BESSEY ボディクランプ KRE(その2)

BESSEY ボディクランプ ストレージ

今回、〈BESSEY ボディクランプ KRE〉導入に合わせ、専用ストレージを作りました。
旧型、2mのものを除く4本と、新規導入のKRE、1mもの、4本、あわせ8本をコンパクト、スマートに収納するものです。
うちの工房建て屋の骨組みは〈250×125 9t〉という、頑固なH鋼が巡っており、手作業場に設置したワークベンチ近くの、このH鋼の柱の2辺に矧ぎ専用のクランプ、0.6m〜1.2mまで3種・20本ほどをぶら下げていて、この残りの1辺に新たに BESSEY ボディクランプ ストレージ を設置。
スマートな納まりです。
これはネットから拾った画像を参照に、28mm構造合板でチャチャッと作りました。
H鋼 9t に、固定のためのボルト孔を穿孔させるのはメチャクチャ大変だったけれど…。
画像、(左から)
- 旧 K ボディクランプ 4本
- KRE ボディクランプ 4本
- 黒い奴が矧ぎ専用クランプ、1mもの10本
- 梁のH鋼、最上部に 旧型2mのボディクランプを2本
- (裏側に1.2mが4本、60cmが4本)
- 白いアルミレールは、丸ノコ専用フェンス
- 右の低い位置のものは各種クランプストレージ(キャスター付きの可搬式)
旧 K ボディクランプ6本のうち、顎部分が正常なのは2本しか残っていませんが、前回も触れたように、新規の KRE の顎を代替装着すれば問題無く使えますし、もちろん改良された機能が備わる、ということでもあります。
KRE型の新奇性について
さて、ここからが KRE(K型のRevolution)の解説です。
〈新奇性〉とは言っても、市場に出回り、既にかなりの年数が経過しますので、少しおかしな物言いではありますが、旧型と較べて、といった意味合いですので、突っ込み入れないでくださいね。
旧型と、このKRE、基本的な機構に変わりはありませんが、いくつかのところで明かな進化を見せてくれています。
鋸歯のレール
ところでまず、前回、記述しておくべき事でしたが、あらためてBESSEYクランプの多くに採用されている、鋸歯のレールについて触れておいた方が良いでしょう。
これは BESSEY F型クランプのコピー商品購入の失敗談の原因でもあったのですが、鋸歯加工の有無についてはこの種クランプの品質を決定づけるものの1つと言って良いと思います。
因みに、うちの工房にある各種クランプを確認すれば、その2/3ほどに鋸歯加工があり、残り1/3にはありません。
またBESSEYではレールの左右両端に鋸歯加工がありますが、片側だけのものもありました。

この鋸歯加工は他でも無く、任意の位置にJawを強く保持させ、滑りを防止させるもので、圧締機構としては必須の機能と言えますが、安価なものであったり、圧締力の強さが求められないクランプでは、これが施されていません。
BESSEYではラチェット型で軽快な仮止めのための〈Klik クランプ 〉というタイプのものがありますが、こんなものでさえ鋸歯加工が施されているのです(そこがBESSEYというブランドの強さです)。
(過去記事)
また、この鋸歯加工を保持する部分には、専用のホーローネジが埋め込まれ、このネジのピッチが鋸歯のピッチに食い付く機構になっており、より耐久性、信頼性を高めています(下図、参照)。


このあたりはBESSEYクランプの最大の特徴の1つと言って差し支え無いでしょう。
上画像はBESSEY・KGクランプの鋸歯のレールと、理解に資するためホーローネジを外した状態の画像です。
ホーローネジが埋め込まれているクランプはBESSEY以外にもあるのかは、寡聞にして知りません。
これが無いものでは、Jawのレールを囲む部位の末端が鋸歯に食い付く形でロックされるものと思われます。
片側だけに鋸歯加工が施されているものもあるわけですが、相応の効果もあるというわけです。
BESSEYでは背部側にこのホーローネジが埋め込まれ、逆側はあくまでも、前述同様にJawのレールを包む部位の末端部が鋸歯に食い付く機構になっています。
BESSEY以外のクランプについては不明ですが、もし新たにクランプを導入する場合、この鋸歯加工の有無、さらにはホーローネジが使われているのかどうか、ここがメルクマールとなりますので、確認することをお奨めします。
また、BESSEY同様の、あるいはそれ以上のクランプを使われ、もっとスゴイ機構が搭載されているんだぜ!、といったものがあれば、ぜひご案内下さい。
Jaw(顎)のスライド
KREに進化したことで、Jawのスライドがスマートになっています。
Jawのハンドルを少し引くことで、レールに刻まれたロックが外れ、スムースに移動させることができ、次に、これを直角に戻すことで、しっかりとレール軸に刻まれたJawの鋸歯の刻みが噛み合い、ロックされるという機構になっています。

