工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

「古き日本の面影」芹沢美術館

芹沢美術館パンフ1

静岡市立芹沢美術館から次期企画展の案内が届いたので紹介しよう。
「古き日本の面影  ─ アイヌと沖縄の染織 ─」

染色家・芹沢けい介が30代のころから親しみ、尊敬してやまなかったアイヌと沖縄の染織。日本の北と南の端で個性的な発達を遂げたこれらの染織は、周辺地域の様々な影響を受けつつも、古い日本の面影を残しているといわれます。今回の展覧会では、芹沢が収集したアイヌの染織資料45点と、沖縄の染織資料49点を一堂に展示します。

ボクにとって北海道旅行の楽しみの1つはアイヌ文化に親しく触れることができることだが、アイヌ民俗資料館に造作なく置かれている染織には目を見張るものが少なくなかった。
何よりもその意匠は独特でヤマト民族の末裔のDNAからは探し出すことのできない独自のものだ。
呪術的な印象の強い意匠を読み解くことは、アイヌ文化に深く分け入ることに繋がっていくことだろう。
一方紅型に代表される沖縄の染織は現代の日本の染織にも大きく影響を与えている。
一時は沖縄は様々な領域でブームになった感がある(今も続いているのかな?)。
しかしそのほとんどは消費される対象としてのそれでしかなかったのではという懸念は強い。
南国の島々。癒しの観光地。しかし沖縄独特の文化と歴史に深く分け入り、ヤマトとの関係における歴史と現在を対象化しようとすることはむしろ忌避され、ヤマトには無い異質の土壌と文化も消費の対象として再生産されていく。
芹沢美術館パンフ2民族固有の伝統工芸に触れることはその民族の生活文化を知り、同時に自国の生活文化にどのように影響を及ぼしているのかを比較対象することを通して、帰属する民族の歴史と現在の由来を知る契機になるだろうし、ひいては自己というものを知ることにも繋がっていくだろう。(注)

どこからきて、どこへいくのか。

芹沢さんは世界各地の民族文化を深く訪ね、工芸品を狩猟、収集したコレクターでもあったが、このアイヌと沖縄の染織は特筆すべきものということなので楽しみだ。
【古き日本の面影  ─ アイヌと沖縄の染織 ─】
会 期:2007年9月15日(土)〜11月25日(日)
休館日:毎週月曜日(9/17、9/24、10/8を除く)、9/18、9/25、10/9
■関連イベント
・講演会「沖縄の紅型と芹沢けい介について」
講師:兒玉絵里子(沖縄国際大学南島文化研究所特別研究員)
日時:9月23日(日・祝)13:30〜15:30
申し込み:往復はがきにて返信宛先、住所、氏名、電話を記入し美術館まで郵送(9/11〆切)
・アイヌ文化体験講座
講師:居壁太・宇佐照代(協力:財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構)
日時:10月21日(日)10〜12時、13:30〜15:30
申し込み:往復はがきにて返信宛先、住所、氏名、電話を記入し美術館まで郵送(10/10〆切)
・学芸員による展示解説
日時:10月13日(土)・11月11日(日)13:30〜15:30
直接美術館へ、満席になり次第受付終了
他、Webサイトチェックを(こちら

*注
日本の近世の国家形成におけるアイヌと沖縄の関係はそれぞれその手法も歴史的経緯も異なるが、支配と収奪、領有の歴史であったことでは共通する。これは現在においても諸関係において色濃く残存していて、工芸という分野からアプローチするにあたっても、それらの背景に刻み込まれた史実と生活文化に参照を求めることも重要なことだろう。

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  • 益子では濱田庄司展をやってました。
    観てませんが・・・
    んが、ハービー・ヤングさんのマグカップを買いました。
    artisanさんも作品をお持ちでしたよね。

  • 濱田庄司展よりハービー・ヤングさんの器を選んだユマニテさん、コメントありがとうございます。
    先月穂高のブラザーと食事をしてきたところですが、お兄さんはお元気でしたか?
    いわゆる日本びいきの西洋人にありがちな受けねらいの造形美ではなく、とてもしっかりした陶芸をする方とお見受けしています(その辺りは兄弟似ていますがね)。
    次は大物をゲットしてやってください。

  • 追記:せっかくですのでハービーさんの花器を1つご紹介します(以前、本Blogで紹介した画像)。
    http://blog.artisan.boy.jp/wp-content/uploads/70128.jpg    

  • いつも行くギャラリーで購入したので
    ご本人にはお会いしてないんですよ。
    11月にご自宅の庭を開放して個展をされるみたいですね。
    行ってみようと思います。
    ↑の花器ですがカラメルとミルクが混じり合う瞬間を閉じ込めた雰囲気がそそりますね。その境に見えるエメラルドグリーンも目を引きます。

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