工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

freud 社から《Doweler》リリース

Doweler1テクノトゥールズ株式会社さんからのメルマガで「イタリア・フロイド社製ダブルダボ穴加工機”ダボーラー”」という新しい電動工具のリリースを知った。
この工具を簡単に説明すれば、Lamelloのような機構をしているものだが、その駆動部には2本のドリルが取り付けられるところに大きな特徴を見ることができる。
いわばLamelloとDominoの中間にあたるようなものと言えば良いのだろうか。
ダボを多用した接合手法を取る人には大きな朗報になると考えられる。
例えて言えばJ・クレノフ氏のようなキャビネットメーカーだね。
特徴としてはやはり2本のダボ孔を正確に穿つことができるという機構にある。
定間隔(32mm)で2つの孔を穿つことができるというのは、1本と較べると明らかに性能における大きな差異が認められる。
1本しか開けられないドリルで複数本の孔をぴったり正確に開けるというのは至難なこと。
一度開けた穴を基準として、さらに連続した等間隔のダボ孔を複数開けることができるような機構となっているようだ。
恐らくはこれまで同等の機構と性能を持ったものは無かったのではないだろうか。
もちろん工業用には、そのための専用機械がたくさんある。
しかし工房スタイルではその設置は決して容易ではない。
上下の位置決めが任意に、かつ高精度に設定でき、その穿孔間隔もかなり高精度に維持できるようだ。
こうした電動工具でダボ打ち機械を代替させることができるというのは、大きな朗報と言って良いだろう。


Doweler2ダボの接合強度がどの程度であるのかは、ホゾを基本とするボクにはあまり経験していない世界なので不明なるも、Lamelloよりかもはるかに高い接合度を持つであろうことは間違いないと考えている。
ホゾ加工の機械設備環境の無いアマチュアの方々には“使える道具”となるだろうね。
またDominoと違ってとても安価に流通しているダボが使えるというのも大きなメリット。
ビットは5、6,8,10、12と揃っているようなので、一般的な家具制作においては十分だろう。
機構的には、Lamello、あるいはDominoという先行する優れたマシーンがあるので、freud社としてもこれを学び、かなり良質な使い勝手の良い機構を搭載してきているものと考えられる。
価格は英国のサイトでは269ユーロとあるが、テクノトゥールズ社では77,000円となっている。
このところの急激なユーロ安、円高基調がほとんど反映されていないようだが、これについてのコメントは避けておこう。
ボクはLamelloもDominoもあるので、今のところ不要と思われるが、道具好きな方には垂涎ものかもしれないね。
以下仕様を記しておこう

Specifications

  • Power: 710W
  • Speed: 18500rpm
  • Angle of holes: 0-90 degrees
  • No. holes drilled: 2
  • Depth of cut: 0-43mm
  • Space between dowels: 32mm
  • Chuck capacity: 8mm
  • Min Drill diameter: 5mm
  • Max Drill diameter: 12mm
  • Weight: 3.6kg
  • Overall length: 355mm
  • Overall height: 135mm

カタログ(PDF:723KB)
*画像は上記カタログから拝借しました(感謝します)
*テクノトゥールズ社さん、情報提供ありがとうございます。
いっぱい売ってくださいね。
テクノトゥールズ株式会社 Webサイト

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 日本ではこの様な電動工具は開発されなかったと思う。欧州にはダボ使用の長
    い歴史がある。ドイツ語のDuebel が語源で、デューベルが訛ってダボ、太枘
    などとも表記される。日本国内ではダボは安価な大量生産の家具やホービーに
    流用されるが、こだわった高級家具への流用は皆無。接合強度、精度に不安を
    感る職人は多い。高級欧州家具に枘継ぎと同様に多くのダボ継ぎが多用される
    のか? 強度や接合精度は一般枘継とあまり違いはない。が、ダボ穴加工は
    今日まで、横軸ボール盤(長穴ドリル盤、"深穴ではなく、横に長い穴、枘穴
    加工する機械")を利用しなければ、精度ある穴加工が難しい。ダボ穴加工の
    治具がホビー用として市販されているが、家具職人が使用する工具ではない。
    ここに Doweler が開発されたのは必然だった。この本職用の電動工具だが、
    欧州家具工房には普及しないと感じる。なぜなら、欧州には既に横軸ボール盤
    が普及しているからだ。DOMINO に関しても同様に、欧州の工房ではあまり使用
    されないと聞く、横軸ボール盤があれば DOMINO は使わない。日本国内では多
    種類のダボ、太さ、長さ、木質の普及は限られている。また、ダボ接合技術の
    訓練が伴わなければならない。また、ダボに対する偏見が解消されれば、国内
    でも利用する職人が現れるだろう。欧州ではなく、アジア、アメリカには必要
    かも。

