被災地に深く頭を垂れ、祈りを捧ぐ
いよいよ復旧、再建へ歩み出す、といきたいところだが、混乱はいや増しにその度合いを深めているかのよう。
先に記したように、私の従兄弟のうちの一人は無事であったことを、その時間に勤務していた職場の同僚に確認することができ、少し胸を撫で下ろしたのだが、彼の家族を含め、未だに消息は掴めない。
というよりもTVモニターから真っ赤の炎に染まった石油コンビナートの近隣に居住する1つの家族については悲観的に考えるしかない。
超高齢者のボクの母親は生地の悲惨な状況にうち沈み、床に伏してしまっている。
さて、混乱というのは、言うまでもなく福島原発の再度の水蒸気爆発とその後の炉心溶融に至ると思われる事態の推移であり、そして東電の計画停電をめぐる混乱だ。
福島原発をめぐる懸念
被災後、連日報じられる新聞紙面の一面に大きく踊る文字は福島原発についての異常事態の極限的な進行だ。
政府当局者、能吏の如くの枝野官房長官の「放射性物質が大量に漏れ出す可能性は無い」とするブリーフィングには慇懃で的確な解説だけに、かえってその裏にあるホントの事はどうなん?とつい考えてしまうが、
次々と生起する新たな事象、例えば格納容器建屋がすさまじい爆発を起こして屋根と一部の壁面を吹き飛ばすといった怖ろしい事態が、その疑念を否定することの困難さを逆に証明してしまっている。
メディア、例えばNHKの御用学者、専門家の解説は、「念のために‥‥、10km遠隔地に退避してもらうということ、あくまでも念のため、ですよ、これは‥‥」などと、その席にいるのが辛くてたまらないと言うような姿を晒し、学会権威のなんたるかをボクたちに教えてくれている。
今夕の報道では福島第一原発1号機、2号機に続き冷却系がダウンしたと伝えられていた3号機は、ついに、ついに、禁句であっただろう「燃料棒全体が露出」(=炉心溶融ということでしょう)に陥ったことを認めたようだ。(jijicom::2号機燃料棒、一時すべて露出=炉心溶融否定できず)
asahi.comによれば「海水での冷却作業の注入に使うポンプの燃料が切れていた」というのだから、もはや何をか言わんや、である。
この種の情報と、評価というものは、科学的見地に立ったものであらねばならないので安易な物言いは避けたい。しかし、である。
建屋を吹き飛ばすという爆発的事象は原子炉容器、格納容器の破損ではなく、建屋内での水蒸気爆発であったことも確かなのだろう。
また現在のところ漏れ出している放射能も大量なものではないといわれるのも、信ずるに足るものであるかもしれない。
ただ一方100km北に立地する女川原発で放射線量の異常数値を示したという事態も、福島第一原発のものである可能性があるとの報道もある(ANN
客観的に観ればスリーマイル島事故をなぞっているかのような推移と考えても間違いないのではないだろうか。
格納容器の設計者などの話に依れば、海水で冷却するなどと言う緊急事態などといった事態は設計段階においては全く想定外のことで、現在の状況は現場のギリギリとしたところでの最善と思われる独自の判断で進めているのだろうから、それを信頼するしかない、という。
詳細は13日17時から都内で行われた「原子力資料情報室」主催の記者会見をご覧いただければと思う。(USTREAM)昨日のLiveでは50,000人ほどが視聴していた。
ぜひ、情報は隠すのではなく、現地住民が自律して安全に被爆のリスクから逃れられるような、適切にしてタイムレス無く、届けられねばならない。
ただ一言だけ付け加えさせていただくとすれば、作業員の献身的な姿勢である。
全く頭が下がる。
放射線量計を首からぶら下げ、まともな呼吸すら困難と思わされるような防護服に身を固め、SF世界の如くの様子は別世界のものであるかのようだし、今般の事故対応は、まさしく命を賭した危険な作業である。
彼らによってはじめて、このMacも使え、エアコン環境に安住できるのだから。
計画停電をめぐる東電の混乱
昨夜来の計画停電は混乱を極めている。
ボクの居住地は対象外という呑気さもあるのか、過度に東電の責めを求めようとは思わない。
こんな事はかつて無かったことだろうから、電力マンこそが混乱の極みにあることも理解したい。
そうした前提に立ってもなお、今回のドタバタ劇は及第点を差しあげるは甘過ぎだろう。
一民間企業であれば、恐らくは会社の命運を決定づけてしまうようなお粗末さで、九電力態勢という戦後の電力・配電網の再編、独占企業ならではの悪しき態勢、振る舞いが起きてしまったという側面もあるのだろう。
さて、それはともかくも、列車を止めてしまう、交通信号を点かなくさせてしまう、病院運営まで困難をきたす、という、「計画停電」なるものは、いかに今般の緊急事態を受けてのものとしても、果たして多くの市民的合意を取れるものなのだろうか。
電力消費の抑制というテーマを考えた時、もっと他の態勢では考えることができないものなのだろうか。
例えば‥‥
- TV放送時間帯の制限
- コンビニなど商店の夜間照明の抑制
- 屋外自動販売機の運転停止
- 個々の家庭における電化製品、待機電力消費を無くすためにプラグを抜く
etc.
