工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

非デジタル世代を魅了するiPad(iPadとは?)

日曜日の映画館

日曜日の映画館ロビーでのこと。
この映画館はいわゆる単館上映のものばかりをセレクトして上映してくれる小さな小屋。
個人的に見逃したく無いと思われるタイトルの7割ほどが、掛かる、ありがたい小屋。

そこで、壁に貼られた上映映画を紹介する雑誌の切り抜きをiPadのカメラで数枚撮っていたのだが(この日はカメラを持たなかったため。iPhoneでも良かったのだが、より高解像度を求めたためのこと)、これを見ていたらしいご婦人から声を掛けられた。

これがあのアイパッドですか?
どこで買えるのですか。
どういう風に使うの?
‥‥いきなり質問攻めに遭ってしまった。

壁のチラシを勝手に撮っちゃいけないでしょ、などと見咎められるのかと一瞬思ったのだが、いいやそうではなく、iPadへの異常な関心だった。

上映にはまだ15分ほどの間があったので、近くの席に座らせ、iPadの概略、買い求めるのであれば、いくつかの種類があるので、まずそれを選ぶこと。

自宅にWi-Fi環境があるのかどうかの確認、3Gキャリアが必要なのかどうか、PCはどの程度使いこなしていらっしゃるのか、等々、最低限のことを聞き出し、このご婦人の使用環境を想定し、もっとも適切と思われる機種の選択と、買い求め方、Wi-Fi導入の方法等、一通り説明した。

顔を紅潮させながら聞いていたこのご婦人、映画もそっちのけで、Softbankショップに駆け込むほどの勢いだった。

70歳ほどのご婦人だったが、こうした人たちにとっても、iPadというコンピューターならぬ、タブレットマシンの登場は朗報であろうと思った。

もちろんPC、Macに親しむ人であれば、iPadの効用も深く理解し、個々の関心に応じた使いこなしができるだろう。
しかし、これまで必ずしも積極的にコンピューターを使ってこなかった人たち(特に高齢者、社会的弱者、身体的弱者など)にとってこそ、朗報なのだろうと思う。

日々の仕事の合間に、少しづつアプリを起動し、その全く新しいGUI(Graphical User Interface)に親しむように勉めているが、これは明らかにMacともiPhoneとも異なる、新次元の何ものかであることを確認させられている。

iPadはiPadであり、コンピューターでは無い

さてところで、iPadはPCやMacに取って代わることができるものなのだろうか。
この問いの答えはYesであり、Noでもある。

どういうことか。


ボクのようなユーザーにとって見れば、iPadはiPadであるに過ぎない。
Macに取って代われるものにはなり得ない。
例え今後、iPadはさらに革新的なデバイスとして進化し続けたとしても(恐らくボクなどの予測を大きく超え進化するに違いない)、その点については変わらないだろう。

iPadのため特化したいくつかのアプリを試用してみただけにすぎないが、Macで操作してのWeb構築作業、画像レタッチ作業、あるいはPagesでのクールな文書作成作業といったクリエイティヴな作業には、iPadはあまりにも限定的であるということだ。

確かにiPhotoでも、Pagesでも、iPadに最適特化され、マルチタッチのGUIを駆使しての操作は、これまでなかった未体験ゾーンの喜びと相まって、すばらしくクリエイティヴな作業が可能であることに驚きもし、嵌まってしまうのも確かなのだ。

でもそれは、Macで行うこととは異なる次元の話しであり「マルチタッチ」という異次元での操作感の素晴らしさでしかない。
つまり、iPadは直感的な操作が可能であり、通常のソフトウェアのように、事前の学習など無用であるという優位性は圧倒的なのだが、数値制御などでの微細なコントロールとか、ピクセル単位での作業は想定していない、ということなのだ。

一方、就学前の幼児でさえ、誰からも教わること無く、スワイプを覚え、2フィンガーでのマルチタッチを覚えれば、かなり自由自在にアプリを扱ったりすることが可能だろう。
親からの指導など全く無用で、さっさと親よりも早く使いこなすかも知れない。
あるいはそれまでコンピューターに縁の無かった高齢者、社会的弱者にとっては、十分にPC、Macに取って代わる、新たなコンピューターとして受け入れられるだろうと思う。
最近ではMacを購入しても、ろくなマニュアルが付いてこないのだが、iPadに関しては何もいらないだろう。
必要なのはキャリアから与えられるメールIDの設定マニュアルくらいだ。

Webブラウジングも快適だし、メール送受信も、むしろコンピューターよりも快適に行うことができる。
人間の目の解像力よりも、より精細だと言われる〈Retinaディスプレイ〉は完璧な美しさで心ときめかせてくれる。
わずか9.7インチに2,048×1,536という解像度というのは実に驚異的だ。

つまり、クリエイティヴな作業については限定的ではあるものの、情報端末としては十分過ぎるほどにPC、Macにとって代わるものとして受け入れられていくだろう。

使用環境を考えてみれば、よりその特徴ははっきりしてくる。
多くの家庭ではPC、Macは書斎のようなところに置かれ、リビングにはノート型を持ち込むしかなかったはず。
Wi-Fi環境さえあれば、iPadは手軽に部屋のどこでも自由に、どんな姿勢でも、実に快適に、存分に使うことができる。
TV受像機を前にし、ながらで楽しむことができる。(家庭へのWi-Fi環境の導入は10,000円を超えない程度の投資で叶う)

実機を導入して驚いたのだが、バッテリーの持ちがとても良いのだ。
公称10時間ということだが、全く偽りは無いだろうといった感じだ。
一般のノート型の倍は使える。
Apple.inc独自開発のCPU A5というチップがいかに省エネであるか、ということだ。(ただその分、充電には相応の時間が掛かるのも事実なのだが)