  • 漢字が表示されない、木偏に内と書く。木工技術で、「ほぞ」と読む。

  • 良さそうですね。
    ラメロとこれ、もしくはドミノとこれを欲しいです(笑)
    もしくは全部。
    でも、そうなると二つずつは欲しくなるから大変なことになりそうです。。。
    Jubaさん
    >高級欧州家具に枘継ぎと同様に多くのダボ継ぎが多用されるのか?
    どのような状況を多用というのか分かりませんが、高級家具という括りならば
    適材適所として製作者が判断して使用するはずでしょうし、使います。合板同士の接着ならば複数を使うと正確な位置決めとして有用(正確な穴加工があってこそ)ですし、無垢材相手ならば、収縮のコントロールにも使えるかもしれません。
    >横軸ボール盤を利用しなければ、精度ある穴加工が難しい。
    堅木を使って上手に作ると、かなり使い勝手のある治具ができますよ。高級家具として限れば、横軸盤よりも高精度に調整できるので便利です。

  • あ、「ほぞ継ぎ」と書かないといけませんでしたね!

  • Jubaさん、Ikuruさん、さっそくのコメントありがとうございます。
    欧米においては単軸、あるいは多軸の横軸ボール盤(ホリゾンタルボーリングマシーン)が広範に活用されている、というイメージが強いですね。
    実はボクも椅子制作には威力発揮と考え、一時は真剣に導入を考えたほどです。
    工業用から、小さなものまで様々なタイプのものがあります。
    日本のホゾ文化との差異を強く感じさせられるものの1つですが、ホゾと併用して使うというのもありなのかなと考えています。
    このマシーンはハンディタイプで2つの穿孔ができるという“画期”は大いに評価されるべきで、Jubaさんの仰る“ダボへの偏見”を解消させてくれるものとなれば良いのではと思いますね。
    このBlogの文字エンコードの制約で、漢字表示ができず申し訳ありません。

  • 既に数年前からHoffmann社から同じような電動工具が発売されていました。
    http://www.hoffmann-usa.com/htm/pds32/
    ただ、このページ、検索すると出てきますが、なぜか現在Hoffmann社の
    HPからはたどり着けません。
    dominoが発売されたことと関係があるのか、今回のdowelerの発売と
    関係があるのか不明です。
    価格もかなり高いようですので既に販売していないのかもしれません。

  • acanthogobiusさん、さすがですね。
    確かに、ほとんど同じような機構を持ったポータブルなダボ打ち機のようです。
    2本の穿孔間隔も同じ32mmということですし……。
    Hoffmann社のラインナップを見ますと、本来はダボテール ルーティング マシーンなどの設置型の機械メーカーのようですね。
    ただどうも販売先へジャンプするとデータが無いなど、acanthogobiusさん仰るように会社の存否そのものも判然としないような。
    価格も本件freud社のものとはかなり差があるようですし……。
    でも似ているなぁ〜

  • オーストラリアのTritonからも発表されています。
    http://www.tritonwoodworking.com/ddowlingmachine.htm
    2009年発売となっていますが、日本ではトリトンは「親会社の諸事情で製造中止」とのアナウンスがあったばかりであり、全くわけが分かりません。

  • おやおや、またまたほとんど同じような機構のものが出ましたね。
    ちょっとしたブームの勢いですな。 forestさん、情報ありがとうございます。
    外観も少しづつ違うようですので、OEMということではなさそうですね。
    ボクはTritonの動向については全く知りませんので、コメントする資格はありませんが、このメーカーのものは国内で入手可能なのでしょうか。

  • 私の友人もトリトンのワークセンターを使用していますし、ハンズやホームセンターなどでも実演していたことが
    ありました。
    現在の事情はforestさんの言われる通りですが本国の
    オーストラリアを始めイギリスなどのサイトを見ても
    製造中止については一言も触れられていません。
    本当の事情は分かりませんね。

  • トリトンの日本総代理店のサイトにいきましたら、確かにそのような案内でしたね。(親会社GMC社の意向云々)
    にもかかわらず、acanthogobiusの仰るようにいくつかの国々においてはサイトも活きている感じ。
    再開される可能性もあるような‥‥無いような‥‥。
    しかしこのメーカーのもの、皆さん結構使われているようなのですね。認識不足でした (^^ゞ

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