- TV放送というのものは言論の自由、放送の自立、ということからして、安易に論ずるべきものでは無いとしても、深夜遅くまで放送する必要性がどこまであるのかは、議論の対象になっても悪くは無いのでは。
ボクの印象では、番組の少なくない数であまりにも浮薄なものが多すぎはしないか。 - コンビニ深夜遅くまでの目もくらむばかりの煌々とした照明は如何なのだろう。
営業時間も24hである必然性はどこまであるのか、再考をしても良いのでは - 自動販売機などは、基本的には撤去しても良いとさえ考えているが暴論か?笑
- 個々の家庭における電化製品の待機電力消費を無くすためにプラグを抜くというのも、ミニマムな効力しか無いとしても、省電力の理念を自覚するという意味合いは決して侮れないのでは?
隣町に住む弟は都内の民間企業に新幹線通勤しているが、先ほど帰宅したところを電話で捕まえて聞いてみた。
新幹線はガラガラだったそうだ。
それもそのはず、在来線がストップしているからで、また地震被災を受け、大変な復興時期であるにも関わらず、出勤してくる手段が無く、半分の職員でやり繰りしていると言う。
東京電力の振る舞い、それに直対応するしかないJR、電鉄会社は産業を停止させるつもりなのか。
禍根を遺すような対応ではなく、この国難と言われる事態を乗り切り、さらには誤解を招く言い方になるかも知れないが、あえて言わせていただければ、この災難を奇貨として、ボクたちの暮らし方、生活のありよう、あるいは愛しい生命を慈しみ、豊かな精神生活を基盤としたコンパクトで快適な生活基盤を再興し、再生させるという希望を持って、立ち向かっていければと念ずる。
ボク個人としても、哀しみに沈む被災地の方々にいったい何がができるのか、うすぼけつつあるかもしれない小さな頭脳と、熱い思いに託して、一歩踏み出せたら良いのに、と思う、春間近の宵だ。
今はただ被災地に向かい頭を垂れ、祈りをするしかない。
今、東北の従兄弟の同僚からメールが入り、本人は地震の時間帯は勤務していたものの、発生2時間後に津波被害があった地域の自宅に帰った後、連絡が途絶えているとのことだった。
carole kingの〈you`ve got a friend〉を貼り付ける
ソロが良いと思ったが、Celine dion, Shanaia Twain, Gloria Estefan.3名の歌姫がキャロルキングに合わせているビデオがあったので、そちらをどうぞ。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=58D4elqQqbg&NR=1&feature=fvwp[/youtube]
巨大なエナジーを持つ地球が震え、死に至る人々を前にし、心が打ち震えてもなお、人は生きていくだろう。
遺された者は倒れ帰らなくなった人の思いを胸に強く抱き、またふたたび起ち上がって生きていく。
自身と、家族と、友と、多くの仲間、あるいはそれらの共同体を超えた類としての人の営みは永遠。
例え無常の思いに打ちひしがれてもなお、人は生きていく。
新たな多くの友とともにあることを強く信じて。
forest
2011-3-15(火) 01:14
正論にして全く反論の余地はありませんが、今は正直「何が正しいかわからない」というのが正解なのだと思います。(TVに呼ばれたセンセイ方は尚更)。
原発のことは良く分かりませんが、納得がいった記事を勝手に置いておきます。
http://d.hatena.ne.jp/suikan/20110314/1300104072
artisan
2011-3-15(火) 08:08
forestさん、いつもありがとうございます。
この度のメルトダウンをどのように考えるか、ということですが、
核エネルギーに依存している社会というものをどのように考えるか、という視座の差異にもよります。
私も含め、日本の核エネルギー電力の受益者ですので、第三者的な物言いはできません。
しかしそれだけにまた、他のエネルギーと本質的に異なる核が持つ怖ろしい殺戮能力を考える時、人命をいかにして守るのかという視点からの眼差しは欠かせません。
この度の推移をつぶさに見ていますと、東電側からの情報提供は全く不十分で後手後手としか評価できず、
それ故に今朝(2011/03/15)の段階で、政府としては情報提供における信頼への疑念を背景として、しびれを切らし、東電内に〈東電+日本政府〉の対策本部設置を決めたのです。
東電側も認めざるを得なくなっているメルトダウン(炉心溶融=空だき)という事態は、詳しい専門家であればあるほど、信じたくない、絶対的にあってはならない怖ろしい重大な事態なのです。
これまでは絶対そんなことはあり得ないと一笑に付してきていたのが事業者(電力会社+所轄官庁)であったわけですが、いかに「想定外」の大地震被災とはいっても、あってはならない事態を引き起こした事業当事者の責任は問われねばなりません。
「一億総懺悔」はもう結構です。なにも教訓にはなりません、
そうした冷徹な視座を持ちつつも、運命共同体としての私たちは、祈るような思いで現地電力会社の命がけの対応を見守っているわけです。
