集塵システムの進化(BOSCH ポータブルサンダー)

木工現場でのサンディング
うちのサンディング作業は〈三点ベルトサンダー〉、というマシンで行うのがキホンです。
10cm幅、4mを越える長さのエンドレスのサンディングペーパーを回転させ、これを被加工材に押し当てて研磨するというシンプルな機構のマシンです。
中規模以上の木工所ではワイドベルトサンダーというマシンを用い、高精度なサンディングが可能なマシンを設置するのが一般的ですが、うちのような小規模木工所ではこの三点ベルトサンダーを設置するのがごく一般的です。
強力に研磨できますので、生産性は高く、その研磨性能には確かなものがあります。
プロの木工所でもこうしたマシンを置かず、ポータブルや手研磨で行うといったところもあるかもしれませんが、サンディングの作業性、研磨の精度等々、三点ベルトサンダーでさえ、圧倒的な優位性があります。
ここでは詳述しませんが、関心のある方はこのBlogの〈木工家具制作におけるサンディング〉に10回に渡り記述していますので、そちらをご覧下さい。
さて、この三点ベルトサンダー、ただ、間口が2mしか無いために、これを越える大きさの物、あるいは重量物などはこのマシンを使うのは困難で、その代替として、ポータブルの電動工具を使うことになります。
あるいはまた、既納品の再塗装を含む、現場作業では大型のマシンは使えませんので、ポータブルのサンダーは欠かせない道具ということになります。
BOSCH GEX 125A
このポータブルサンダー、私のところでは大小4〜5台ほどのサンダーを使い分けていますが、広い板面などへのサンディングには、25年ほど前から〈BOSCH GEX 125A〉という電動工具を使っています。
四半世紀の歴史、というわけですが、まったく劣化は無く、正常に機能しています。
設計から製造管理まで、BOSCHのクォリティの高さを実感させてくれますね。
ただ、このところ、サンドペーパーを貼り付ける部位のベルクロ® の噛み合いが劣化していましたので、交換しました。(右画像:ハード、ミディアム、ソフト、の3種があり、今回も標準搭載と同じくミディアムにした)

フツーに使用していればこのベルクロ® の噛み合わせが簡単に劣化することは無いと思われますが、サンドペーパーを貼り付けずに、うっかりそのまま加工材に押しつけ回転させるエラーが何度かあったためでしょうね。こんなことしてたら、ベルクロ® のフック状の先端が摩滅し、機能しなくなるのは当然です。
さてこの〈BOSCH GEX 125A〉、商品名に「ランダムアクションサンダー 」とありますが、オービタルサンダーの一種で、オービタルサンダーが細かい偏心運動で板面を研磨させる方式なのに対し、ランダムアクションサンダーはここに回転運動を加え、研磨力を高めたというものですね。
市場では、こうした「ランダムアクションサンダー 」という機構を搭載したサンダーはこの〈BOSCH GEX 125A〉が先行していたようで,リリース後さっそく導入したのでした。
現在、市場に供給されている円形のサンダーのほとんど全ては、メーカー問わず、この機能搭載のものになっているはず。
ただ、私が購入した〈BOSCH GEX 125A〉は集塵システムがイマイチ。
集塵機構を有していたのですが、このダスト袋が紙製でした(下の画像 参照)。
破れちゃうし、ヘナヘナと変形してしまう。酷い代物でした。
集塵機に吸引させるためのアタッチメントがオプションで提供されていましたので、うちでは普段はこのアタッチメントを介し、集塵機で強制吸塵させる方式で行っていました。
その後、この〈BOSCH GEX 125A〉本体はマイナーチェンジを果たし、また機種のバリエーションも増やしていったようですが、それとともに、集塵システムを進化させてくれていたようです。
(25年前から進化させずにいた私の恥を晒すようなもので、旧聞に属する話しで恐縮であります 😓)
そこで、これらを整備させるべく、新たな集塵システムを導入。
プラスチック製 集塵ケース/マイクロフィルターユニット