なお、このJaw(顎)ですが、旧型はレールの末端がカシメられ(脱落防止のため)外れない機構となっているのですが、KRE型はこれを止め、カシメでは無く、プラスチックのエンドクリップに替え、簡単に取り外すことができ、
このJaw(顎)を取り外し、他のKREと接続、延伸させたり、また逆向きにすることで、締め付けとは逆の、駆体の解体の方向に圧締できるようになっています。
この改善はとても有為なものだろうと思います。
PONYクランプでも、逆向きにセットし、キャビネットの解体に使うタイプのものがありますが、これと同様の方法をKREでもできちゃうというわけです。

PONYとは異なり、BESSEY KRE では 顎部分の面積が大きいことで、これが接触するキャビネットの木部に傷を付けること無く、かつ、均等な圧力を加えることができるという意味では、はるかに機能性は高くなると言えるでしょう。
また、延伸ですが、上述のエンドクリップを取り外し、この穴を使った延伸用のアタッチメントが提供されています。
私は3mを越えるようなキャビネットを組み上げる際、PONY クランプを用い、管継手で2本の水道管を繋ぐことで長大なキャビネットを組むことがありましたが、
これと同様、BESSEY KREクランプでも連結可能というわけです。
ただ、私の旧型のK型 ボデイクランプには、このendの穴を開孔せねばなりません。
高品質なNACHIのドリルを入手し、トライしてみましょうかね。
8000N(約815kg)
また非力な作業者向けに、より強力な圧締力を与えるための機構があります。
Jawのグリップの底部にある、六角スクリューを締め付けることで、加える圧締力が強くなるようです。
この機構についても、上記BESSEY公式動画で紹介されています。
最大約8000N(約815kg)まで加圧できるのだそうです(キリの良い、1tまでがんばって欲しかったな 😓)。
Jaw部分のアルミダイキャストの進化はいかに

画像のように、新旧では Jaw部分の構造が変わっています。
クラシックなK型の長年にわたる製造と、市場から上がってくるクレーム問題も含む、社内の技術的研究を踏まえての改造だろうと思われます。
ただ、残念ながらクラシックなK型の破断の問題をどう考え、ダイキャストの素材の検討、その構造的な改善がどのようになされたのかは不明です。
ネット上を渉猟しましたが、前回の冒頭に挙げた、2018年以前の商品にあった問題くらいしかヒットせず、あるいは私のリテラシーの貧困さからこれらの情報取得は無理でした。
ただ、8000N(約815kg)まで圧締できるぜ、というアナウンスは大事で、こうしたアナウンスはクラシック K 型の破断問題をかなり克服し、ダイキャスト素材も改善対象とされ、新型KREとして更新してきたものと考えることができるのかもしれません。
(どなたか、読者の方で、このあたりの有為な情報をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひご教示ください)
アタッチメントについて

今回、1mのKREを4本導入したのですが、この際、いくつかのアタッチメントを付属させたセット品として購入しましたので、それらを紹介します。
上の写真(公式カタログから)がそれです。ただ最上部の〈K Body variable jaw KRE-VO〉は除きます。
K Body tilting adapter KR-AS
画像をご覧の通り、被圧締物が傾斜している場合に、適切な圧締を幅広く加えるための補助具です。
(-15°~+15°)まで傾斜可能です。

KREの保護パッドを取り外し、この補助具を取り付け、用います。
素晴らしいアイディアだと思います。
K Body extender KBX20
これは前述の延伸のためのものです。
セット品として1つだけ入手したものの、ただ安くは無く、追加導入にはためらってしまいます。
自身で作れないことはありませんが、プロであれば、商品価格より、経費の方が掛かるのは目に見えていますので迷うところ。
Table clamp TK-6
使うケースがあるのかは分からないですね。

K Body framing set KP
これはKREのレールにピタリと納まり、安定的なベースとして活用されるシーンはありそう。

他に
レールに挟み込んである、プラスチックのプロテクターは有用です。
クラシックK型ではこのようなものはなく、被圧締物にレールが当たらぬよう、いつも合板などで保護していたものです。
余談ですが、PONYクランプでは、これに相当するものを皆さん、どうされていますか。
・・・私は椅子の脚を保護するキャップがありますよね、あれを使っています。
必須ですもん。
なお、こうした小さな付属物まで、BESSEYでは市場供給、小売り販売しています。

今回は既知のことばかりであったかとも知れず、恐縮至極でありまする。
…… 私は いっつも「遅れてきた青年」ですので、お許しください 汗;
ただ、K型からKREへと進化する中で、基本的性能、機能を見直し、いくつかの改良と、新規機能を加え、木工作業者へのリスペクトに殉じ、より使い勝手の良いボディクランプとして市場に投入されたことは、Jaw(顎)破断からの復元のための導入とはいえ、その進化を体得させてもらうことができ、良い買い物だったことは疑いの無いところです。
木工世界のこの種の道具というものは、一度リリースすると更新されることはまず無いというのが一般的な傾向です。
しかし、BESSEYは市場が世界規模という消費者を抱えるところから、こうして新奇性をもった更新をしてくれるところは好感が持てます。