モバイル環境からさらに考えてみよう。
まだボクはこのiPadを電車の座席で開く勇気も無いが、新幹線座席のようなところでは、これまでのように隣の席に遠慮すること無く開くことができるだろうし、カンファフェンスのような会場でも、ノート型を開くよりはよほどストレスフリーだと思う。

慣れれば仮想キーボードも使いこなせるようになるだろうから、メモを取るのも何ら問題が無い。
パワポの投影が気になれば、そのままiPadを向けてシャッターを押せば良い。

上述のようにバッテリーの持ちはすばらしいので、戸外でも容量減を気にすること無く使えるだろう。

つまり、PC、Macを積極的に使いこなしている者からすれば、限定的で受動的なマシンかも知れないが、それはほんの一部の特異な少数派なのであって、メモを取る、YouTubeを楽しむ、Webブラウジングをし、お買いものを楽しむ、メールで友人と交流する、デジカメ撮影した画像を簡単にレタッチして、家族や友人に配信する、などといった作業では、iPad1台あれば、十分なのだ。

Microsoft社のiPad対抗戦略

スティーブ・ジョブズはとんでもないマシンを開発したものだと、あらためて思う。
Microsoft社にはPCで世界を席巻されてしまったものの、モバイル世界ではiPhoneとiPadで逆襲し、完全に制覇してしまった。
こうしてコンピューターというものをビジネスの現場から解放させ、パーソナルな生活の伴侶として再定義するという異次元の新世界こそ、スティーブ・ジョブズ氏が長年にわたって願って止むこと無く、戦い続けてきた偉大なる成果なのだろうと思う。

先頃、これまでモバイルの世界では全く存在感の薄かったMicrosoft社が、「Surface」シリーズというモバイルデバイスを発表した。

OSだけではなく、ハードウェア世界に進出することを決めたようだ。
Appe社には、これまで好きなようにモバイル世界を闊歩されてきたが、このままではおくものか、とばかりの挑戦だろう。

現在はGoogle社のAndroidがモバイル世界のシェアを抑えているものの、ハード、ソフトの分離の不利を横目に、Microsoft社の独自のソフト+ハードの新たな挑戦は、どこまで市場に受け入れられるだろうか。
相互の友好関係を越えた、ハードウェア開発製造会社との軋轢をあえて仕掛けるMicrosoft社の挑戦は、長期経営戦略として大きな賭となるだろう。

個人的な関心の先は、iPadの牙城を揺るがすほどのキラーマシンとして現れるかどうかだが、無論、大きなインパクトを与えるとしても、iPadを超えるものは出せないのではと思う。
所詮後追いでしか無いということもあるが、それ以上に、Apple社がiPad開発に掛けたほどの理念がMicrosoft社に果たしてあるのか、という領域の問題である。

ただWindowsマシンをモバイル型に小型化し、マルチタッチを搭載しただけのタブレットでは、その他多数のものと何も変わるものでは無いからだ。


※ 参照:
iPadビデオ
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《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 素人目に考えて、artisanさんのように物を売る商売をしている人が
    iPadを使っている風景として連想するのは、顧客へのプレゼンでは
    ないかと思うのですが、どんなもんでしょうか?
    確かに工業製品とは違うので、画像で表現できることは限られると
    思いますが、ツールとしては使えるのではないですか?
    iPadでは無いですがdocomoのタブレットのテレビCMで、3次元画像をタッチパネルでグルグル動かして見せるのがありますが、あれって
    どうするのでしょう?
    難しいのでしょうか?

    • acanthogobiusさん、アドバイスありがとうございます。
      仰るように顧客へのプレゼンツールとしては、とても有用です。
      ペタッと平置きして複数の人が同時に閲覧できますからね。

      iPad導入に踏み切ったのも、Webリニューアルがきっかけ。

      3Dですか?
      〈Shade〉のアプリもあります。グリグリ動かして楽しめますよ。

      acanthogobiusさんもどうですか。
      Blog更新もバッチリですよ。

  • ipad礼賛ですね!
    ピコっと押して、画面が出てくるまで待って、
    というのがなくなっただけで、すごいことです。
    デジカメが全く使わなくなりましたね。
    WordPressもすぐに使えましたし笑
    ワードとかエクセルはできないのでしょう?
    書類などを書いて送る時はどうしてますか?
    ホールの申し込みをした時に、申し込み様式として、
    エクセルがが送られてきて、びっくりでした。笑
    家人のpcを借りましたけど。

    • Microsoft社は iOS対応のWord、Excelを出すような噂もあるのですが、どうなのでしょう。

      さて、まずはiOS対応の〈iWorks〉(Pages、Numbersなど)を使えば、
      クールで素晴らしい文書がマルチタッチで簡単にできます。

      問題は、この書類とMS Officeドキュメントフォーマットとの互換性とその方法。
      Macであれば、それぞれのフォーマットに別名保存し、ファイルやり取りが可能。

      iPadのiWorksでは作成した文書をメール送信する場合、〈PDF〉〈Word〉に書き出して添付できる方式が標準とされていますので問題ありませんね。

      また、逆にExcelやWordでメール添付で送られてきた場合、問題なく開けます。
      これを編集するには、iOSのNumbers、Pagesで書き出すことが可能で、これで編集ができちゃいます。

      あるいはご自身のネットワークでは、いったんiCloudへ上げておけば、そこからそれぞれのフォーマットで読み出すことが可能です。

      様々な方法が考えられますが、いずれにしましても〈iWorks〉を入れておけば、MS Officeに対応できると考えておいてよいでしょう。
      ぜひ〈iWorks for iPad〉導入を !(Pages、Numbers、ともに¥850です (^^)

      こちらの記事が参考になります。

  • 詳しくありがとうございました。トライしてみます。

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