工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

成形加工における治具づくり、1つの考え方(その1)

【 jig → 治具 】
治具の話しであるが、この「治具」という単語は〈jig〉からの当て字であることは良く知られているが、いかにも日本の言語文化の特徴、日本語への置換が巧みな事例だと思う。
書き得て妙、といった感じだ。
一般には外来語はカタカナ表記されるところを漢字の仮借によって当てるということはよく見られる(「珈琲」「浪漫」「型録」「硝子」など)が、この「治具」はそれを超えて表意文字としてのニュアンスが強い仮借の事例だ。

余談からはじまってしまったが、モノ作りに限らず人の生業における様々なところで治具、ジグであったり、あるいはテンプレートといった道具はとても重要。

元々、このjigという言語には「切削工具を導く装置」という意味を持たせているようなのだが、本来木工加工における道具のことを指す言葉だったのだと言ってしまいたいぐらいだ。

さて、このジグ作りにおける優劣が加工精度、および生産性を大きく規定し、仕上げの品質にも関わってくることは経験的に知っている。
jigには「in jig time」という用例があるようだが、テキパキと、敏速に、という意味であるらしい。
これを使わなければのっそりとしかできないものも、良いジグを作り準備することでテキパキと進むという具合だ。
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クローズアップ現代「日本の森林が買われていく」本日放送 !

本日9月7日、NHK総合、19:30〜、
国谷裕子キャスターによる調査報道番組「クローズアップ現代」で、
「日本の森林が買われていく」というタイトルの番組があります。

〈番組内容〉
北海道で明らかになった外資による“森林買収”。
背景を追うと、林業不振で森林を手放す地主が増える一方、海外では森林がいまや国際金融商品となっている現実があった。
       (NHK Webサイトより)

■ ゲスト:遠藤日雄(鹿児島大学農学部 生物環境学科 森林管理学講座 教授)
      日本林学会、林業経済学会、東北森林科学会
* 再放送: NHK BS2:26:25〜(= 9月8日 02:25)
・・・
こういう情報は、Twitterからつぶやくのが良いのだろうな ナウ。
でもその気がナイので、こちらからでごめんなさいなう。

「30年に1回の異常気象」

異常な暑さが続いているが、気象庁による3日の記者会見での「30年に1回の異常気象」との見解はさもありなんなどと呑気に受け流すわけにはいかないものであるらしい。〈気象庁:「2010年 夏の異常気象分析検討会での検討結果の概要」

「異常気象」という定義は気象庁では「過去30年の気候に対して著しい偏りを示した天候」とし、また世界気象機関では、「平均気温や降水量が平年より著しく偏り、その偏差が25年以上に1回しか起こらない程度の大きさの現象」としていることに示されるとおり、「著しい偏り」が顕著だという認識に基づくわけだね。
今や毎年のようにゲリラ豪雨、猛暑、冷夏などの気象現象に見舞われているために、やや「異常気象」という言葉も軽んじられつつあるが、しかし今年の「異常気象」はほんまもの、ということのようだ。

地学を修めたこともないボクにはエルニーニョ、ラニーニャと言われても良く分からないが、その原因がいわゆる地球温暖化、都市化によるヒートアイランド化、森林破壊、など様々な要因が複合的に異常気象の因子を構成しているのだろうということは理解できる。
つまりそのほとんどの要因が人為的なものであるらしいということ。

またそうであれば、今後巨万の人民を擁する中国、インドなどの急速な近代化は、一層深刻な「異常気象」をもたらすだろうことも想像に難くないということになるのか。
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成形加工における治具づくり、1つの考え方(序)

長月、9月だ。
周囲の田んぼの稲穂はたわわに実り、重たそうに垂れ下がってきている。
別のところでは既に刈り取りを終え、落ち穂拾いで忙しい野鳥たちの姿もちらほら。

夜ともなれば秋の虫の鳴き声が涼を誘う。
記録的な暑さだったというこの夏の猛暑。これがいまだなお衰えを知らず続いているというところに異常さがあるが、一方での秋の兆しは、夏、秋の大気の一歩も譲らぬ綱引き合戦といったところか。

