工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ラメロの進化・〈Lamello Zeta〉


画像はご存じの通り〈Lamello〉だね。
ヘッド部分に別の機構がくっついるのがご覧いただけると思う。
これはLamelloの基本機能を拡張した〈P-System〉というロック機構を持つビスケットを挿入させるための〈Lamello Zeta〉という機種である。

ボクたちの木工家具制作において、困難な仕口の1つとして「留め」というものがあるが、この困難を克服するための解決方法として1つの簡便な手法となり得るものと思う。

Lamelloはスイス製のビスケットジョインターの雄として、常に進化の道筋を辿ってきているが、ボクが導入したのは四半世紀も昔のことで、その機種は今では〈Classic〉などと呼称されているらしい。(当時は清水の舞台から飛び降りる覚悟が必要なほど高価だったんだぜ、確か12万円ほど(×_×)


〈Lamello Zeta〉という機種はこの基本機能を拡張させたもので、回転刃の断面をT字状にし、これをスロットし終わったところで、上下に振動させ、T字状のスロット穴が形成されるというもの。
ここにT字状の1/2ビスケットを挿入し、ロック機構を持つタブで締める、というものだ。

もちろん留めに留まらず、様々な部位の仕口に用いる事が可能で、造作現場では大いに活用できるものと考えられるが、ボクらのように無垢材での枘加工を基本とする現場では、やはり留めを補強するものとして朗報だろう。

ただ、ビスケットは樹脂なので、木材に埋め込まれた状態での耐久性がどの程度かの問題は残ると思うが、いかがだろう。
なお、Lamelloのビスケットには一部アルミ製のものもあるので、この〈P-System〉対応のアルミ製ビスケットができれば、この問題も克服できるはず。

これを見て、瞬間、このLamello社、Festool社のDOMINOにかなり刺激を受けての開発なのではと思ったが、果たしてどうだろう。
正確には不明だが、この〈P-System〉がリリースされたのは2009年末頃(Google検索でupした時期が絞り込める)DOMINOのリリースは2007年1月だった。

他社に刺激を受けての新開発というのは、ユーザーにとっては望ましい開発理念だと思うが、そのあたりの日本の電動工具メーカーの姿勢や、いかに‥‥などとつい考えてしまうのは悪いクセか。



なお、このLamelloの進化には、他にも多く取り上げることができるが、今回の〈P-System〉を留めの補強に用いたいという考えに準じる特殊なビスケットも開発されている。

Fixo〈E20〉というビスケット。
これには E20-LというものとE20-H という2つのタイプがあり、板面から打ち込むもの、木端から打ち込むものが用意されている。

画像のようにビスケット側面の突起が打ち込むほどに接着面に吸い付くような形状になっている。
よく考えられた形状だと感心する。

実はボクは一時、あるエア工具を必死になって探していたことがあった。
留めに打ち込むための特殊な形状をしたタッカー刃を用いた「SENCO」というアメリカ製のエアタッカーなのだが、残念ながら入手ができずにいた。

このLamelloのFixo E20-H はこれに替わるものとして活用できるのではと考えている。
今では〈Classic〉などと言われる始末のLamello Top10だが、E20を使うには十分な機能を持つから、経済的負担も少ないというわけだね。

さて、今日の〈Lamello Zeta〉、この新機種については昨年ネット上で確認していたが、実機を見たのは、これも前回のエントリのものと同じく名古屋での国際木工機械展でのこと。



ところで、この新しいLamello、画像だけだが、最近相互Linkした知人木工家のBlogでも取り上げられていた。DOMINOに関連づけた記事中のもの。
良い機会なので、このBlog運営者、星野秀太郎さんについて紹介しておきたい。

年齢はボクよりちょっと(かなり?)若い方だが、キャリアは数年長い(確か、同じ訓練校の3年先輩)。
ボクが在校生の頃、作業室に慌ただしく現れ、板矧ぎ専用のクランプを借り出し、言葉も交わすこと無くさっそうと消えていった。
その時が最初の出合いだったのだが、その後、松本民芸家具の同じ職場にいたKさんが訓練校当時、この星野さんと同期の仲ということなどで交流することとなり、さらには阿部氏主宰の「ウッドワーク サミット」でご一緒させていただくなど、何かとクロスしてきた人だ。

仕事はBlog、Webサイトをご覧いただければお分かりになると思うが、椅子からテーブル、キャビネットまで、基本的な木工技法を忠実に投下しつつ、スタイリッシュな造形、遊び心のあるユニークな木工で独自の世界を作り上げている。
ボクとは違い、この世界では成功者の事例と言って良いだろう。

なお、恐らくは彼の名はさほど知れ渡っているものでは無いかもしれないが、これはネット上で語ってきた人では無いということや、群れて活動するというスタイルでは無いところによるためか。
誇るべきは、やはりインディペンデントというスタイル。

*参照
■ 〈Lamello Zeta 公式サイト

画像はLamello公式サイト、PDF資料等からお借りしました(感謝 !!)

Lamello Zeta
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=hCoWMxYqs3I&feature=youtu.be[/youtube]

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • これ、どこだったかな、たぶん前回の木工機械展で見ました!
    こうやって杉山さんの評価があると、ますます欲しくなります(ラメロは持っていないので)。常に欲しい物だらけです(笑)。

    • ikuruさんはDominoを使っていらっしゃるので、一部Lamelloの機能とWると思いますので、あらためてLamelloを導入するのは、はて? とお思いだろうとお察しいたします。

      しかし、Lamelloのこのような進化を見ますと、揺らいできちゃうでしょ (^^)

  • 四半世紀前にLamelloを買われた、ということは
    おそらく私が以前勤めていた会社から買われたのでしょうね。
    六本木事務所の地下倉庫に在庫されていたのを覚えています。
    高かったでしょうね。
    当時は特許に守られていたので、Lamello社も、それなりの利益を
    上げていたと思います。
    Festoolと違ってビスケットジョイント以外にこれといった機種を
    持たないLamelloは最近どうなのでしょう。
    新機種を出して来たということは、根強いファンがいるのでしょうね。

    • acanthogobiusさん、そうでした。確か、W▼社でしたね。
      その節は、お世話になりました (笑
      確か、その時も、晴海の機械展で見て発注したと記憶しています。

      そうなんですよね、acanthogobiusさんに聞こうと思っていたのです。
      Lamelloのビジネスモデルというのは、ちょっと異例。
      ビスケットジョインターのみの製造会社ですからね、
      いかに世界にファンがいるとは言え。

      しかし、あまたあるビスケットジョインターのメーカーの中で、
      これだけ進化しているのは、やはりLamello社だけでしょうね。

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