工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

残念なミニサンダー購入(RYOBI S-555M)

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はじめに

サンディングは木工作業では欠かせない工程です。
加工、仕上げ工程の最後の段階、つまり塗装を施す前段階である〈素地調整〉は必須の工程で、一般にはサンディングマシーンにより行われます。

広い板面をサンディングする場合にはワイドベルトサンダーをはじめ、様々な機械設備がこれに対応するでしょう。

うちの場合、非力なものではありますが、三点ベルトサンダーで行います。

広い板面や、ベルトサンダーの定盤に適切に置かれる形状のものであればこれらで良いのですが、複雑な形状の板面などで、被研磨面が水平に維持できないような場合には、ポータブルのサンダーで補助的に行わなければなりません。

こうした領域で活躍してくれるのがミニサンダーという小型のサンダーですね。

通常うちでは2台のミニサンダ−を併用します。
番手を2種必要とするからです。

#240と#320、あるいは#180と#320といったように(仕上げ段階において、きちんと鉋掛けされていることが前提です)。
いちいちサンドペーパーの番手を取り替えて行うというのも面倒なことですから。

今回、これまで複数台使ってきたミニサンダーのうち、30年使い込んできたRYOBIのものを更新したのですが、ここで機種選択を誤りました。

マシン仕様の確認の不十分さがもたらしたもので、ひとえに私自身の迂闊さによるものです。

ただ、自らの失敗談をあえてこうした記事として取り上る無粋さというものは、多少はミニサンダーへの認識を広く共有する意味合いもあるだろうと考えてのものでありご理解ください。

RYOBI S-555M

ミニサンダー 各種

ミニサンダー 各種


購入したのは画像右の RYOBI〈S-555M〉という機種。

〈S-555M〉
パット寸法:75×105mm
ペーパー固定:クランプ及び マジック方式
回転数:10,000min-1
消費電力:100W
質量:0.76kg
サイズ:130L×74w×119h

以前は画像左端の〈S-500〉という機種を長年使ってきました。
この〈S-500〉ですが、ミニサンダーの稼働率が高い木工塗装の現場で使われていることは良く知られており、それだけに信頼性の高いものでした。
研磨力、コンパクトさ、動態バランス、これらがミニサンダーとして要求される仕様を一通り満たしていたからでしょう。

ただ、現在の標準的な仕様であるところの〈集塵機能〉がありません。

その後、幾度かの更新を経、〈S-555M〉が市場投入されているわけです。

〈S-555M〉は〈S-500〉の後継機種という位置づけになろうかと思います。

研磨力の1つの指標である出力ですが、180wから100wへと大きくパワーダウンしているものの、使用感としてはさほどの非力さを感じさせるほどのものではありません。

「押さえつけても回転数が落ちることはありません」などと、その性能を誇示することを見掛けますが、そもそも品質の高い木工を望むのであれば、サンダーを「押さえつけ」て使ってはいけません。
平滑に仕上げているであろう板面精度を押さえつけられることで局所的に著しく損ねてしまうからですね。
そのマシンの定常の回転数を維持しながら常に一定の圧力で作業することが重要です。

この100wの出力は、補助的な素地調整に用いるミニサンダーとしては十分なものであることが確認できます。

コンパクトさは以前と変わらず、片手で軽快に操作するに最適なサイズです。
動態バランスですが、旧型と較べても重心が低くなり、操作性も向上、安定的な動作が確認できます。

集塵機構

さて、問題の集塵機構。
これが中途半端でいけません。

161208c日本の電動工具メーカーのダメさ加減が示されてしまっていますね。

私はネット上の商品画像で安易に集塵用のパックが付いているものとばかり判断してしまっていたわけです。
さすがRYOBIさん、〈S-500〉の後継機種として、現代のサンダーに求められる必須の機構である集塵機構を搭載してきたなとほくそ笑んだわけですよ。

この機種の購入と合わせ、サンディングペーパーも4つ穴あきの#240、#320の2種のものを別途購入(100枚Pack)してしまいましたので、後には引けません(笑)

ところがこの後ろに付き出ている黒いものは集塵パックなどではなく、ただのアダプタ。(写真を良く見ればそんなことはただちに判るはず 汗;)

であれば、ここに別途、集塵パックを取り付ければ解決するだろうと思いますが、残念ながらその判断も間違っています。
そのままでは集塵などしてくれません。

つまり、強制的に外部から吸引してやらないと集塵しないというおとなしすぎる奴なのです。
このアダプタは集塵機(掃除機)に繋がってはじめて用を為すものです。

市場にはこうした中途半端な集塵システムではなく、駆動部に集塵のためのファンを組み込み、研ぎ出したダストを吸引する機構が搭載されたものは少なくありません。(画像の[BOSCH]、[RUPES]はそうしたタイプ)

集塵のための1枚のファン、たったそれだけの事なのに集塵のルートを確保しただけに留まるという設計判断がどこから来るのかと言えば、コストカットでしょうか。
悲しい話しです。

甲板などを仕上げるための大きなサイズのポータブルサンダーであれば、常時、集塵機(掃除機)に繋いでも良いでしょうが、こんなたなごころに納まるほどのミニサンダーに、いちいち取り回しを阻害してしまう集塵機ホースを繋げ、というのは、いかにも愚鈍な話しでしかありません。

操作性、研磨力、低振動、コンパクトさに優位性があるだけに、残念な設計思想です。

他機種を概観

ところで、写真の黒いボデーの奴ですが、これは大変優れたミニサンダーです。
RUPES Mini Orbital Sander LE21A(イタリア製)

〈LE-21A〉
パット寸法:80×130mm
ペーパー固定:マジック方式
回転数:13,000min
消費電力:200W
質量:1.3kg

研削力は強く、動態バランスがとても良く、またその静粛性には驚かされます。
集塵もパッシブのものでありながら、良く集塵してくれます。

ミニサンダーはこれに尽きる、と言っても良いほどの品質です。

ただ、国内では国産品と較べれば高価です。(私は数年前、国内代理店のセールの際、10,000円で購入)
このイタリアのRUPESというメーカーは戦後間もなく創業したポータブル集塵機専門のメーカーです。
欧米の車両塗装現場からの御用達といったところのようです。

因みに、BOSCHは研削力はあるものの、期待に反し動態バランスがあまり良くありません。
静粛性にも著しく欠けます。

パッドサイズは標準的なサイズのサンドペーパー(230×280)の1/4。
つまり、115×105。ミニサンダーとしては大きすぎ、少し半端な大きさですね。
ただ集塵機構は大変優れています。

総括的に

イタリア製のRUPESは優れたマシンですので、大いに推奨します。
ただ高価ですので、国産のRYOBIにがんばってもらい、集塵機能のさらなる高度化で、パック集塵機能の搭載を望みたいものです。

なお、国内電動工具メーカーの雄、マキタにも多種多様なサンダーがあり、ミニサンダーのクラスもあります。
ただミニサンダーとしてはBOSCHと同じく、パッドサイズが大き過ぎですね(112×102)
片手で軽快に操作するには不向きです。

プロの現場というものは、高機能であるほかに、取り回し、使い勝手が良くないと導入をためらってしまうのです。

hr

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