工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

機械の稼働へ向け

機械の搬入設置を終え、遅れていた電力供給も繋がり、とりあえずは稼働できる状態に。
続いて工具、資材などを収納するキャビネットも移設。
四半世紀にわたる使用歴がもたらした状態というものは、新しい器に似合うほど立派なものではないが、汚れを落とし、再塗装することで再び鎮座してもらうことに。

それでも不足する収納力を補うため、いくつかは新たに作ることになるが、それらは仕事の合間を縫ってのものとなり、しばらくは段ボール状態だ。

ところで、今回の工房起ち上げにあたり、新たに数種の機械を増強した。
1つは〈クロスカットソー〉というもの。
要するに横切りのことだが、馬鹿デカイ丸鋸で荒木を断ち切るというもの。

140721bこれまではいわゆる移動定盤の横切りで行っていた作業だが、かなり精度が要求される横切りにこうした工程を委ねるのは、いかにも無謀。

木取り専用の荒技的な機械に委ねるということになった。

この機械はスイッチ投入後、自動的に被切削材を機械的に押さえつけ、それと同時に下部に隠れていた丸鋸が上昇し、一気に断ち切るという機構のもの。
安全で、軽快にカットできる。

次ぎに、ボール盤(Drill Press)を更新することに。
これまでは日立のありふれた13M卓上ボール盤を使ってきたが、ストッパーが壊れたこともあり、更新することにした。
DELTAの18-900Lという比較的新しいタイプのもの。

購入したのは5月だが、米国からの輸入運送手続きに少し問題があったりで、残念ながらまだ入荷していない。
入荷すれば詳しく紹介したいと考えている。

とりあえず、選択のポイントは以下のよう。

  • フロア型
  • 懐の深さ(日立13M: DELTA:18”)
  • レーザーポインター
  • 送り量が深い(日立:80mm、DELTA:150mm)
  • 定盤のサイズ(500×355 mm)
  • 定盤の傾斜(左右+前後)

DELTAには工業用、あるいは様々な業種向けの専用品など、他にも多くのボール盤があるようだが、この18-900Lは木工に特化した設計であり、類種中、トップクラスの品質を備えているようだ。
価格も専用機種ほどには高くなく、買い求めやすいのではないか。

機械に関連し、新たに設備しなければならないことがある。
集塵システムである。
これまでは配管もせず、〈オバQ〉1台を使い回していただけだったが、然るべく、高能率の集塵機を設置し、配管を施し、良好な環境へと整備していきたいと考えている。

木工作業というものは、その性格上、木屑との戦いという側面から逃れることはできない。
これは作業環境を整えるということに加え、作業者の健康衛生に深く関わることでもあり、私のように呼吸器疾患を抱えていればなおさらのこと。

木工用の電動工具でも、代表的なドイツFESTOOL社のものなどに視られるように、いかにダストを完全に、かつ簡便に排除するかといった思考が貫徹されつつあるというのが近年のトレンド。

知り合いの木工屋では、自力で立派に本格的に配管する猛者もいるのだが、米国の通販サイトでは、そうした資材が充実していて、流量計算などができれば、自作という方法も十分視野に入ってくる。
しかし私に果たして同様なことが可能だろうかと、頭を悩ませているところだ。
餅は餅屋に任せ、自分の本業に徹した方がコスト的にも良いという判断もあるわけで。

ま、そんなこんなで、少しづつ整備を進めていくことになる。
機械の設備、工房の整備というものは、目的的にやらねばならない側面と、個人工房の制約上(限られたスペースと、要求される水準、そして資金力)、本業と並行しつつ、徐々に、という側面の両方がある。

加え、私の場合、住まいの施工・移設に伴う、様々な付帯設備の制作等もあり、次から次へと課題が浮上し、それはもう能力(パワーと資金力)を超えるほどのもので日々頭痛の種が増える一方だ。

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hr

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  • 最近御サイトを発見し、大変楽しく読ませていただいております。私はアメリカで木工の趣味をはじめましたので、日本の木工の現状はまったく知らず、大変興味深いです。ご指摘にありましたように集塵は製品遡及で大変重要なファクターになっており、近年のFestoolの躍進の一端にもなっています。FWWの223号の記事にもなっておりますが、大型の集塵機も今までのワンステージ、2バッグ型のものから、サイクロン型に、そしてフィルターもHEPAに近いものが出てきております。ワンステージで5万円以下、サイクロンでも移動型が10万円以下で求めることができるのも、趣味の市場がそれだけ大きいということかと思います。私も最近オネイダのサイクロン+HEPAのものを買いましたが、入る空気よりも出る空気のほうがきれいなのではないか、というぐらい部屋の空気がきれいに保たれます。プロなら労働環境はなおのこと大切ですよね。
    もうひとつ面白いのが、針葉樹に対する米国の評価です。広葉樹に対して廉価であり、機械や鉋等のツールも広葉樹をきれいにきってなんぼ、という概念を持っておりますが、日本の木工のプロの針葉樹に対するこだわり、実は針葉樹の加工は難しい、という点、大変勉強になります。私は現在Mapleにはまってますが、松、杉ももう一度見直そうかなと考えております。もっとも、日本と米国の杉が同じ品質か、というのはわかりませんが。

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