ホゾを締める(丸ホゾ考)
この画像、iPhoneカメラでの撮影ということもあるけれど、調子が良くないので分かりずらいかも知れない。
スツールのホゾ部分に赤外線を照射している、の図である。
うちの定番のスタッキングスツールを10脚ほど制作しているのだが、この脚部の加工工程の1つである。
このスツール、座枠には丸ホゾで結合され、クサビで堅牢度を高める、というシンプルな構成。
制作加工精度が水準以上であれば、一般にはこれで十分だろう。
ただ、問題無しとはしない。
以前、百貨店に長期にわたり展示された中のいくつかに問題が発生。
この丸ホゾ部分に緩みが生じたのだ。
経験者で無ければ実感できないかも知れないが、百貨店における展示は、木工品にとってはとても過酷な環境。
冬季も、夏期も、館内は過度な乾燥状態におかれる。
そのために、木は思いの他に収縮し、暴れ、変形し、ホゾの緩みを生じさせる。
これを回避させる最善な方法は、すべての部材の含水率を徹底管理し、加工を進め、組み上げ、仕上げ、納めることだろう。
こうした作業環境を確保、維持することは決して容易ではない。
材木倉庫から、作業場、そして作品ストレージまで、日本の湿潤な大気から遮断し、人工管理された状況に置くことは、大きな家具メーカーならいざ知らず、個人工房ではとても望める条件では無い。
結局は、材木の管理はもちろんだが、その家具ごとに要所を考え、作業過程では可能な限りに大気から遮断させ、スピーディーに加工を進め、適切にホゾを立て、組み上げることだろう。
梅雨時などに組み上げるなど、もってのほか!(と言いたいところだが、実態はそうでもない 汗;)
さて、このスツールのホゾの場合だ。
Topの画像のように、赤外線ランプでホゾ加工部分を締めるのは有用だというのがこの記事のテーマ。
他にもいくつかの手法があるかも知れないが、この方法は簡便で、かつ効果は高い。
少し詳しく解説すれば、以下のようだ。
- オイル缶(20L)2個を準備(ガソリンスタンド、車両整備会社などから使い古しを無償で譲渡してもらえばOK)
- 1つ目のオイル缶底中央に、E26のソケットを取り付け、コードを側面から出す
- オイル缶、深さの上から1/3ほどの側面、3ヶ所にストッパーとして釘などを埋ける
- このオイル缶の上に重ねる2つめのオイル缶の底全面には、メッシュ状に、可能な限りにたくさんの小さな穴を穿つ(ドリル加工より、ドライバーの先端などを使えば簡単)
- E26のソケットに赤外線ランプを取り付ける
造作も無い、ただこれだけの準備で十分。
ホゾ加工部分を下に脚部を入れ、スイッチON !
乾燥状況を時折確認し、時間経過のデータを取っておく。
今回はオニグルミ、ということもあり、比較的短時間(3時間ほど)に目的とする乾燥度に達した。
これは材種、その材の乾燥度合い、そして赤外線ランプのパワーにもよる。
うちでは、わずかに125Wのランプを用いているが、パワーがあれば、より短時間に収縮するのは言うまでも無い。
ただ急速な過乾燥は木材の物理的性質を損なう嫌いもあるだろうから、ほどほどにしたい。
因みに、この脚部は35mmの厚みを持つが、照射後は0.3〜0.5mmの収縮を確認している。
含水率計でば3%減ほどの収縮だ。
その程度なの?といった受け止め方をされるかも知れないが、枘の嵌め合いがタイトであれば、この0.3〜0.5mmという数値は環境変化、経年変化に対する、緩み予防実効性は高いとみるべきものだろうと考えている。
なお、前提条件として当たり前のことだが、その後のホゾ加工の加工精度は徹底して追求すべき。
ご覧のように丸ホゾ部分の木部は狭小であり、決してきつすぎてはならず、オスメスの嵌め合いは、手でスムースに挿入でき、かつ緩みの無い精度で無ければいけない。
以前、何度か紹介したが、うちの丸枘加工は超硬刃のプラグカッターを用い、高精度に加工し、枘穴は同寸法の木材用のドリル刃を用いている。
(昔の木工ドリル刃の寸法展開は尺貫法単位が基本だったが、今では1mm単位で提供されている)
上述に関連し、過去、いくつかの記事を上げてきているので、興味のある方はご覧いただきたい。
なお、過去記事の記述だが、改行無しでとても読みずらいのが多い。
これは、Blog構築の違いから生じてしまっている。
現在のBlogはWordPressでの構築だが、以前はブログサービス会社のもので構成していた。
自身でサーバーにデータベースを構築し、ここで運営管理するWordPressに移行する際、過去の記事も移植させ、一方で関連画像なども移植させることまでは成功したのだったが、個別記事のレイアウト、改行などは無視されてしまい、いまだ修正作業は手つかずの状況。
そんなわけですので、たいへん申し訳ないのだが、読みずらいことについてはご容赦いただければと思う。
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