ルーターマシンの汎用性(Case Study)
画像はペザントチェアの背板、ホゾの胴付きを決める工程の図。
ペザントチェアという椅子がいつ頃から作られ始めたのかなどの詳細は分からないが、欧州各国にそのルーツを探すことができるようだ。
ドイツ南部、ピネレーに抱かれた山間地などとね。
ペザントチェアという名称はもちろん後付けで、椅子のデザイン、構成における1つの様式を指しているに過ぎない。
座板の後側にはアーカンサス模様などが彫り込まれ、あるいは透かし彫りされた背板が貫通し、底からは丸ホゾを持つロクロ整形の4本の脚が突き刺さるという、とてもシンプルで簡明なデザイン・構成の椅子ということができる。
ペザントと呼称されるように、この椅子はさほど本格的な木工機械に依らずしても制作することができる。
手鋸、鉋、糸鋸、ロクロ、手動のドリル、といったように単純な道具だけでも決して不可能ではない。つまり農閑期の農夫の仕事というわけだ。
ペザントという語彙の意味合いは、もっと深いところにあるはずだが‥‥。
都会的な洗練されたものでは無いが、プリミティブでかつ質実な精神を持ったもの、とでも意訳してみようか。
背板に装飾性の強い模様を刻むことで、その制作者の美的センスを反映させるということになろうか、様々なデザインのものを観ることができ、楽しいものである。
個人的なことになるが、ボクが家具制作に興味を持ち始めた頃に出会ったのが「林二郎」さんのペザントチェアだった。
当時集中的に通い詰めた広尾の都立中央図書館。
アートの書架から家具に関連する様々な書を手に取り眺めたり、ノートに取っていたのだったが、タイトルは失念してしまったが、かなり豪華な装丁による林二郎の作品集が目にとまった。
既にその名前と作風はご子息、林遊卯氏による著書から知っていたが、その網羅的な作品集からは日本近代における洋家具の揺籃期を彷彿とさせるようで楽しいものだった。
彼が若かりし頃、銀座の百貨店での個展でこのペザント様式の家具がとても大きな反響を呼び、日本に林二郎ありと画される時代があったことなどは、今やこのBlog読者でも知る人は少ないのかも知れない
その後本格的に家具制作へと邁進していく道筋は、その書からは遠ざかっていく過程ではあったのだが。
7、8年後だったか、あることをきっかけに習作としてこのペザントチェアを制作することになったのだったが、試しに展示会に出品すると意外にも人気を博し、その後もぽつぽつと売れているのだった。
先日の松坂屋個展の会場の隅っこに、この小さな椅子を1つだけ置いていたのだが、これを見初めた来客の一人から4脚セットの注文を受け、制作しているところ。
家具職人にとってはこの厳しい梅雨の時季、キャビネットなどは手が付けられないが、椅子ならば何とかなろう、というわけである。
このペザントチェアをセットで受注するというのは実は初めて。
別荘の三和土の待合におくコーヒーテーブルなのだそうだ。

さて、前振りはこの辺りにして、背板の胴付き。

なおこの背板は板座に対して13度の傾斜を持つ。
いくつかの方法があると考えられるが、最も有効なのが、Top画像のようにルーターマシンによる切削ではないだろうか。
あらためてルーターマシン(ヘビーデューティーのピンルーター)の汎用性について考えて見たい。
定盤を13度傾斜させ、ストレートビットで必要な距離を走らせるだけで全て終わる。
治具も何も不要。
両端末の胴付きはビットの1/2径だけ未切削状態で残存するが、わずかに数mmであれば手ノミで一突きでさらうことができるだろう。
無論、両側の肩、および見付け側の6mmほどの肩などは事前に昇降盤で取っておく。
ルーターマシンではこの肩の位置にビットを合わせ切削すれば良い。
他の機械への代替はどうだろう。
▽ 昇降盤:その丸鋸の刃物径からしてほとんど不可能。
▽ 帯ノコ:定盤を傾斜して高精度に切削、しかしいかに高精度といっても、自ずから限界がある
▽ ハンドルーター:傾斜角のジグを介し、ピンルーターと同等の結果は得られる
しかし、作業環境、安全性から較べると、劣位に甘んじる
