工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

座椅子は如何ですか

座椅子
座椅子ですね。
横浜・山の上ギャラリー、「私の椅子展」会場での撮影。
このギャラリーの建物は北鎌倉の造り酒屋を移築したものだそうだが、天井が高く広々とした展示場は外部を仕切る窓も開放的なガラス張りで、独特の豪壮な空間を構成している。
板張りフロアを素足で歩くのは快適なものだが、一部和室の設い(しつらい)もあり、この座椅子もその1室に置かれた。
緑豊かな外の光景に目を遊ばせるには、この座椅子のポイントは良いと思う。
木々を飛び交うリスを探すには格好の場所かも知れない。
会場を訪れるようであれば、ぜひ腰掛けていただきたい。
以前もお話しさせていただいたところだが、座椅子という分野では良質な掛け心地を与えてくれるものは少ないもの。
床(畳)とシートハイ(座ポイントの高さ)の関係が重要で、通常のぺったんこ座では長時間の使用は耐え難いものがある。
この座椅子のシートハイは150mmだが、あぐらを掻いても、あるいは脚を投げ出しても程よいバランス。
また背部クッションは腰椎部を支えてくれるほどの高さを確保しているに過ぎないが、この辺りも椅子の掛け心地、長時間の使用における身体的ストレスに大きく関わってくるところで、椅子制作においては最も重要なポイントとなる。
骨盤から第三腰椎のあたりで如何に身体を支えてやるのか、というところが肝要と言われるが、この座椅子も、このキホンに準拠させている。
つまり背部の腰回り位置に堅めのクッションを施すことで、椅子制作の要諦を確保し、またあえてクッションを腰の位置までとしたのは、背部の上半分はクッションを除くことで木部を見せるという意味もなくはないが、クッション部との差尺を確保することで背のS字カーブに合わせたラインを形成させるとともに、暑い夏に背中との接触部を少なくさせるという目的を持たせた。
結果はどうかって?
座って確認していただくしか無いだろうね。
制作者本人としては、まずは満足のいくものとなったと考えているのだが‥‥。
主材はブラックウォールナットだが、ご覧のようにかなり濃色なものとなっている。
決して着色されたものではなく、ナチュラルなオイルフィニッシュ。
あくまでもこれは材木の個性。
現地乾燥(スチームド)のものでは得られないブラックウォールナット本来のチョコレート色が良く出ている。
張り地もウール100%の最高級品。
肘は片方だけだが、左右は好みで対応したいと考えている。
無論両肘でも承りたいと思うが、基本はあえて片方とした。

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