工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

“手作り家具”と機械設備(その12)

機械設備と電動工具の差異および選択基準

木材加工では一般に機械と電動工具、それぞれその特性において使い分けられているだろう。
また丸鋸昇降盤、あるいは横切りなどと、丸鋸という電動工具は材木のリッピング(幅割き)クロスカット(切断)において一部同じような能力を持つということで、その選択を迫られるということもある。

ヘビーデューティーのルーターマシーンとハンドルーターも同様のことが言える。
ここではそうした機械と電動工具の使い分け、選択基準について考えてみたい。
まずあらかじめ確認しておきたいことがある。
ここでは職業木工家を対象とし、工房スタイルの家具制作を行うことを前提としたものであり、やや限定的なものとならざるを得ないが、他の環境での木工にも援用することで同様に考えていただけるものと考える。

さて、木工加工のプロセスに準じて取り上げていこうか。

〈木取り〉から。
木取りという工程にはどのような機械が用いられるだろうか。
木取りでの鋸での切断にもクロスカット(繊維を直交する切断)、リッピング(繊維方向での切断)の2つがある。


クロスカット

工場では一般に左右に大きく拡がったローラー定盤を持ち、荒木を固定する機能などを持った専用の丸鋸盤(クロスカットソー)などが用いられるが、工房スタイルでは少ないかもしれない。
うちでは横切りでこれをやってしまっている。
あまりお奨めできるスタイルではないが、有用であることを否定するものではない。
あるいはパネルソーでこの荒木取りを行っているところもあるかもしれない。
これを電動工具で行うにはハンディータイプの丸鋸になる。
切り落としの結果において不都合が出ないような(=キックバックが起きないような)馬の準備などをすれば、それなりに木取りができるだろう。
これらの使い分けは問題にするまでもなく、横切り盤、パネルソーなどに載せることが困難なものは、丸鋸で行うことになるだろうし、そうでなければ横切り盤、パネルソーで快適に行えばよい。

リッピング

専用機械としてはリップソー、ギャングソーなどと言った送材機能を有したものが一般的だが、これも工房スタイルで導入しているところは少ないだろう。
工房での基準面の出ていない材のリッピングについては、まず横切り盤でこの基準面を出すことは可能であり有用だ。
ただしその長さは横切り盤の性能に準ずる(例えば1,300mmといったように)
あるいは疑似の基準面を合板などで作っておき、これを荒木に接続固定すれば丸鋸昇降盤でも可能となるだろう。

パネルソーではこの工程は得意分野となるのは言うまでもない。

また帯ノコでも同様の作業が可能だ。 丸鋸盤では使用できる鋸径の制約が高いが、帯ノコではこれをはるかに上回る厚板のリッピングが可能だ。
ただ丸鋸で切削可能な厚みでは、帯ノコに比し圧倒的に加工性は高い。(切削力、切削精度において)
なお以前も言及してきたところだが、木取りではなく、精度が求められる本格的な加工段階では、横切り盤をこのようなリッピング作業、繊維方向の切断作業には用いるべきではない。
言うまでもなく平行精度、直角精度を、この繊維方向で確保するというのは横切り盤に求めるべき性能ではないからだ。

こうした機械設備が無い場合のリッピンッグは電動丸鋸で代替することが出来る。
合板などを定規として用いることで、直線性の高い切削が可能だろう。
あるいはFESTOOLなどに見られる専用の定規が提供され、快適に使用できるというものもある。
いずれにしろ電動工具の使用に当たってはキケンが伴うので、しっかりと直線性が確保出来るような準備が必要となる。
(続く)

hr

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • アマチュアの私は荒木取り(クロスカット)には
    スライド丸鋸を使っています。
    大型の横切り盤がないこともありますが重たい材を
    テーブルごと移動させる必要がないのと基準面が
    なくても比較的安全です。
    キックバックの心配がある時は厚さ方向に半分づつ
    刃幅半分ずらしてカットしています。
    一回でカットできる幅は30センチぐらいですが
    材をひっくり返せば倍の幅までカットできます。
    先日のFWW誌にジグソーによる荒木取りの方法が紹介されて
    いました。
    確かに安全だとは思いますが、さすがにプロの方でジグソー
    で木取りする方はいないでしょうね。

  • acanthogobiusさん、スライド丸鋸ですか。なるほど。
    うちでは所有していませんが、使い勝手は良いのでしょう。
    建築現場では欠かせないツールですね。
    記事でも取り上げるべきでした。
    ジグソーについても触れるべきだったかもしれません。
    うちでも椅子の木取りのように曲面の多い形状のもので、帯ノコに掛ける前段階の荒木取りにこのジグソーを使うことがあります。
    ただ一般には丸鋸に較べ切削性能はとても低く、プロの現場では使われる場は少ないですね。あくまでも補助的な切削工具です。
    いわゆるクセモノを制作しない一般の木工所では所有していないところが多いようです。

  • ご無沙汰しております。
    私の所は いわゆる家具製作とは違うのですが
    木工における機械設備というものの位置づけについて
    実際の製作・現場の経験に基づくartisan様の
    記事はどても勉強になります。
    昨年夏、何とかかんとか予算を確保し
    さぁ買おう、DOMINOかラメロか?やっぱりDOMINOにしておこうか。
    といった矢先に主力機械であるAOKIバンドソーのソーガイドが壊れまして。
    クールブロックの取付部が左右ともポッキリと。
    鋼製の棒を打ち込んで溶接してもらい程なく直りましたが
    間をおかず、今度はスクローラ糸鋸盤の調子が・・・
    分解掃除したりして調べましたが手に負えず
    修理に、主要部品交換。痛い出費でした。
    立て続けというのは今までに無かったことで
    夏が暑かったせいか?などと思いましたが
    さすがにそれは無いですよね(笑)

  • 機械のトラブル、大変でしたね。
    木工機械は単純な機構のものが多いものですが、調子を出すことの困難さはあるでしょうね。
    >DOMINOかラメロか?
    もちろん、その守備範囲が異なりますので一概には言えませんが、DOMINOにおける可能性の広さは期待が持てます。

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