因みに、この椅子制作では、この胴付き作業工程以外、
□ 背板の成形加工
□ 座板の成形加工
□ 座板の座刳り
□ 座板の吸付加工
など、様々な工程で、このルーターマシンが活用される。
因みに背板の成形加工だが、透かし彫りの細かい部位は、Scroll saw(糸鋸)で行うが、ビット径より大きな部位は、同じくルーターマシンで倣い切削することで、高精度の仕上がりが得られる。
Topと2番目の材料の色調が異なるが、クルミとミズナラの違い。

acanthogobius
2010-6-30(水) 14:33
20年くらい前、オークヴィレッジのセミナーに参加して
2回目に作ったのがペザントチェアーでした。
作った、とはいっても、ほとんどできあがったキットの
座と背を少し成形しただけですが。
当時、背と座の接合部分を見て、どうやって作るのか
不思議に思いました。
オークヴィレッジが外注に出すのかどうかは分かりませんが
機械加工されていたのでしょう。
今でも作れと言われても、確かに角度の付いた加工は
難しそうです。
その椅子は今でも工房の隅に置いてあります。
artisan
2010-6-30(水) 20:49
acanthogobiusさんはオークヴィレッジセミナーからの木工参入でしたね。
20年ということはキャリアはさほど私と違いはないということですね。
オークビレッジがそのような椅子を作っていたのは、何となく記憶にあります。
ウサギの背板だったりね。
>オークヴィレッジが外注に出すのかどうか
かつて静岡でも下請けを探していましたね。
今では私塾OBがたくさんいるようですので万全でしょう。
acanthogobiusさんは今、難しい椅子にチャレンジしていらっしゃるので、この種の椅子では飽き足らないでしょう。ガンバッテ完成させてくださいね。
平日大工ママ
2010-7-1(木) 00:15
はじめまして。
ボッシュのトリマーが不具合なのか??調べたくて
ネット検索していて辿りつきました。
木工素人なのに、あこがれのトリマーを購入して
使ってみたものの??
赤いボタンを押さえたら
簡単にロックされて(固定され)ビット交換ができると書いてありますが、
ぐるぐる回ってしまいます。
なのでなかなかナットでしめれません。
ある一定の個所でロックできたりするのですが
私が女性のため弱力なためか?
左親指で赤ボタンを押して右手でスパナを持って
まわそうとしてもくるくる・・・・
両手の指で力づくで押さないとカチッとロックされず
そのまま力を精いっぱい入れたままでスパナを回さないと
ビットが固定されません。
うまく言えませんが
これが当たり前なのでしょうか?
先日近くのホームセンターで試しに赤いボタンを押したら
その場でカチッとロックされました。
我が家のように くるくる半周ほど回るようなことは
なく。。。
我が家のトリマーが不具合があるのか気になりました。
文だけでは伝えにくくて すみません。
何かアドバイスいただければと思いコメントしました。
平日木工ママ
2010-7-1(木) 00:21
追記
コレットナット?がおかしいのか?と
くるくる回すとはずれちゃったのですが
その中には銀色の歯のようなもの
これを調節してビットをしめるのでしょうが・・・
が、入ってありましたが
それが、ナットが外れた瞬間
一緒にポロっと外れて落ちて・・・
4個に分かれていますが・・・
これで正しいですか?
あなたさまの
以前のpmr500の記事にコレットナットの交換?とかの所に写真が載っていましたが?
綺麗にナットの内側に収まった状態だったので。
私は、外れた その銀色の歯をまた内側に戻すのに
少々苦労しました・・・・
これが当たり前なのでしょうか????(^^;
artisan
2010-7-1(木) 08:40
平日大工ママさん、良いハンドルネームを付けましたね (^^)
お問い合わせのBOSCHトリマですが「PMR 500」のことのようです。
(このキーワードでググるとこのBlogの紹介記事がTopランクでヒットするようです → みなさまの日頃からのアクセス数によるもので、感謝 !!)
