工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

What’s DOMINO ? (FESTOOLから新機種リリース)

DOMINO

FESTOOLのルーターについては先に紹介した通りで快適に使っているが、今日関連パーツを調べるために米国公式サイトに行ったら、何かすごい新製品を見ちゃった。
* DF500Q DOMINO JOINTER

数日前(07/02/19)発表されたNewsなので、国内ではまだ知られていないかも。(Googleすると海外のサイトではたくさんヒットするも、国内では皆無。日本の代理店でも音無)

ボクはこうした海外の電動工具には詳しくはないのだが、恐らくは業界初の機種なのではと思うよ。

ボクが稚拙な解説をくどくどするより百聞は一見にしかずということで、まずは動作の様子のビデオを見ていただこう。
WMP
Quick Time

欧州のサイトにはアニメでの紹介もあったよ。
上から2番目

他にもフラッシュ、pdf、動画などでの詳細な取説、仕様書もあるね
ま、要するにほぞ穴を穿つための電動工具だ。

既にビスケットジョイナーという機種は古くからあるし、多くの方が使っていると思われるから、ほぼそのシステムはよく知られたところだと思う。

しかしこのDOMINOという機種は、カッターを水平方向に前後させて、円弧状に穿つ、というものではなく、ある任意の幅と深さまで水平に穿っていくという、ちょっと驚きの機構を有する道具というところに新しさがあると言える。

ご存じの方もいらっしゃると思うが、欧米の木工機械にはホリゾンタルボーリングマシーンというものがあり、ミルの刃を付けて、両端が半円状(ミルの回転刃による)で一定の幅のホゾ穴を穿つものがあるが、目的とするところは似ているかな。

ただユニークなのは、回転刃の刃先が左右に首を振りながら掘っていくという斬新な機構を開発し、これをコンパクトな工具として設計、製造させたところは見事と言って良いだろう。


我々日本の木工の仕口においてはほぞを多用するという文化が根付いていて、その堅牢度の高さを含め、接合仕口では誇るべきものがあると自負して良いだろうから、この新しい機種のユニークさについては一定の評価が受けられるだろうと思う。

つまり一般に用いられるダボでもなく、ビスケットでもない、その両方を兼ね備え、ホゾのような構造を持たせるものとしてなかなか有効なものではないだろうか。

たださて我々プロの現場としての活用法を考えたとき、そのほとんどは角ノミと傾斜盤で意外と簡単にほぞのオスメスを作ることが出来るので、あえてこのDOMINOのご登場を願わなくとも良いと思うが、それ以外の具体的な使用場所となると…、椅子などのいわゆるクセモノと言われる機械加工では難易度が高い場所、傾斜を伴う接合部の箇所などへのほぞとしてはかなり有効であろうと思われるがどうであろうか。

無論、ホゾ穴と、平ダボの密着度、あるいは加工精度、使い勝手、など多くの検証されねばならない課題はあるだろうが、サイトから提供されている情報を見る限りにおいては(個人的にはメーカーが信頼性の高いFESTOOLであるということも合わせ含め)、期待度は高いものがある。

FAQによればカッターの刃の持ちは堅木で4,000個というのだが、刃物の画像にはHWという刻印が見える。これは超硬刃(カーバイドチップ)を指すはずだ。
したがってかなりの硬度を持つものと考えて良いだろう。つまりプロ使用だ(因みにボクはラメロのカッターもLeitzの超硬刃の替え刃のものに替えて使用している)。

ビスケットはラメロ同様圧縮されたブナのようだね。管理上湿気で膨れるのを避けた方が良いと記されているようなので、ラメロ同様かなりタイトに嵌ると見て良いのだろう。

なお価格であるが700米ドルで4月から発売の予定だそうだ。
決して安くはないが、20年ほど前にラメロのビスケットジョイナーを日本の輸入代理店で求めたときには確か12万円ほどしたと記憶しているので、それを考えれば決して高い買い物ではないだろう。

なおFineWoodworkingのNo.190にもこの機種が特集されているらしい。
(皆さんのところへは届いている?うちにはまだ届いていないが、さて…)
Webサイトには来ているよ
〈余談〉知らなかったんだけど、このサイト、ほとんどのページが動画で提供されているんだね。オドロキ(これもWeb2,0って奴ですか?)

でも、こんな工具を紹介するにはいささか逡巡が無い訳ではない。
ほぞの技法を捨象して、こうした工具で代替させるのはギモンがあると言うことは言っておかねばならないだろうね。
あくまでも補助的なものとしての位置づけであることをくれぐれも忘れないようにね。FWWの紹介ビデオのように、テーブルの脚と幕板の接合をプロがこうした工具で代替させるのはレッドカードだろう。(アマチュアの皆さんはどうぞ多用しましょう)
でもおもしろい。

〈余談その2〉
また感心させられることとして、このメーカーのWeb上での情報の提供はとても適切で詳細にわたる。
FAQ1つ取ってみても、微に入り細を穿ち、という感だね。
とても日本のメーカーには望むべくもない。
また一方、同社日本の代理店では同様のものは望めないのだろうかね。
前回のFESTOOLルーターのエントリは内外価格差が問題になったが、せめて情報の提供ぐらいは積極的にやっていただければと願っておきたい

