工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

松ヤニとの格闘 / freud社ブレード

このところアカマツでの家具制作が続き、機械も刃物もヤニだらけで往生こいてます(これって方言だろうね)。
最悪なのはプレナーだね。定盤にヤニが付くのは仕方がない。硬質プラスティックのスクレーパー様のものでこすげ取る(これも方言?)。
さらに大変なのは下部ローラーに付着したヤニ。
ここにヤニが付着すると、おが屑と一体化し、突起物様の障害物となり、被加工材の板面に自動送材過程で傷が付いてしまう。
告白すれば、最初は気づかなかった。
削り終えた材料に凹み傷があちこちに (?_?)
はて、?と暫し首を傾げプレナー機構部をのぞき込む。
下部ローラー、600mmの幅の特定箇所に付着物がびっちりと。
特定箇所というのは、ヤニの障害による送りの不具合を覚悟して、一定のところで集中して使用したことによる。
いや、これがなかなか取れない。高速で回転させながら、アセトンで濡らしたウエスでローラーを湿らせ、硬質プラスティックのスクレーパーで取ろうとするが、とてもやっかいな代物だ。
プレナーという機械は機構が複雑であるので、今次アカマツ加工を終えた後に、刃を取り替えながら(超硬刃であるため、めったに取り替えないが)、恐らくは裏刃を中心に、送材ローラー(ガンギローラー)など、その他の機構も含めしっかりとヤニ付着を取り除く洗浄をしたいと考えているが、とりあえずは送材での不具合は起きていないので、この下部ローラー2本分を処理した。
freudブレード
ところで、丸鋸の刃はこんなもの ↑ を使うとヤニ対策になるね。
テフロンでコーティングされたブレードだ。
イタリアの「freud」社のもの。
80チップ、50チップ、24チップと3種用意しているが、これはテフロンコートというだけではなく、キックバック対策が施されたブレード形状となっていたり、ブレードの厚みは3mmと比較的厚い。軽いフィーリングで良く切れるし、それでいて回転音もとても静粛性が高い。
以前、友人のT氏の斡旋で購入したものだが、大事に使っているよ。
カネフサを含め、日本の木工刃物の品質も高いと思われるが、しかしこのような優れたものを使うと、その設計思想に木工産業の歴史と伝統の差異というものを感じさせられてしまうことも少なくない。
補記(07/09/14)
なお、このFreudの丸鋸刃のシャフト穴径はほとんど全て5/8″となっています。
一般に日本の丸鋸盤のシャフトは1″ですので、Freudの丸鋸刃を用いるには径の拡大が必要となります。(機械屋での加工は可能です)
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  • 初めまして。松本と申します。今は単なるサラリーマンで韓国で単身赴任していますが、その内帰国し好きな木工をやる予定です。
    一つお伺いしたいのですが、工房の設備を見ましたが、上記Freudが取り付けられる機械はなかったように思えますが、実際どの機械に取り付けて使用さなっているのでしょうか?
    というのも、Freudの切れ味は評判で私も使ってみたいのですが、残念ながら私のテーブルソーは10"用で、穴シャフト径は1"なんです。Freudのチップソーは10"以下は、穴径が5/8"のはずで、私のテーブルソーに取り付けできないのです。逆ならスペーサで可能ですが、チップソーの穴を大きくすることは不可能なのであきらめています。
    何か方法がおありなら教えていただきたいと、コメントさせてもらいました。

  • 松本さん、こんにちは。
    良いコメントをいただいたことを感謝します。
    あなたの仰るとおりです。
    実はすっかり失念していました。本稿にあるように友人の斡旋で購入したのでしたが、シャフト径は確かに5/8"でしたね。
    太ければ(ドイツなどに見られる30φのように)スリーブを介せばそのまま使うことが出来ますが、逆は無理です。
    でも旋盤加工すればできるだろうと言うことで、機械屋に加工してもらっていたのでした。(画像をご覧頂ければお判りのように、穴がプリント文字と重なっているところにユーザー側での加工跡が読み取れます。忘れましたが、本体価格より加工賃の方が高かったかも?)
    機械屋の加工方法は詳細に確認してはいませんが、マグネットチャック対応の旋盤で芯出しをしておいて、所定の径に穿孔するということだろうと推測します。
    そのような訳ですので、エントリ記事がこのような補足情報を欠いたまま上げたことについてはお詫びし記事を補足しました。
    松本さん、ご指摘感謝します。今後も厳しいチェック、よろしくお願いします。
    なお国内においては「木村刃物」がテフロンコートした丸鋸刃を販売しているようです。

