工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

Made in Denmark も様々

うちはよその家具の修理というのはほとんどしない。
全くしない、と言いたいところだが、いくつかの例外はある。
今回もその数少ない例外の1つ。
ところでなぜ請けないかと言えば、他所の制作による家具の修理には責任が持てないから、というまことに正当な理由による。
しかし正当な理由からばかりではない。
修理、という社会的需要と地域の家具屋としての社会的貢献も無視できないが、本業も忙しいし、修理ではなかなか正当な報酬は得られない。
つまり修理というものには意外と手間が掛かるものの、これに十分に見合うだけの費用を充てて貰えるわけではない、という少し卑俗な理由もあったりする。
さて今回の例外は地元の知り合いが勤める北欧家具を扱う問屋からのものだったから。
上のような考え方からして断る理由が無かったわけではないが、ま、付き合いもあるし‥‥、難易度が高いわけでもなかったし‥‥、 
そんな訳でセンターテーブルを10台修理。
修理箇所は天板下の棚板の接合不良。
胴付きの多くが切れている。
デンマークのとあるメーカーの制作によるものなのだが、ダボ接合部分の接着不当。理由はどこにあるのか良く分からない。計測して見るもダボ径とせん孔の関係性が悪いわけではない。
さすればボンドが良く効いていない、としか考えられないだろう。
したがって、棚板を一端完全に外し、必要に応じてダボそのものも交換し、木口の胴付き部分(接合部分)をスクレーパーで綺麗にし、あらためてダボ穴にタイトボンドをややはみ出す程度の量で注入し、そして圧締。まずはバークランプでしっかり圧締し、はみ出したボンドを処理し、その後ベルトクランプに替えて数時間圧締。
しかしこの棚板部分を外す、というプロセスがなかなかやっかいだった。
ま、そこは長年の経験と勘でやり終える。
こういう箇所はタイトボンドが活躍するね。
エポキシという考え方もあるが、はみ出し部の処理に難点があり、作業環境という利点においてやはりここはタイトボンドに一歩譲る。
なお修理した以上、責任が発する。「また、切れたょ」と持ち込まれないことを祈りたいが、まず大丈夫だろう。
でもやはり、あまりこうしたことは積極的にやりたくないので、この問屋がある地域で請けてくれそうなところを探しだし、以後、そちらへと移行させていただこうと企んでいる。
こうした修理という事柄に関しては過去少なくない逸話が転がっている。
ボクが制作した○△が破損している、という噂が耳に入ったことがあった。
しかし確認してみると、ボクのデザインではあるが、他の木工所で作成したものであることが判明。
また、ある作家の箱物が壊れたというので、知り合いのギャラリーから修理してくれないかという相談があった。
人の作ったものは責任取れない、と断り続けたものの、最後は請けざるを得なくなり、渋々引き受けたことがあった。
結局苦労して修理させていただいたのだったが、この箱物は明らかに破損してしまうような技術的に未熟な設計、製作によるものだった。
プロとは自分の仕事でこのようなことが起きないように、日々技法の鍛錬を積み、また集中力を切らさないように精励することが何よりも肝要だね。
修理の画像は上げるのはよそう。メーカー、問屋の名誉に関わることだからね。

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