この商品、〈マイクロフィルターユニット〉というもの。
BOSCH カタログでは、必ずしも適合機種は明記されていないものの、販売サイトにはこの適合機種名が銘記されており、これを確認した上で購入。
なお、この〈マイクロフィルターユニット〉には、本体と結合させるにあたって、より安定的に保持させるための〈フィルターアダプター〉というクリップ状ものも、同時購入。
販売サイトの事例(こちらを参照)
交換用フィルター付
※フィルターアダプターは別売です。
【適合機種】
GEX125AC/MF
GEX150AC/MF
GSS230AE/MF
となっています。
さぁて、商品がやってきました。
と、ところが、この商品〈マイクロフィルターユニット〉(BOSCH 商品コード:2605411147)
画像とは似て非なる物でした。

先述した〈フィルターアダプター〉が取り付けられる構造とはなっておらず、ただフラットな面を有するだけでした(画像参照)。
顔は青ざめ、冷や汗が・・・
ま、それほどじゃないですがね。
心を鎮め、BOSCHカスタマーサービスに連絡。
その回答
現在、この商品コードで販売しているのは、画像のようなものでは無く、お手元に届いたものしかありません。
ドイツボッシュからも、このタイプしか販売されていません。
大変、申し訳ありません
この齟齬の背景は明か。
本体のアップデートに伴い、フィルターユニットの取り付け、保持においては、このクリップ機構は不用になっていた。
あるいは製造上の省力化を図った、ということでしょう。
ただ、これにはさらなる面白い話しがあります。(後述)
この画像とは異なる〈マイクロフィルターユニット〉の背中のフラットなカバーへ、何とか〈フィルターアダプター〉を取り付けるべく、考えまして、〈フィルターアダプター〉に改造を加え、2本の小さな結束バンドで付属させることにしました(画像参照)。
案外、首尾良くしっかりと揺るがずに固定でき、使えるようになったのです(画像 上の黄色の⤴️は、結束バンドを通した位置)
さてところが、もっと厳しい課題が立ちはだかったのです。
フィルターユニットの改造
この〈マイクロフィルターユニット〉は〈BOSCH GEX 125A〉に装着できないのです。
〈適合機種〉として銘記されているのにもかかわらずです。
これには困り果てました。
内外径共に入り口はジャストフィットするのですが、挿入させようとしても、途中でぶつかってしまい、所定の位置まで入っていかない。
これもBOSCHカスタマーサービスに確認。
申し訳ありません。お客様の機種はかなり旧いものでして、調べてみたところ、対応できないようです。
おいおい、適合機種として銘記されてるぜ、と泣きを入れても、ダメな物はダメ。
これも上述と同じく、〈BOSCH GEX 125A〉がアップデートされたことによる機構の「進化」にともなう、変化であるのでしょう。
はっきり言えば〈適合機種〉とはいえ、全ての同種機種に対応するものではなく、新機種のみだと言うことです。
「旧いものは知らんわ」というところで、これが現代社会の宿命?!
少し詳しく、この問題解決へのアプローチお話ししますと、
内径や、ストッパーの位置関係などは対応するのですが、この楕円状の内部に、現在のものはゲートのような出っ張りがあり(画像、黄色いラインのあたり)、
これが邪魔してストッパーの爪が咬むところまで挿入させられないのです。
ここは、ママよ、とばかりに、このプラスチックの出っ張り(画像、黄色にマークアップした箇所)を切出しで切除することに。
本体のアルミ製の蛇腹にフィッティングさせるため、柔軟性のあるプラスチック素材が使われており、比較的容易に、加工改造。
少しづつ、テストしながら、本体の爪の処まで届き、嵌め合いがうまくいくまで繰り返し、最後は首尾良く、ジャストフィット。(^^)/
これで、本来の姿として使用に耐える集塵システムになったのでした。
これでオワリとしても構わないのですが、どうもすっきりしないわけよね。
この〈フィルターアダプター〉は、意外と高度な機構を有していて、排出されるダストを含むエアをフィルターで漉している。
交換用フィルター
そのための交換用フィルターも当然、市場に流通しているわけで、もしやと思い、後日これも購入。
案の定、何と、こちらの方は〈フィルターアダプター〉が取り付く機構を有した商品だったのです(上の画像も参照のこと)。
もちろん、〈マイクロフィルターユニット〉用ですので、これとジャストフィット。
まったく嗤えてくる話しなのですが、
一部は更新され、初期の構造とは異なった商品が流通しているものの、これを構成する一部の部品の方は、更新前の旧いものが流通しているということのようです。
つまり、単一の品番で、新旧2種の、実質異なる製品が出回っているということです。
こうしてさんざ苦労させられ、振り回されてしまったわけですが、25年前の道具を進化させるというアプローチであれば、それも宜なるかな、ではありましょう。(あたしは寛容なのであります)
しかし、メーカーには、この種の齟齬が起きぬよう、もう少し商品管理をしっかりとしていただきたいものです。