  • 早速のRESありがとうございました。本当ですね、写真を見ると印刷部に割り込んでいますね。ぎえーっ、です。チップソーの穴を大きくすることは芯出しの関係で不可能だと思っていましたが、それができるんですね。良い情報ありがとうございました。私も加工できるところを見つけようと思います。
    Freudの切れ味がテフロンコートでのみの原因かどうかも判っていませんが、木村刃物も試してみたいと思います。

  •  友人がfreudのチップソーを持っておりまして、以前、借用して使ったことがあります。その時は普通に昇降盤に付けて使っていたので、おそらく最初から1"の穴が開いていたのではと思います、経緯はわかりませんが…。
     それはともかく。何故、国内メーカーはこのような安全対策の取られた製品を販売しないのでしょうか?使ってみた感覚では、対策を取ることによって作業性が落ちるようなことは無いように思いました。artisanさんは、「木工産業の歴史と伝統の差異」と表現されていますが、私にはそれだけでは納得できないのです。手押し鉋盤などの安全装置もそうですが、国内の技術で同等、あるいはそれ以上のものが簡単にできそうに思うのですが、そういったものが出てこない背景には何があるのでしょうか?採算が合わない?コストの問題?そもそもオートメーションが念頭にあって人が作業することが念頭にない?
     本当の理由を知りたいとずっと思っているのですが、誰からもなかなか納得できる理由を聞けずにいます。怪我をした人の話を聞く度に、やるせない気持ちになります。

  • 木工舎さん、コメントありがとうございます。
    丸鋸(チップソー)デザイン設計における「アンチキックバック」についてのお話しですね。
    日本のメーカーがこの件に関してどのような設計理念を持っているのかを確認したことがありませんので、ボクには適切なコメントの資格はありません。
    そうした留保を付けながらも、仰るように、あるいは同様に本稿でも記述しているように、そのような対策が施されたものを見たことはありませんね。
    私見では、日本の木工産業ではそうした安全対策が施された刃物への需要が少ないということなのでしょう。
    あるいはこれも確認しているわけではありませんが、法的規制の違いがあるのかもしれません。
    需要が少ないという理由としては、従事する職人の安全への意識が低い、ということが背景にあるのかもしれません。
    つまりハードウェアに安全対策を求める前に、職人の腕と経験にその責を求めるという風潮が安全対策ツールの普及を妨げているということがあるのかもしれません。
    日本はアジアでいち早く近代産業を導入したものの、人間と機械との親和性という概念を設計思想に反映させることにはあまり関心が行き届かなかったということもあるでしょう。
    日本の近代化における本質的な問題(技法を導入するのは得意であっても、その果実だけでは本当の意味で根付かせるに十分なバックグラウンドを持たない、といったような)があるとも言えるでしょう。
    話が拡散してしまいスミマセン。
    機会があったらメーカーにも確認してみましょう。

  •  丁寧なお返事有り難うございます。この件に関しては以前から他の方からも、「こんな優れた物があるのに、何故か日本では取り上げられていない、」旨のお話しを伺ったことがあり、なぜ日本のメーカーが導入しないのか常々疑問に思っていました。メーカーの方が海外にそういった安全に配慮された製品があることを知らない訳がないのではと思うからです。
     「法的規制の違い」というお話しは、なるほどそう言うこともあるのかも知れないと気付かされました。しかし、より安全な方策があるのなら、なぜ導入が検討されないのかという点にはやはり疑問が残ります。所詮、国内においては斜陽産業?である木工分野では、そう言ったことを検討する余裕、というか余地がないと言うことなのかも知れませんが。
     私も機械屋やメーカーの方と合う機会のあるときに話を聞いてみようと思います。有り難うございました。

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