抽出の材は何をお使いですか
これまでキャビネットの抽出の側板には様々な材種を用いてきた。
もちろん、前板と共材で使うこともあったが、その多くは桐、朴(ホウノキ)、榀(シナノキ)、桂(カツラ)などの、いわば軟材に属する樹種たちだ。
大昔、朴の代替材として材木屋が持ってきたのが〈イエローポプラ〉という材だったけど、色こそ似てはいるものの、とても使えるような代物で無かったことを苦々しく思い起こしてしまう。
乾燥後もなお反りまくり、まったく安定性に欠ける材だった。
つまり、抽出の側板とは言え、スムースに出し入れするという基本的な機能に応える物理的資質に全く欠けるものだったというわけだ。
上に挙げた材は、そうした要請にちゃんと応えてくれる。
概して、イエローポプラといったような南洋材はそうした品質を持つものは少ない。
いろいろと理由はあるだろうが、古来から木工職人達が使ってきたこうした国産材はやはり使われるだけの理由があるということになる。
序でに言っちゃうけど、量産家具に良く用いられるアガチスなんて言う材種も使うべきでは無いという戒めは、ボクの親方からのもの。
あんなものは木では無く、草なんだそうだ。
やはり軟材とはいえ、堅牢で長年の使用(出し入れということからすれば“酷使”、という表現の方がより適切か?)に耐える物理的性質が必須ということになる。
昨日、久々にこの抽出側板用に桂の木を数本製材した。
ここ数年挽いてきたのは榀(シナノキ)が多かったのだが、確かに白くて好ましいのだが、やはり以前から使ってきた桂の強度が恋しくなり、買ってしまった。
旭川の市から出た材だが、白太が多かったもののまずまずの太さだった。
この「まずまずの太さ」という言い方だが、今日においては、という前段を付けておく必要があるかも知れない。
20年前はこの5割増しの太さが当たり前だったからね。
上の画像は桂ではなく、ブラックウォールナット。
皮を剥がしているところだね。
朝1番の8時から製材を始めるというので、40分ほど早く到着し、皮むきを始めているの図である。
土場での保管中は散水してくれていたもので、ベロリと剥けてくれ、案外に楽だった。
桂の製材の序でに、70cmクラスのブラックウォールナットを挽く。
土場に転がっている10数本の中から、もっとも太くて、良さそうなものを選木した積もりだったが、まずまずの成果。
1.1寸、1.5寸、2寸、3.5寸など。
最後に1つだけ補足。
ホントを言えば、初夏のような陽気の中では、製材作業は如何なものか、ということがある。
作業者の肉体的疲労もさることながら、梅雨時入りを控えたこの時季は乾燥スケジュールからして望ましくない、ということ。
少しでも冬の乾燥した大気に当て、含水率を下げてから、梅雨の時季を迎えたいというお話し。
思うようにいかないのが、わが人生。
たいすけ
2012-5-25(金) 23:01
お久しぶりです。 良いウォールナットですねぇ。
僕も冬挽きの板をまだ整理してないので、梅雨までには何とか!と思っています。 桂の大径木は本当に見かけなくなりました、柾挽きに苦しいものが多いです。
artisan
2012-5-25(金) 23:43
たいすけさん、ご無沙汰いたしておりました。
>良いウォールナット
いやいや、並の上、といったところでしょうか。
ホントに良いものは突板屋に買い負けますわ。
>桂の‥‥、柾挽き
正直、製材直前まで迷いましたが、
さほどの太さも無く、丸っ挽きにしちゃいましたわ。
キツイ板目は向板に、
続いては、側板の場合、辺材側を外に持ってくる、などで対応するっちゅうことで‥‥
たいすけ
2012-5-27(日) 10:33
仰る通りです、、、。先代は後年、柾目に対するコダワリが無くなってきたと言っておりましたが、供給が苦しくなってきたこの頃にその心境になれれば、といつも思います。 丸太の芯を通して(基本的に)、丸っ挽き(僕の辺りでは「ダラ挽き」といいます)が一番製材方法としていいのかなということは最近思い始めました。
artisan
2012-5-27(日) 21:59
たいすけさん、今日は終日、信州でした(松本クラフトフェア)
製材の考え方というのは、樹種により、用途により、
いくつかの方法から適切なものを選択するわけですが、
例えば、ミズナラなどを丸っ挽きにするというのは、
やはり木質の特質、内部応力の解放、外部環境からの影響などの受けやすさ
などから、避けるべき方法であるでしょうね。
虎斑のすばらしい柾目、追柾が獲れますね。
でも、良いテーブル甲板を穫りたいばかりに、
丸っ挽きでやってしまうことも屡々です。
ただ芯に近いところは、3.5〜4寸ほどの厚みで残し、
これを脚部用に角材にするなどして、過度な反張を避けますね。
(今回のウォールナットも同様でした)