工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

iPad とは一体何なの?

iPadステージ上には小さなテーブルと、ル・コルビュジェ(+ ピエール・ジャンヌレ + シャルロット・ペリアン)デザインによる「Grand Confort」(LC2)1つだけの設え。(12
この「座るための機械」の如くの名作椅子に脚を組み、ゆったりとした姿勢でくつろぐスティーブ・ジョブズ氏が手にするのが「iPad」
まさにリビングでくつろぎの時間にマガジンを開くが如く……。
噂通り、米国時間1月27日、Apple社のスペシャルイベントで新しいタブレット型のデバイスが発表された。
スティーブ・ジョブズ氏のキーノートスピーチを観ての感想としては、確かに革新的なデバイスと見たのだが、果たしてiPhoneの世界的ブレークに次ぐヒットになるのだろうか。
市場(株価)の評価もまずまずのようだし、Apple社にとっては慶事であるのかもしれないが、ボクのようなコンシューマー領域のユーザーとしてはこのデバイズをどのようなポジションに位置づければ良いのか、まだよく分からない、というのが正直なところかな。
確かにiPadはコンピューターの世界を変えていくほどのインパクトを持つものであるかもしれないとの高い評価を与えているところも少なくないし、いやいやコンピューター世界の革新にとどまらず、書籍、雑誌などのコンテンツ産業の流通形態をも変革していく、とその影響の大きさを指摘する人も多い。
iPodが音楽鑑賞の環境を大きく変え、音楽コンテンツ流通形態を大きく変えてしまったように、である。
少し具体的に見ていこう。


キーノート同様のガジェットとして先行販売されている電子書籍のAmazon Kindleにとってはかなりの脅威となることは必至だろう。
なぜならば書籍閲覧用として搭載されたアプリ「iBooks」は、Amazon Kindleと真っ向対決するものだし、リリース時点で契約された出版社も大手数社の名前が挙がっているからね。
しかもiBooksはiPadの数多くの機能の中の1つでしかない。
一方のKindleから電子書籍機能を除けば、何も残らない。
ハードの領域でもAmazon Kindleがモノクロであるのに対し、iPadはマルチタッチ対応の9.7インチIPSフルカラー、1024×768 pixels ディスプレイ。
ただこの「iBooks」は現在のところ米国内のみ。日本でも3月中には販売されるようだが、iTS(iTunes Store)のような書籍ネット販売システム、「iBook Store」の設置は未定のようだ。
したがって米国以外の国では「iBooks」は搭載されずに販売される。
先にも触れてきた問題だが、こうしたデジタル書籍の時代に移行しつつある中、日本国内の既存の出版社との契約には大きな壁が立ちはだかっているからだ。
しかもApple社は印税の70%を書籍制作者側にもたらす(米国の場合。KindolはiPad発表を控え、それまで35%だったのを70%に改めるとの発表あり)というのだから、これは大変なことになる。
既存の紙媒体、印刷業者、流通形態は蹴散らされてしまいかねない内容だからね。
ライターは有能なエディターらと組むことで独自に「iBook Store」へとリリース可能となる。
まさに世はインディペンデンスの時代の夜明けか。
とても感慨深いものがあるね。