このところ運送屋に託すものではあるが、納品搬送に伴う雑務が続き慌ただしく、制作作業にはなかなか集中できない。

集中できないということでは、Blog記事の素材収集のための写真撮影なども、そうした要因のうち無視できない1つであるかもしれない。
これは己の問題なのでこうしたところで語るべき対象とは少し違うだろうから言い訳がましく語るべきものではないことは承知している。
要するに自身の立脚点と、バランスの問題だろう。
楽しく更新でき、またそれが読者に伝われば、多少の集中力を阻害するものであっても構わない、ということだ。

line

さて今日は、成形加工での治具作りについて考えて見る。
これまでも何度か関連する記事を上げてきているので、既知のことだったり、繰り返しになってしまうかもしれないが、それはお目こぼしいただくこととして、たまたま加工を始めた序ででもあるので紹介してみたい。
面取り盤1

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家具用照明:ハロゲンからLED、 そしてやがては 有機ELへ?

LED照明器具
家具ではその対象により照明設備が必要となることがある。
ボクのWebサイトに納められている家具に限っても、「カップボード」「ワインバーキャビネット」、「ディスプレィフロアスタンド」などがそれにあたるが、ここ数年、いわゆる家具調仏壇を受注することも増えてきていて、これへの照明をどのように施すかは設計上蔑ろにはできない課題となっていた。

上述のカップボードなどには家具用に製造されている「ハロゲンライト」を主に使ってきていたが、家具調仏壇にはその大きさにも制約され、コンパクトな光源が望ましいと考え、これまで急速に普及しつつあるLED照明の中から適切なものを探し、その光源を扉開閉センサースイッチ、乾電池フォルダなどとアッセンブリし、取り付けてきた。

ただ必ずしも十分満足のいくものでもなく、さらなる向上を、ということで、今回家具用照明器具の専門メーカー、県内の企業でもある「株式会社ノア」からサンプルを取り寄せてみた。(家具金物で世話になっている業者の斡旋によるもの)

今回は以下の3点が提供された。
■ ガラスカバー付きLEDライト N-LED2012 画像右
■ LEDバーライト N-LED570 画像上
■ 薄型LEDライト NH-700  画像左

結論的にはその形状、サイズから NH-700を使ってみることに。
ただ白色LEDというのは、どちらかというと青白い光となるので、カバーのガラスへの着色、あるいはフィルターを被せるなどの方法で、白色灯のような暖色系の色調に改良したいと考えている。

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ミズメ、再び

ミズメチェスト


先の「器のチェストbyミズメ」、塗装を終え、駆体に甲板を取り付け、暫く乾燥時間を置き、発送準備という段取りだったが、甲板だけ再塗装することにした。

駆体に取り付けた後、サンディング作業でのペーパー脚が気になったから。
今回は #320でフィニッシュとしたのだが、少し番手の選定が甘かったかもしれない。
駆体に汚れ止めの養生を行い、あらためて#400 → #600と、より丁寧に再度サンディングを行い、塗装を施す。

どうして誤ったか。ミズメという材質の堅さ、緻密さが想定を超えて番手の細かさを要求したということである。

木を扱う人には常識の領域の話だが、柔らかい木には細かい番手で追っかけてもさほどの効果は認められないし、逆にローズウッド、黒檀のような堅い木にはよほど細かい番手で追っかけていかないと良質な板面は得られない。
ミズメの場合、最低でも#400以上でないと無理だということになる。
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初秋の兆し、2態

akatonbo

アキアカネ


アキアカネ(いわゆる、赤とんぼ)である。(クリック拡大)
羽が西日を受けて黄金色に輝いている。

工房の周囲で最初に見掛けたのが3日前。
今日の夕刻、工房前の中空を群舞。その数恐らくは50匹ほど。
高地から降りてきたのか。
庭の枯れ木に止まったところをパシャリ。
照れ屋なのか、なかなかこちらを向いてくれない。

今日も日中は35度を超えた。アキアカネは30度を超えると生存が危ういと言われるので、果たしてこの後無事に生き長らえ、カップルに出会い、DNAを残すことができるのか、トンボごとながら心配になる。

