキシカルな事象。
これにはホントに刮目させられてしまった。

民主化などという政治的転換などは外部的な力学で為し得るわけが無く、「ミネルバのフクロウは黄昏て飛びたつ」の至言と同時に、内発力の高さがあってはじめて為し得るものであることは、これまでの世界の歴史の教えるところだが、この系譜にまた新たなページが加わったというところか。しかもSNSという解説を付して‥‥。


そろそろメディアもホントの事を語るべき時だろう。
アメリカがなにゆえに戦争を欲するのか、なにゆえに日本政府がホイホイとくっついていくのか。
民主化など、他国がけしかける戦争などで強行的にできるはずもなく、そのねらいは明らかに他にあると思わない?。

ここではこれ以上のことは語らずにおきたいが、今回の中東・北アフリカを焦点として考えれば、目的とするねらいを完遂する手段の1つ、イスラエルの全面的な支援とそのための対イスラム諸国への飴と鞭の内外政策に大きな綻びが生じつつあるということは論を待たないのでは無いだろうか。

この地域にパラダイムシフトが起きつつあることは疑いが無く、注視していきたいと思う。

こうなったら、北朝鮮の人々にも、SNSアプリをセットアップしたスマートフォンをばらまくというのが、強権政治をぶっ倒す早道かもしれないな(笑)
いずれにしても、どこそこのだれかがしきりに煽っているような、戦争を仕掛けることでは何らの解決に繋がるわけもなく、自律した市民の決起に依ることでしか、革命は起こらないということだけは、今回の「ジャスミン革命」があらためて教えてくれたと思う。

彼らに心からの祝福を送りたい。

さて今週のYouTube、先のグラミー賞(53rd Grammy)授賞式に色を添えたボブ・ディラン(この5月に70才になる)のパフォーマンスを届けよう。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=MGpwqBZMKyE&feature=related[/youtube]

《関連すると思われる記事》

                   
    

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.