「iBooks」以外で搭載されるアプリは今のところ、Safari、Mail、Photos、Video、iTunes、Maps、Notes、Calendar、他、14,000という数に上るiPhone用のAppのほとんどが対応。
ま、要するにiPod touchがそのまま大型となり、書籍閲覧などがより強化された、というようなイメージか。
ただ良い意味で想定を覆したのが、 「iWork」 というApple社のオフィススイーツがiPadに対応してきた(iPad ライクに整えられて)。これはすばらしいと思う。
「iWork」は強力なアプリであり、これが搭載されることによりモバイルMacとしてかなりの部分でコンピューターに代替できるものといえるかも知れない。(iWork=ワープロ + スプレッドシート + プレゼンテーション)
つまり単にWeb閲覧端末、あるいはPC、Macで作成されたコンテンツを表示するだけではなく、このiPadそのもので書類作成をしてしまおう、という位置づけとなる。
キーボードはiPhone、iPod touch 同様にソフトウェア駆動だが、フルサイズキーボードと同じぐらいのサイズでミスタッチも避けられそう。
通常の物理的タイプをしたければ専用の外付けキーボードもオプションとして用意されている。
もう重いノートブックパソコンを持ち歩く必要が無く、B5サイズ、700gのiPadだけを持てば十分ということか(予備のバッテリーも不要、後述)。
ただPC、MacのようにAdobe系のソフトをインストールしよう、などという要望には応えてくれるものではないから、ここは勘違いしないように。
外部アクセスは最新の802.11n、Wi-Fi のタイプ、およびWi-Fi + 3Gネットワークの2タイプ。
問題のバッテリー駆動時間も10時間という驚きの耐力。
ニューヨークから東京までの機内、1度の充電でビデオを流しっぱなしができるとのこと。
これは独自開発のCPU、1GHz Apple A4 というチップの性能によるものなのだろう。
実機に触って確かめた人の多くが、そのUIのすばらしさ、対応速度の速さに驚いていたが、iPhoneのCPUが0.6GHzであるのに対し、こちらは1GHzというモバイル端末にしては革新的な性能を発揮しているからこそなのだろう。A4は高速で省電力性にも優秀。
詳しくは分からないが「メインプロセッサとグラフィックスチップ、さらにメモリコントローラなどの機能を単一のチップ上に統合したSOC(system-on-a-chip)」でintelがめざしているものを一歩先にいくものだとか(CNETからの情報)。
しかし驚いたのが価格設定。
噂では当初1,000ドル前後になるだろうと言われていたが、何と499ドルからというスペシャルプライス。日本円換算で45,000円か。
もうこれはAmazon Kindleだけではなく、世の中のネットPCのほとんど全てをはじき飛ばすような機能と価格設定。(nikkei TRENDY:iPadは「ネットブックキラー」となるか

総括的に見れば……、
かなり人気を博して売れるでしょ。
ネットブックのユーザーは移ってくるだろうし、ボクの世代から上のiPhoneユーザーにとっては、衰える視力ゆえに、この大型 iPod touchは魅惑的だろう(ボクは無縁だが)
しかしAppleはそうした領域だけを想定しているのではないと思うな。
既存のPC、Mac、あるいはiPhoneを超えた次世代の全く新たなプライベートデバイスとしての位置づけとして提示してきているのではないだろうか。
iPhoneに最初に触れたときのドキドキ感は言うまでもなくあの独自のUI (User Interface) にあるのだが、最初の戸惑いを超え、やがてどんなアプリも説明など不要に、指がカーソルでポインターであるという、とてもシンプルで直感的な操作で楽しめるようになっていったのだったが、そうした新世代のUIをさらに超えて、このiPadはどんな世代にも、どんなにITオンチでも、誰もがシームレスに快適なIT環境を手にすることのできる世界初のガジェットになっていくのかもしれない。
ボクはiPodを第二世代となった頃の2,002年に購入したのだが(今もカーステレオのミュージックソースとして活躍)、当時はこれほどまでにヒットするものとは考えもしなかった。
iPhoneにしてもブレークしたのは iPhone APPが登場してからだったしね。
いずれにしても 国内で普及していくのは iBook Storeが整備されて以降のことになるだろう。
その頃になれば電車のシートに座り、おもむろにiPadをバッグからとりいだし広げる勇気もでてくるだろうか。
実は密かに期待しているのは iPhone 3GSの方へと、このiPadに初めて搭載された1GHzのA4チップを持ってくることだね。
めちゃくちゃ快適に動くようになると思うよ。(少しケチくさいオチになってしまったかな)

3つの画像は上から「Grand Confort」(LC2)に寛ぎプレゼンテーション中のジョブズ氏、A4チップ、iPadのスクリーンキーボード(いずれもキーノートスピーチ映像からのスクリーンショット)

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