FESTOOLサイト
*追補1(07/02/25)

■ ネット上に工具のショッピングサイトではあるがこのDOMINOの情報ポータル的サイトになっていたり、使用例が紹介されているのでLinkしよう。
必ずしも想定外というものではないが、参考にはなるだろう。(豪州のサイト・販売価格が異様に高いけれど…)
IDEAL TOOLS

【関連記事】
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  • これはすごい、これはかなり画期的な機械ではないでしょうか。
    強度を必要とされる場所に使うのは控えるべきでしょうが、さほど強度を要求されない場所 (たとえば扉の多数の飾り横桟とか) に使えばかなりの効率化が期待できそうに思います。
    700米ドルなら真剣に購入を考えてみたいですが、ルーターのように個人輸入が事実上不可能であったり、日本の輸入代理店が扱いをしなかったり、扱ったとしても破滅的な高価格になってしまうようではこまりますね。

  • アメリカ人の考えそうな道具ですね。
    基本的に締まり代が取れないので使用場所は限られる
    のでしょうか。
    FWWのビデオを見る限りでは刃が水平移動する時に
    本体が動いてしまわないのか心配です。
    個人輸入できれば使ってみたい気もしますが
    代理店が壁になりそうですね。

  • この”ドミノ”を使わないでも、海外でよく見られるホゾの角をヤスリなどで丸くする方法(すいません、正式名称がわかりません、)と組み合わせるならば、角ノミ盤の代わりとしても機能するのでは無いでしょうか?
    いわゆる四方転び構造の椅子などを製作する際には、とても有効な気がします。欲しくなりますが、日本の代理店では扱ってはくれないのでしょうかね。

  • 齋田さん どうも、
    ご同意いただけ意を強くします。
    道具にこだわりの齋田さんですから、これでお墨付きですね。
    入手については、何とかなるでしょう。
    まずは齋田さんからゲットしていただき、レビューをお願いしましょうか。
    acanthogobiusさん、
    いわゆる、ホゾ加工を目的とするものですので、我々としては精度、剛性などがDOMINOなるものでどの程度確保できるか、という点での評価が気になるところです。
    Lamelloを長年使ってきたところから敷衍するならば、高精度な位置決めなどは昇降盤+角ノミ、に比肩できるものではないと考えるべきでしょう。
    昇降盤+角ノミでは0.1mm単位で攻めることが可能ですが、DOMINOの機械的特性からして、そのようなものではなく、あくまでも簡便に、あるいは傾斜箇所、角ノミ盤セットが困難な形状、などの対応への至便さ、といったところでの評価を買うべきなのでしょう。
    整理すれば……、
    プロ:簡便な傾斜接合部へのホゾ加工。
    アマチュア:機械設備が無くとも、それなりにホゾ様のものが可能。
    と言ったところでしょうか。
    TAZAWAさんのお話し、「なるほど ! 」という感じですね。
    オスを作る設備、および態勢はあるけれど、メスを作る角ノミが無い、という環境では有効では、ということですね。
    その通りですね。
    使用者それぞれの環境に合わせて使い方も多様です。
    汎用性が高いということでしょうね。
    何かヨダレが出てきちゃった。

  •  おもしろい機械だとは思いますが、ホゾとしての強度・精度はあまり期待できそうになく、それに日本ではむちゃくちゃな値段になりそうです。コストパフォーマンスを考えると、私はまず導入することはなさそうです。でも興味はあるので、だれか”人柱”になってくださいな。
     すこし横道にそれますが、ジョイントカッターは私はマキタのものを使用していますが、通販の実勢価格だと35000円くらいで入手できます。元祖のラメロの1/2〜1/3くらいで、刃もはじめから超硬刃が付いています。ラメロの機械にそれだけの”あて”があるのでしょうか? 両方を使用された経験のある方のご意見はありませんか。

  • 木工房オーツー:大江進さん、お待ちしていました。 (^_^;
    辛口コメント感謝します。
    こうした新機種では冷静な眼で見るのが肝要。
    >ホゾとしての強度・精度はあまり期待できそうになく
    その通りでしょうね。
    記事中でも、コメントでも触れましたように、
    プロとしてはある特定の場所での活用において有用性があるという位置づけではないでしょうか。
    アマチュアの方には機械設備に代替させる簡易版として汎用性も高く、有用ではないでしょう。
    マキタ ジョイントカッターはリリースされた時に、やっと日本でもこのような工具が開発されたか、と感激したものでした。
    Lamelloとの差異は使っていませんので確たる事は言えませんが、マキタのボデーはダイキャストではなく鉄板ではなかったでしょうか。(記憶違いかも)
    機械的な剛性、精度などでの差異なのかな。
    過去FWW誌などでのインプレッション記事もあったのだろうと思いますが、バックナンバー紐解く元気がありません。(Webサイトチェックするもヒットしませんね)
    Googleしていたら次のような比較記事がありました。
    http://woodwork.cocolog-nifty.com/woodwork/2005/03/8__.html
    いずれにしてもこのビスケットジョイナー自体仕口製作においては機械加工に比肩するほどのものでもありませんので、機種の差でさほどの違いが出るものでもありませんでしょう。
    〈余談〉以前、機械屋にLamelloのビスケットを発注した際に、makitaのものが入荷して、返品したことがありました。…>_<…
    そういえばビスケットはHAFELEでも扱っていますよ。
    (いずれも圧縮されたブナが素材ですが、欧州のブナは日本のものと異なり暴れが少なく品質は良いというのが一般的評価[ワークベンチに用いられる材種は日本では樺がほとんどですが欧州ではそれに代わってブナがほとんどです]ですが、makitaのものがどこで作られているのかは知りたいところです。欧州からの輸入ということも大いに考えられますね)
    なお、本記事、末尾にDOMINOに関する情報を追加Linkしましたので、参照してください。理解を深める手助けになれば良いのですが。

