工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

“手作り家具”と機械設備(その10)

家具工房における機械導入と制作スタイルの問題

機械の導入というものが木工房におよぼす影響について、その本質的なところについてこれまで語ってきたが、これは各々の機械についてはどのようであるか、少し見ていきたい。
木取りに使われる基本的な機械についてはこれまでに幾分掘り下げて言及してきたので、ご理解いただけただろうと思う。
ここでは主要に木材加工に於いてもっとも高頻度に使われる丸鋸昇降盤について少し考え、次に倣い成形加工、および面取り成形加工に使われる幾つかの機械について見ていこうと思う。

〈丸鋸昇降盤〉

何度かこれまでも述べてきたところだが、木材加工工程においてこの丸鋸昇降盤ほど活躍する機械は他に知らない。

量産家具産地である当地・静岡では、工房にこの機械をたった1台設置するだけで仕事に励む職人も少なくない。仕事の内容は家具、木工小物などの加工から組み立てまで、様々。
それだけ汎用性が高く、使い勝手の良い機械と言えるだろう。
幅割き(リッピング)、横挽き(クロスカット)、カッターでの段欠き、小穴突き、成型作業(様々な形状のカッターで)、面取り作業、
制作する対象にもより活用状況は大きく異なるのは言うまでもないが、加工工程の7〜8割をこの機械がこなしてくれる。

*いずれ本稿において「加工工程における機械の選択について」という項を設け、加工工程での機械選択の考え方についても詳しく見ていくつもりだ。

これらの工程は、機械導入以前であれば手鋸、手鑿、作里、際鉋、面取り鉋、などの手道具で行われていたものだ。
動力を用い、どのような細胞組織であれ強力に切削してしまう機械は、当然にも作業者と被加工材との関係性を分離し、親和性において遠ざけてしまうというリスクは避けがたい。
しかし現代の木工加工においてはもはやこの環境を前提とし、如何に有機素材としての木材に向き合うのかという思考において解決されねばならないだろう。

例えば‥‥、
カッターでの切削工程などは負荷が大きくなり、その運行方向によっては細胞組織の配列(木目と言われる部分)の読みを無視すれば、目的とする切削量を超えて局所的に破断してしまうことは誰しも経験するところだ。

やはり如何に強力な機械であっても、いや強力な機械であればこそ、その木目を良く読み、あくまでも倣い目(順目)方向で切削させるように心掛けねばならないだろうし、いずれ記述しなければならないが、面取り切削工程でも周速度の遅いトリマーやルーターなどを選択するのではなく、丸鋸昇降盤にカッターを取り付け、順目切削で行うことで、切削精度の高い、良い切削肌を得られるということになる。

つまり機械とは手道具の延長として位置づけるという、少し使い古された言葉ではあるが、あらためて警句としての有効性は認めねばならないだろう。

確かに強力な機械であれば木目がどうであれ強引に切削してくれるが、しかしそれだけに加工される対象が木材繊維であることを忘れがちで、そのことで良好な切削肌が逃げていくということにもなるのだということを良く自覚し、正しく快適に使いたい。

* 昨日の記事についての補記
定盤の平滑性の修理についてだが、機械屋にあらためて確認したところ、わずかに0.5mm以下の精度調整であれば、フライスで切削し直すのではなく、グラインダーでの研磨作業で行えば十分とのこと。
昔は、さらに熟練職人の手によって、ノミ様のもので削り合わせることも行われていたのだという(鉄工については詳らかにしないので詳述しません)。
いずれにしても1Weekほどの日程が必要ということなので、機械使用のスケジュール調整を行った後の話しになるね。

hr

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