本件とは直接の関係はありませんが、私の兄は原発に従事する電力会社社員として長らく献身的に働いた企業戦士でしたが、悪性腫瘍で斃れ、若くして亡くなりました。
hoop
2011-3-15(火) 03:04
こんばんは。
今僕に出来るのは、有効と信じている情報を提示して
善意の第三者の方々に遠く広く、普及させて下さいと頼む事くらい。
ロケットストーブと言う、安価で簡単に制作出来る
優れた燃焼装置があります。
被災地で、そして明日は我が身の各々に、役に立つと思います。
物資提供がまだ出来ない今、ネットや口コミにて
どうか東北まで広げて下さい。
artisan
2011-3-15(火) 08:09
hoopさん、このハンドルネームとしては初コメントですが、これまでもたびたびコメントいただいている方ですね。
被災地には続々と支援の手が伸びてきているようですが、その広域性と被災の深刻さを考えると、長期にわたる被災者支援態勢が欠かせないと思われます。
お話しの「ロケットストーブ」なる、ミニマム燃料で高効率の熱エネルギーが得られる熱源はとても有効たり得る感触がありますね。
私も学習させていただいた後、非力ながらこのBlogなどでも紹介の労を執らせていただき、有効活用できるようにしたいですね。
hoopさんのBlogでも実践的な記事が掲載されていますが、可能であれば素人にも分かりやすい「ロケットストーブ」なるものを学習するためのWebサイトなどがありましたら、ご案内ください。
forest
2011-3-15(火) 16:54
プラントの異常事態を何度か経験していますが(もちろん放射能とは縁もない平和な製造業)、当事者にしてみれば、そんなに情報情報って言うなら自分でポンプの燃料の減り具合を見てくれよ>某首相、という気持ちだと思います。
今は、責任問題や批判やエネルギー理想論は後回しにして、やれる人がやれることをやる、また、それに対して最大限の援助をするのが先決(やっている人の邪魔にならないようにすることを含めて)、と個人的には理解しています。
artisan
2011-3-16(水) 00:03
「由らしむべし知らしむべからず」という考え方を、為政者側からではなく市民の側から積極的に求めてくという「逆転思考」というのは、私の理解を大きく超えるものだということになります。
ではメデイァなどは大本営からの一方的な情報を垂れ流しすれば良いと言うことになるわけですね。
20年戦争(太平洋戦争+中国大陸での侵略戦争)に雪崩を打って突っ込んでいった経緯は、まさにそれであったわけですが、その内実と、結果を見ればお分かりいただけるのではないでしょうか。
戦後日本の出発はそうした負の教訓からスタートするものであったはずです。
現在ボクたちが享受する平和で豊かな社会というのは、そうした敗北を抱きしめつつ歩んできた道筋であったのではないでしょうか。
10km、20km、30Kmと避難指示を受けている地元市町村の市長、あるいは担当者の声が伝わってきていますが、混乱状態の中にあるとは言え、ほとんどと言って良いほどに適切な情報提供がないと言うことでとても怒っている姿が、あまりにも哀しく思えます。
なおプラント従事者ということでエピソードを開陳されていらっしゃいますが、原子炉プラントというものは、他のプラントとアナロジーできるほどの次元のものでは無いのでは?。
問われているのは、原子力エネルギーというものは実は人類が制御できると信じてきたことが、果たしてどうだったのか、ということではないでしょうか。
メルケル独首相は本日以下のような記者会見を行っています。
「日本で起こった出来事は、これまで絶対ないと考えられてきたリスクが絶対ないとは言えないという事実を教えてくれている。たんにこれまで通り、このまま進めることはできない」と述べ、同国の原発の稼働年数を2030年代半ばまで延長する計画を3か月間凍結すると発表しています。
つまりは厳しく科学的に実証されつつある事態を冷徹に見据え、教訓化するということが今、ここで問われており、彼の国のリーダーは、この事態を受け、さっそく戦略の見直しに取り掛かっているのです。
厳しく科学的な事象を、情緒的に語るという作風では、負の連鎖になってしまうことでしょうね。
たいすけ
2011-3-15(火) 18:45
原子力発電に関して。 事故の起きている発電所で従事している方は本当に何が何だか判らないでしょうね。言い換えれば何をやっているのか自身でもつかめていないでしょう、これは本当に気の毒なことです。そんな努力を批判することは当然できませんが、彼らの為にも何故、こんなことが起きたかということは考えるべきだと思います。artisanの仰るところの「一億総懺悔」のような甘い考えではイケナイのです。 どなたか忘れましたが以前、公共の電波放送で、「安全、何があっても安全、というならば、東京湾に原発を作るべきだ」と仰っていました。絶対安全などというものはあまり無いのです。ならばつくってはいけないし、つくらなくてもいいように我慢をしなくてはいけない、我慢できないような世の中であるのならそちらを改めるべきだと僕は思います。
artisan
2011-3-16(水) 00:03
たいすけさん、「‥‥東京湾に原発を作るべきだ」という“惹句”‥ん?“警句”?