さて、お問い合わせの内容は2つです。
1,【スピンドルロック】
スピンドルの1箇所にロックのための刻みがあり、ここに赤いボタンと連動したピンが引っ掛かりロックされるという、原始的でシンプルな構造となっています。
これが上手くいかないというのはママさんがご指摘のように、単に赤いロックボタンの押さえる力が弱いという事だろうと考えられます。
成人の方であれば特段に過剰な力を与えなくともロックされる程度のもののはずですが、ややきつすぎると感じるのも理解できます。
この調整はスプリングを弱いものに代えることで解決できますが、ボデーを開口しなければアクセスできませんので、素人の方にはお薦めできる解決法ではありませんね。
どうしても、ということでしたら、道具屋さんに依頼してみてください。
2,【コレットナット】
>くるくる回すとはずれちゃった
回せば外れますね。
>銀色の歯のようなもの
それがコレットそのものです。
筒状のものに割り込みが入り、これを包むナットを締め付けることで、ビットを堅く固定するという構造です。
通常は「止め輪」のようなもので外れない構造になっていると考えられますが、外そうと思えば外れるという程度のものかも知れません。
なお、コレットは6mm用、1/4インチ用と2種のものがメーカーから提供されています。
必要と考えれば購入店舗から発注できます。
3,【余談】
失礼ながら、ママさんのような一般の方のトリマ選択において、この機種を入手されるという電動工具市場の現況には評価すべきものがあると思いますね。
BOSCHの営業努力(営業展開力、価格設定力)、ユーザーの支持によるものでしょう。
国内のトリマ市場では最も良い選択であることは国内市場投入後4年経過するも、変わらないようです。
http://blog.koubou-yuh.com/?eid=399804
平日大工ママ
2010-7-1(木) 15:57
ハンドルネームで笑っていただけ?光栄です(^^
早速のお返事有難うございます、
では、異常=不良なわけではないですね。。。
私の力不足・・・・と&
バネが強力なのかもしれませんね。
最初、うまく締めたつもりが甘かったようで
うまく削れず、
今後、十分気をつけないとと思いました。
危ないですよね。
コレットそのものについて
>通常は「止め輪」のようなもので外れない構造になっていると考えられますが
の止め輪のようなものが?????どれかわかりませんが。
ナットの内側に凸の部分があるみたいで?
そこに引っかかるようになっています。
写真が載せれると説明しやすいのですが
すみません。
まあ、しっかりビットを装着し。
せっかくの工具なので平日大工に活躍させたいと
思っています。(汗)
<余談>
子供が手が離れてきて空いている平日の時間に
大好きな工作・・・がてら、DIYというか木工というか日曜大工というか・・・を楽しんでいます。
せっせと図書館でドゥーパ別冊のような本を借りて読んだり、ネットブログみたり、
作業台のようなものや、洗面所の棚、ポストの支柱?のようなもの・・など
まだまだ始めたばかりです。
トリマーもいろんな方の比較や感想などをネット検索して
ボッシュにしました。
価格も1万円前後でしたが、手が出せない高額でもなかったので臨時収入のあった旦那様に買ってもらったのです。
感謝感謝。
ただ、今はまだのこぎりで 1×4や2×4材を
切って組み立てる程度のレベルです。
工房悠悠さまとはレベルが格段に違いますが(^^;
また、何かありましたらご相談するかもしれません。
宜しくお願いします。
artisan
2010-7-1(木) 22:46
トリマ使いの平日大工ママさん、
あらためてPMR500、見ましたところ、確かに仰る通り「止め輪」様のものはなかったですね。失礼しました。
スピンドルロックですが、バネの強さももちろんですが、意外とロックの位置を探し出すのが簡単ではない、ということもありそうですね。
スピンドルの360°のどこかに潜んでいるわけですが、やや強い力でボタンを押しつつ、コレットナットを回転させながらボタンの引っかかる位置を探し出す、ということになります。
経験を踏むことで身体の感覚で学習していけると思いますよ。
日曜大工ならず平日大工ママさんでもトリマ1台があれば、いろいろな作業を助けてくれるはずです。
トリマは間違った使用法をしなければ怪我のリスクも少ないと思いますので大いに楽しんでください。
>また、何かありましたらご相談
どうぞ遠慮無く。
できれば、対象とする記事へのコメントであれば、他の読者にもより分かりやすいと思いますので、そのように。