  •  マキタのジョイントカッターですが、ボディ・フェンスなどみなアルミダイキャスト製です。加工精度はビスケットの形状上、切削の横幅と深さは若干余裕が必要なので、問題は上下、つまりフェンスと刃の距離・平行度が正確にセットできるかですね。それが悪いと例えば棚板をはぎ合わせたときに目違いが生じます。私は10年くらいは使っていますが、まず問題はないですね。目違いが生ずるのは部材の平面や垂直がきっちり出ていないか、機械の操作の仕方が適切でない場合です。
     ビスケットの大きさであれば素材が日本のブナでも欧州のブナでもどちらでもいいような気がしますが、現在は国内のブナは基本的に伐採困難または禁止なので、マキタのビスケットも欧州のメーカーのOEMかもしれませんね。

  • 大江さん、さっそくマキタの正しい仕様の紹介、感謝します。
    いずれも、仰るとおりでしょうね。
    この程度の道具での優劣など問題ではなく、ユーザーの好みでよろしいのではないでしょうか。
    先のコメント中、脱字がありましたので、訂正させていただきます(管理者自身のものですので、削除・再投稿も可能ですが、大江さんの投稿との時間的逆転が生じますので、ここで訂正します)
    >アマチュアの方には機械設備に代替させる簡易版として汎用性も高く、有用ではないでしょう。
    の段落ですが、最後のところに[か]を入れてください。↓
    「アマチュアの方には機械設備に代替させる簡易版として汎用性も高く、有用ではないでしょうか。」
    となります。

  • 諸兄のブログを徘徊していたら、自分のサイトへのリンクがあり、おそれ多くもビックリして参上させて頂きました。
    欧米で、「ルーズテノン」という呼称の技術がありますが、これまではルーターに治具を組み合わせて穴を掘るの向こう流と思います。この機械はその作業に特化した機械と言うわけですね。
    断面形状からして、通常の丸断面のホゾよりは、回転方向に対して強度があると考えられますし、ビスケットよりは断面が大きいので、ある荷重以上で急に「ばきっ」といとも簡単に粉砕してしまうという、ビスケットの欠点は回避されるものと思います。
    圧縮されたブナ材ならば、私のような下手っぴアマチュアが知った顔で加工するホゾ組みよりは、よっぽど優れた強度を発揮してくれると思います(笑)。ついでに価格設定もアマチュア向けなら尚良しですが。

  • forestさま 連絡もせずに参照させていただき礼を失したこと詫びます。
    欧米の工房スタイルには角ノミ盤の設備はされていないというのが一般的なようで、こうした道具の需要は大きいものがあるのでしょうね。
    同様のスタイルで楽しまれている日本のハイアマチュアの人から、一方プロにおいても補助的なものとしての需要はあると思われますね。
    何よりもこうしたユーザーの要望に応える企業理念、それをカタチにするテクノロジーの研究開発、使い勝手をとことん追求する姿勢には、ユーザーの一人としてとてもうれしく思います。
    価格は決してうれしいものではないようですが、その斬新さ、市場では類種が無く独占的、といった彼我の市場原理からすれば致し方無い面もあるのかな。
    TB送ろうと試みましたが、ココログとの相性が悪いのか、はじかれますね。
    Linkいただいているようで感謝します。

  • このマシンや、早速、これに目を付けられて取り上げられている杉山さんにも驚き(というか、杉山さんをこのぐらいで驚いていちゃ逆に失礼ですよね。……笑)ですが、こちらにコメントをお寄せになられている方々のお名前を拝見いたしますと、これもかなりの驚きです。
    集うべきところに集っているという感じですね。
    杉山さん、ここは既にWeb2.0じゃないですか!?

  • KAKUさん、この機種どないされます、買いですか?
    いえね、これは“たまたま”見つけちゃった、というフロックですねん。
    こうした工具に関するエントリは確かに読者急増やね。
    アクセス数が減ってきたら、工具の記述 !、という定式が成立するかも。
    Web2.0ということで(無理やりだけど)考えれば、こうしたWeb上での動向が国内販売代理店を突き動かすトリガーになってはじめてそうした評価もあり得るのかも (-。-;)

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