壊れた原子炉に鼻面を押しつけて頭を叩け
記者会見場でいくつかの質問をしていたのが、その記者なのだろう。
柄谷、小熊 両氏は、名指しこそしなかったものの、明らかにこの新聞社への批判を含むかなり辛辣な言葉を使った抗議に近い話しがあった。
恐らくはこの指摘を受け、新聞社としての姿勢を見せたというところだろう。
記事は記者会見の概要を淡々と、それなりに詳しく伝えるものとなっている。
これもやはり原発問題だ。
かつてボクは、3.11後のこの同氏のコラムを巡り違和感と落胆を持って受け止めたのだったが(その記事、最後段あたり)、以後、彼のこの問題に関わる姿勢は微妙に変化してきていて(と、ボクには感じられる)、今回もかなり強い調子で新政権を批判し、読者に危機意識を喚起させる論調となっている。
ボクはこれを好感をもって受け止めた。
文学者と言う立場からすれば精一杯の抗いであり ”鉱山のカナリア“としての自覚と使命に促されたものだと思った。
しかし、この朝日の整理部の差配も面白い。
優れた文学者の定期コラムに、柄谷、小熊両氏の「日本にはデモが必要だ」との記者会見を隣に併載させているのだから。
どういうことかと言えば、池澤夏樹氏の結語は以下のようになっている。
どうやって日本の電力を変えるのか。
簡単なことだ。次の選挙で候補者一人ひとりに原発に対する姿勢を聞いて投票する。官僚や産業界がどう抵抗しようが、選挙結果は動かしようがないから。
つまり、片や、選挙で反原発の姿勢を示せば良い、片や、選挙だけでは不十分、デモをすることではじめて選挙での投票行為も生きてくる、という風に、そこには小さくない戦術の違いが横たわっている。
もちろん貼り付けたコラムを読めば分かるように、池澤夏樹氏のフクシマを巡る論調は決してかつてのように曖昧なものではなく、鋭く本質を突くものとなっている。
今日のタイトルはその一部だが、前後の脈絡は次のようだ。
我々はこの国の電力業界と経済産業省、ならびに少なからぬ数の政界人から成る原発グループの首根っこを捕まえてフクシマに連れて行き、壊れた原子炉に鼻面を押しつけて頭を叩かなければならない(この前段に飼い犬の躾けについての話があり、それを類推させる形での文脈となっている)
できれば、全文目を通して欲しい。
因みに話題になっている近刊の『脱原発社会を創る30人の提言』にも政策提言者の一人として名を連ねている。
科学者、原子力専門家、技術者、政治家、農魚業者からアーティスト、作家にいたるまで、そして、今を生きる全ての人々が、まさにその選択を問われているということに他ならないということだろう。
曖昧さが美徳とされる日本人というものの真の姿が、今、フクシマの過酷な現実となって映し出されているとは言えないだろうか。
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*参照
■ 池澤夏樹 主宰・Cafe impala
■ 柄谷行人 公式サイト
■ 小熊英二研究会

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❖ 脚注
- エントリ翌日に、途中までだったものの続編ビデオをupしておいたので、未見の方はあらためてアクセスをしていただきたい [↩]