なお、この〈BOSCH GEX 125A〉の集塵性能ですが、思いの外、大変優れた吸塵能力を有し、加え、先述したとおり、フィルタリング機構を有するところから、好感を持てる物だと思います。
主要な電動工具メーカーが製造販売する、この種のポータブルサンダーには、こうした集塵機構を搭載するのが標準的になっていることは大変望ましいことです。
この集塵機構搭載は欧州のメーカーが先行したようですが、これはたぶん、作業者の安全、衛生に関わる規制が背景にあったのでしょう。
翻って、わが国はこの分野でも遅れています。
先頃 投稿した、新規投入したRYOBIのミニサンダーには、まったくこうした機構が無く、呆れ果てます(こちら)。
スマホに Wi-Fi チップを搭載しないようなもの。
RUPES という優れたサンダー メーカー
ところで、ポータブルサンダーという電動工具は、世界的に見渡せば数多くのメーカーが製造していますが、私見を述べれば
イタリアの〈RUPES〉が大変優秀な性能を有します。
サンディング性能はもちろん高く、偏心と回転の機構において大変、動態バランスが良く、作業者への反動は極小で疲れにくく、またその結果でもありますが、静粛性も高い。
次元の異なる高性能なマシンと言えるでしょう。

うちでは、悲しいかな、このRUPESは小型のミニオービタルサンダー だけしか有していません(>_<)。
LE 21A
このメーカーはサンダー専門のメーカーでして、車整備関連業者などは、もっぱらこのRUPESに依存してるのではと思わされるほど、プロに愛される道具といって良いようです。
欧米ではBOSCHはどちらかと言えば、アマチュア向けで。プロはこうした専門メーカーのものを愛用しているのではないでしょうか。
また、このポータブルサンダーは車の整備では欠かせませんが、彼らの場合、駆動はもっぱらエアーですね。
電動工具より、ヘッドが軽く、パワーを出せるからでしょうかね。
侮ってはならない、木工作業におけるダスト問題
木工機械、木工用電動工具を使うには、集塵システムは必須と考えるべきです。
実は私は、25年来の喘息持ち。
ある時、サンディングマシンで研磨していたときのこと、うっかり、ダストを吸ってしまったのでした。(吹くべきところ、逆に吸引してしまうと言う、お恥ずかしい愚かな行為)
その結果、徐々に呼吸器に異変が起き、不治の病に固定化していくことに。
普段はこれといった症状も無く、仕事にも、プライベートにも何らの支障もないものの、痰が溜まりやすい、あるいはビールを飲酒した際、咳き込むことがある、女生と会話する際、キンチョウして発話が思うようにできない(これは別の要素もありそうですが…苦笑)、といった程度で、命に直結するものでは無いとは言うものの、うとましいものです。
軽症とは言え、1月、6,000円ほどにもなる薬の服用が欠かせません。6,000円もあれば、吟醸酒が2本買えますからね。痛くないはずがない。
そんなわけでして、木工作業における集塵問題というのは、決して侮ってはいけないというお話しでした。


なお、この〈BOSCH GEX 125A〉の現行機種は〈GEX 125 AVE PROFESSIONAL〉です。
ハウジングと研磨ユニットを分離させ、振動を軽減させているようですね。
画像の通り、吸塵部位も大きく進化しているようです。
この部位だけ購入し、取り付けようかなとも考えましたが、装着機構が全く異なっているようですので、ダメですね……😵