は良く言われますね。普天間基地は東京湾に持って行け、みたいな(笑)
後段の“我慢”に関わるところは、実はこの度の大震災を受けての、日本社会が向かうべき「新たな共生社会」への道筋となるべきものになり得る、とても大切な思考スタイル、理念の萌芽であるように思いますよ。
hoop
2011-3-15(火) 22:47
こんばんは。
日本に最初に紹介したのは下記のサイトの協会です。
http://www.pionet.ne.jp/~kyoseian/rocket.html
色々なタイプがありますね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Rocket_stove
僕の作ったのがクッキングタイプのスタンダードだと思います。
経験の無い人が、自分で作って使うのを前提としてるので
極端に言えば、材料と金切り鋏があれば作れます。
ロケットストーブと薪ストーブ(2次燃焼付きとして)、両方2次燃焼を
行いますが大きな違いは、ロケットの場合、2次がメインと言う事です。
(以外にそれを理解してる人は少ない様に感じます)
木質燃料投入→1次燃焼→リグニン.セルロース等ガス化→概ね500度位で熱分解(2次燃焼)
高温を得る為の断熱されたヒートライザーは600〜900度に達します。
(勿論オープンなクッキングタイプの場合そこまでには達しませんが)
小さなバイオガスプラントみたいなものでしょうか。
artisan
2011-3-16(水) 00:36
化石燃料に依存しない熱源の試み、ということで、とても興味深いものがありますね。
仰るように、これを被災地に持ち込むことは、ちょっとすばらしいアイディアかも知れませんよ。ホントに。
私が呼びかけたプランには間に合わないかも知れませんが二次隊段階で具体化できれば、ヒットじゃないでしょうか。
うん、おもしろい。
kokoni
2011-3-15(火) 22:57
静岡震度6ですが、大丈夫ですか。
artisan
2011-3-16(水) 00:04
kokoniさんのところも揺れたでしょ。
ボクは揺れには全く弱くって オロオロ
forest
2011-3-16(水) 02:41
敬愛するブログのコメント欄を汚すのは本位ではありませんので最後にしますが、「逆転思考」と言われると違和感を覚えます。
理念あるいは将来の方向性として仰るとおりですし、共感するところ大です。政府、各社の打ち出す策についても私が考えてもさすがにおかしいだろ、と思う部分も多々あります。
が、今問われているのは、原子力エネルギーの制御可能性とかではなく、今の人命確保と今の火を消すことではないかと。加えて、今は何がホントに正しいかなんてわからないと思います。今の段階で理念あるいは方向性の議論、あるいは策の巧拙の批判は、感情論と見られて流されかねません。データがそろった段階で当事者にも登場頂き、「科学的」に議論なり批判なり教訓化なり思う存分やったら良い、と思います。具体的には、
・学者、専門家に解説を乞うても、情報を持たない以上何も出てこないのはやむなし。しいて言えばマスコミの権威主義の思惑外れ。
・この段階(記事アップの段階)で「客観的に観ればスリーマイル島事故をなぞっているかのような推移と考えても間違いない」と仰ることの客観性。
・今の時点では政府対応がある程度大本営発表になるのは主にパニックの回避のため致し方ないのでは。周辺市長への情報提供が適切かどうか、誰がどう判断するか。
・計画停電の私的代案として挙げられている4案の即効性と定量性。
最後に、どんなプラントならアナロジーが成り立つのか分かりませんが、たいすけさんが言及されたように、自分さえ何がなんだか分からない状態をさらにワケのわからんエライ人に説明するのにどれだけ大変か、その結果エライ人から「上から水をブッかけろ」と言われてそっちの火消しにどれだけ手間取るか、低次元な感情論のように思われるかもしれませんが、緊急事態にそちらに優秀な人材をどれだけ割かないといけないかと考えると同情の余地はあると思います。って結局感情論ですね。
以上です。