コードレス サンダーの快適さ(GEX10.8V-125H)
はじめに
新たに市場投入された電動工具には魅了されること屡々です。
しかしいざこれを購入する場合、その特性、機能、性能、仕様などを子細に検討し、購入するに値するものなのかの判断を下していくことになりますが、これは経営資源に乏しい私のような個人工房では決して容易なものではありません。
実機を手に取り試用できる環境であればともかくも、オンラインでの確認に留まり、しかもインプレッションなどが上げられる前段階でのリリースされて間もない機種においては、隔靴掻痒なところも残り、迷います。
今回紹介するこのバッテリー仕様の小型サンダーの場合、疑心暗鬼なまま購入手続きに入るという、普段は慎重に過ぎる私にしてはやや無謀な飛躍だったかもしれません。
その無謀さを突破するだけの魅力があったからこそのものでしたが、結果、いくつかの懸念は杞憂に終わり、選択は間違っておらず、その魅力に取り憑かれてしまったというのがこの機種です。
むしろ懸念される最大のポイントだった、非力と認識してきた10.8V バッテリー工具の威力をまざまざと見せつけられるものでした。
以下、少し詳しく見ていきますが、大型のサンディングマシーンに掛けることのできない部位への素地調整には、今後大いに活躍してくれるに違いありません。
10.8Vコードレス ランダムアクションサンダー
前述したとおり、わずか10.8Vの起電力で、果たしてプロの現場で実用に耐え得るパワーを引き出すことができるものなのか、しょせんアマチュア向けの非力でオモチャに近いものでしかないのではないか。
ブルーボディー(BOSCH電動工具の場合、アマチュア向けとプロ向けを色識別させている)で機種名に〈PROFESSIONAL〉と銘打っているものの、マジなの?。
ところが 、これまで使い続けてきたワイヤードの GEX-125AC を死蔵させても良いのでは、という程の性能の高さと、コードレスならではの利便性を見せつけられたのでした。
少し感覚的に表現しますと、駆動させた状態で手で強く加工材に押さえつけた場合、非力であれば回転は衰えを見せるものですが、それも無いのです。
10.8V仕様とはいえ、強力なブラシレスモーターを備え、プロユースとして十分に現場の要請に応えてくれ、ワイヤードのものと較べ決して大きな遜色がないマシンと感じられたのです。
この機種を、同じ駆体で18V仕様のものと、ワイヤード(100V電源)のものとの仕様上の比較表を作ってみました。参照の程。
(横幅が狭いため一覧性に欠けますが、横スクロールできます。)
あらためて…〈ランダムオービタルサンダー〉とは
ポータブルサンダーは現在では〈ランダムオービタルサンダー〉が標準になってきています。
これは単純な円軌道とは異なり、サンディングディスクを回転させつつ、同時に偏芯駆動を与え、楕円軌道を加えることにより、ランダムな軌道が生成されるというものです。
研磨材のある部位は加工材に2度と同じ位置に回転移動しない軌道を持つことから、研磨による渦巻き状の痕跡が被研磨材に残りにくく、木材特有の細胞の配列、つまり木理、木目に左右されないという特性を持ち、またサンドペーパーへの偏ったダストの付着も少なくなります。
ダストの付着ということでは、本体にはパッシブながらも吸塵のためのプロペラを備え、ベースにはそのための穴が開孔してあり、サンドペーパーもこれに合わせた穴あきのものが標準になっています。
〈ランダムオービタルサンダー〉として、このサンダーの軌道、軌跡を確認しますと、小型ながらGEX-125ACと遜色が無いどころか、それを上回る高い精細さを誇ります。
因みに、このオービタルサンダーの機構を最初に開発したのは1951年、ドイツのFesto(現在のフェスツールFestool)社。
ランダムアクションサンダーは1988年、BOSCH社により開発されたとされていますが(BOSCH 沿革)、ランダムオービタルサンダーの開発は1968年、RUPES社によるものとされています(RUPES社 沿革)。
RUPES社ですが、このBlogでも数回紹介(こちらの記事)してきたサンダーのトップブランドですね。
ところで、この〈ランダムアクションサンダ〉と、〈ランダムオービタルサンダー〉の違いですが、これはメーカーによる名称の違いであり、機構において大きな違いは無いと思われます。
いずれも回転運動に偏芯駆動を加えているものを総称すると考えて良いのでは無いでしょうか。
面白いことに、同機種はBOSCH USA での名称は〈12V Max Brushless 5 In. Random Orbit Sande〉、〈ランダムオービタルサンダー〉と呼称されているのです。(こちら)