甲子園での夏の高校野球も決勝戦が終わる頃には秋の兆しが見えてくるというのがボクなりの理解だったが、今年はちょっと違う。
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器のためのミズメのチェスト

先日来制作していた器のチェスト、塗装もほぼ最終段階。

この依頼者は器のコレクションをしており、これを納めるためのチェストとして設計。

最上部の浅い抽斗はシルバーを整理するため、細かく仕切られる。
抽斗は半被せ。インセットで隙間が空くことを嫌った。
またフルエクステンションのスライドレールを用いる。
器の収納ともなるとかなりの重量になるためである。

こうした框組構造でのチェストは自家薬籠中のもので、全てがスムースに運んだが、最後思わぬ伏兵に悩まされることになった。
ミズメチェスト2

塗装も終わり、スライドレールを取り付けて仕込もうとしたのだが、いくつかの抽斗がとても堅く入って行かない。スライドレールの嵌め合いがおかしい。
抽斗から金具を取り外し、単体でテストするも、同様にやはり堅い。

あらためてレールをつぶさに見るも、これといった変形があるわけでもなく、判然としないな不具合だった。

販売店に訊ねても、お前はクレーマーか、と言った雰囲気の応対で埒があかない。

何とか自力更生で行うしかないと、あらためて検証。
思わぬ事が原因だった。
Lotが異なることで、嵌め合いに違いがあったのだ。

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iPhoneショット・美と食

昨日はこの日が最終日という美術館の企画展を2つはしごした。
まず開館時間に間に合うようにと急いだのが、静岡県立美術館。
6月中旬から開催されてきた「トリノ・エジプト展」

行かねばという意思は持っていたものの、日常の活動範囲の場所でもあり、いつでもいけるだろうという無計画さが、最終日まで繰り延ばすことになってしまった。
この報いか、朝早くから異様な混雑ぶりで驚く。
静岡県民がこれほどにも古代美術に関心が深いとは、ついぞ想定することさえしなかったボクが馬鹿だった(こういう場合はなぜか自分を埒外において考えるのが習わしだね 笑)

トリノ・エジプト
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戦後を生きるということ(続々)

今日も映画の話しから説き起こすことにしよう。
なぜなら、描かれた対象はボクたち2010年の北東アジアの国に生きるものにとって無関心ではいられないはずのものだが、〈あたかも質の悪い戦争報道であるかのように、「脅威としての敵」か「笑止の沙汰としての敵」の姿しか提示しない〉(08/12付朝日新聞夕刊・テッサ・モーリス=スズキ氏のコラム『北朝鮮の未来 想像を』から引用)メディアに代わって、この映画は隣国、北朝鮮の1つの実相をリアルに描いているからである。

『クロッシング』とタイトルされたキム・テギュンという韓国人監督による力作。

描かれるテーマは脱北者問題。

北朝鮮の炭鉱の町に住む三人家族。炭鉱で働く元サッカー選手のヨンスは、妻・ヨンハと11歳の一人息子のジュニとともに、貧しいけれど幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、ヨンハが肺結核で倒れてしまう。北朝鮮では風邪薬を入手するのも難しく、ヨンスは薬を手に入れるため、危険を顧みず、中国に渡ることを決意する。
決死の覚悟で国境を越え、身を隠しながら、薬を得るために働くヨンス。
脱北者は発見されれば容赦なく強制送還され、それは死をも意味していた。
その頃、北朝鮮では、夫の帰りを待ちわびていたヨンハがひっそりと息を引き取る。
孤児となったジュニは、父との再会を信じ、国境の川を目指す。
しかし、無残にも強制収容所に入れられてしまう…。
    (パンフレットより引用)

韓国人監督キム・テギュン氏は大勢の脱北者に徹底取材し、北朝鮮の民衆の日常生活、そして徹底した人権弾圧の象徴としての収容所をとてもリアルに描く。

経済的困窮、悪化する一方の食糧事情、公安警察により張り巡らされた監視国家。
東西冷戦が崩れ20年が経過している時代に唯一残った分断国家、朝鮮半島は戦後体制というものの一方の過酷な現実を象徴していると言って良い。

  ■ 蛭子能収さんの紹介Blog記事

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