つまり、〈ランダムアクションサンダー〉はBOSCH Japan 固有の呼称だということですかね。
人間工学に基づいたパームグリップとコンパクトな形状
また人間工学的な側面から視た場合、より進化している機種であると思われました。
画像をご覧いただければ理解いただけるでしょうが、電動駆動とは異なりモーターハウジングの不要なエアツールのサンダーのように、マシン本体の重心がとても低く、またとてもコンパクトな10.8V のバッテリーである事で重心バランスが良く、グリップ形状も手に馴染み、片手操作でも安定したサンディング運行が確保される意匠になっていて、これは作業者の疲労度を軽減させることに繫がりますね。
各メーカーは電動工具の多くをコードレス化している途上で、百花繚乱の時代相ではありますが、このサンディングマシンを類種と見較べて見たとき、他社の機種では既存のワイヤードのマシンにそのままバッテリー部位をくっつけた、といったものがほとんどのようです。
これは電源コードから解放され、自由に取り扱えるという利便性を獲得したものの、バッテリー部位の付加による美しく無い無粋な駆体と、重心バランスなど無関心で作業の疲労や、不快な作業を強いるマシンに変貌させられてしまうという傾向がありがちなものです。
しかしこの機種はそうしたありがちな設計理念は排しているようです。
バッテリー工具の現場における活用場面を考え抜いた上での合理思想からまったく新たな設計を施し、他メーカーのコピーなどではなく、BOSCH独自の設計思想を投下した新機種を世に問うという姿勢を、あらためてこの機種からも垣間見ることができます。
以前、このBlogでも取り上げた、10.8Vコードレストリマーでもそうでしたね。
ベースと重心の中心からスピンドル位置を大きくずらし、トリミング作業を安定化させるなどといった他メーカーの類種にはない新機軸には驚かされるものがありましたが、他社が思いつかないだろうことを実機として10.8Vバッテリー搭載でコンシューマー市場に投下していく、この姿勢は見事です。
吸塵システム
他機種では本体の後部に吸塵口を設けることが一般的ですが、この機種は本体右側に排出口を設け、ここにマイクロフィルター機能を持つ、化繊の吸塵バックが用意されています。
また排出口とのフィッティングは吸塵バックが任意な位置にホールドできる機構を持つ構造になっています。
また吸塵の能力ですが、8穴のサンディングペーパーを正しく吸着させた状態であれば、サンディング作業過程では、環境へのダスト排出はほとんど無視できるほどの能力を備えています。
なお、以前、別のサンダーで紹介した、BOSCHのダストコンテナがダイレクトに取り付きましたので、標準搭載の化繊の吸塵バックに換え、もっぱらこれを使っていますが、2個発注しておけば良かったのに、と反省しきりです。
総合評価
以下、BOSCH 公式サイトから引用。
製品のハイライト
GEX 10.8V-125 Professional 吸じんランダムアクションサンダーは、移動が多いプロフェッショナル向けのコンパクトなソリューションです。部材に近い最適なバランス、エルゴノミクスデザインのパームレストとグリップにより、工具を快適に扱えます。10.8V 吸じんランダムアクションサンダーはコンパクトでスリムなデザインを採用しているため、狭いコーナーでも問題なく作業できます。また、直感的な操作コンセプトを採用し、カンタンに操作できます。
機器と用途
コードレスタイプのGEX 10.8V-125 Professionalは、基本的なサンディング、中間作業のサンディング、ラッカー除去や表面仕上げに適しています。木材、ベニヤ、ラッカー、フィラー、さらに鉱物やアクリルの表面にも使用できます。 プロ用10.8VシステムとボッシュのClick & Clean吸じんシステムに対応しています。
追加情報
GEX 10.8V-125 Professionalは、ペーパーバッグ、バッテリー残量インジケーター、ブラシレスモーター、サンディングシートを固定するためのマジック式システムを備えた125mmのサンディングパットを装備し、速度調整機能も搭載しています。
なお、この10.8V ではパワー不足とされた場合、18Vの機種もあります。
GEX 18V-125H
コンパクトで10.8Vという仕様でありながらも、実用性の高いこの機種は ランダムアクションサンダーの新機軸として大いに評価したいと思います。
因みにamazon USA でのこの機種のカスタマーによる評価ですが、5starが81%と大変高いポイントを獲得していることからも、この私個人の評価は、決して偏倚したものではなく、このAmazon評価に準ずる、ごく平均的なものなのでしょう。(こちら)