工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

20世紀陶芸界の鬼才 加守田章二展

加守田章二展
陶芸家、加守田章二が49才で亡くなって22年。白血病での夭逝だ。生きていれば72か。
現代陶芸を代表する作家の一人だが、ボクは晩年の華やかな加飾の器を思い浮かべてしまうが、今回180点もの展示作品の中にあって、前半の益子時代、「高村光太郎賞受賞」以前の須恵器風、あるいは灰釉のものに目を奪われてしまった。
中には釉薬を掛け本焼きしたものを、あえて剥ぎ落とし、素焼き部分を露わにしたもの(壺1967)などに魅せる風情にも見入ってしまった。
もとより個展ごとに様々な華やかな作風を見せる独創性豊かな世界にはただただ圧倒されるばかりだが、これもしかし前述の益子時代の須恵器の研究、灰釉などに見せる基礎的な技法をしっかりと確立していた人ゆえのものであったことを感じさせられた。
加守田章二全仕事
加守田章二全仕事
表層の装飾の華やかさというものが、ディテールの精緻な技法と釉薬の重層的なアンサンブルの結果であると同時に、実は全体のフォルムの造形美と一体的に構想されていることではじめて成立しているのだと言うことに気づかされた。
全体のフォルム+精緻なディテール。これが有機的に結合している。
晩年の作風に至る1970年頃の「曲線彫文壺」シリーズにはこれを意識的に表現したものだろうと思うが、晩年のいわゆる彩陶といわれる作風にはそうした意識をむしろ後景に退け、より洗練された芸術として花開かせたものと思わされた。
あまりにも早すぎる病死であったが、もしその後に陶芸活動をしていたとするならば、どのような作風を確立したか見てみたいと、ファンならず慨嘆してしまう。

展覧会概要
加守田章二(1933−1983)は、大阪府岸和田市に生まれ、20世紀後半の日本陶芸界に、異色の才能を燦然と輝かせた陶芸家です。
高校時代から美術の才能を発揮し、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)に進み富本憲吉教授らのもと研鑚を積みました。
1956年に卒業後、茨城県日立市の日立製作所関連の製陶所などで働いた後、1959年栃木県益子町に窯を借りて独立し、本格的な作陶生活を始めました。
1961年、鉄釉作品で妻昌子とそろって日本伝統工芸展に初入選したのを皮切りに、1967年には陶芸家として唯一人、第10回高村光太郎賞を受賞しました。また同年、伝統的な作風からの脱却を考えて日本伝統工芸展への出品をやめ、新しい作陶の地を求めて岩手県遠野市に到達しました。
初めて訪れた遠野の地は加守田にとって制作の弾みになり、遠野に新しい陶房と単窯で修行僧のように制作に励みました。
そして、曲線彫文、彩陶など新境地を次々と発表し遠野時代を確立しました。1974年には、40歳の若さで、陶芸家初の芸術選奨文部大臣新人賞(美術部門)を受賞しました。
デザインを研究し、独創的な器形と加飾を広範に展開していった加守田の作品は、従来の陶芸の概念を超え、多くの人を惹きつけるとともに高い評価を受けました。
また、個展の案内状で「自分の外に無限の宇宙を見る様に、自分の中にも無限の宇宙がある」と述べたように、自らの理想に向かって精力的に作陶を続けましたが、50歳を前に夭折し多くのファンに惜しまれました没後20余年を過ぎても、輝き続ける加守田芸術の世界を約180点の作品で検証します。
     企画展パンフレットから引用(一部改行し読みやすくしました)

最後に彼の言葉から

私の陶芸観ー私は陶器は大好きです
しかし私の仕事は陶器の本道から完全にはずれています
私の仕事は陶器を作るのではなく 陶器を利用しているのです
私の陶器は外見では陶器の形をしていますが中身は別のものです
これが私の仕事の方向であり また私の個人の陶芸に対する作家観です

■ 会期:2005/09/10〜10/23(毎週月曜日、9/20・10/11休館日)
■ 会場:東京ステーションギャラリー
この後次に巡回する
・岩手県立美術館  2006/06/03〜07/17
・岐阜県現代陶芸美術館  2006/07/29〜10/09
【関連する情報サイト】
資生堂アートギャラリー
彌生画廊
これは先週28日に都内に出張の際に拝観したものだが、他にも都内各所で見てみたい企画が盛りだくさんで「イサム・ノグチ展」を除き、多くは見逃した。
今後ぜひ見たい美術関連企画
■「日本のアール・ヌーヴォー1900〜1923:工芸とデザインの新時代」
 2005/09/17〜11/27
 東京国立近代美術館 工芸館
■「ルーシー・リー展 器に見るモダニズム」
 2005/09/10〜11/20
ニューオータニ美術館
(本サイトでの過去の記事
なお先のエントリー記事「イサム・ノグチ展」では触れるのを失念したが、主会場の別室で、イサム・ノグチ デザインによる家具も展示(来館者は使用できる展示方式)されていた。(コーヒーテーブル、ソファなど数種類)
また「明かりシリーズ」の小型のものを含め、多くの関連グッズ、書籍などがミュージアムショップから大きくはみ出して販売され、好評のようであった。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 加守田章二に感動

    私は陶器は大変好きです。しかし私の仕事は陶器の本道から完全にはずれています。私の仕事は陶器を作るのではなく陶器を利用しているのです。私の作品は外見は陶器の形をしていますが中身は別のものです。これが私の仕事の方向であり 又私の陶芸個人作家観です。「私

  • 【展】加守田章二展

    東京ステーションギャラリーにて、加守田章二展。
    ちょっと前に八木一夫展を見て以来、なんとなく陶芸にも惹かれつつある今日この頃。

    展示室に入って、個々の作品をじっくりと見入る前に、まずは全体を眺めまわしてみる。ガラスケースの中に並べられた作品群が、

  • コメント&TBありがとうございました。
    私は陶器の製法とかにはまったく無知なのですが、
    ああやって陶器の表面の質感を様々に作り分け、
    器の佇まいをいかに表現するか…その表現力に驚きました。
    錆びた鉄のようでもあり、剥き出しの礫のようでもあり、
    あるいは皮革のようにも見えたり、布のようにも見える。
    表面の質感を見てるだけでも、面白いものだなぁと感じました。

  • <東京ステーションギャラリー >開催中の展覧会情報

    加守田章二展
    会期:2005年9月10日(土) 〜10月23日(日)
    休館日:毎週月曜日(10月10日を除く)、10月11日
    入館料:一般800円、大高生600円、中小生400円
    開館時間:平日:午前10時〜午後7時 土日祝日:午前10時〜午後6時
    場所:〒100-0005 千代田区丸の内1-9-1

  • 加守田章二展にでかけて・・・

    岩手に深い繋がりがある陶芸家であまりにも有名になのに実際は作品を系統的に観る機会はなかった。
    ようやく岩手にも巡回してきたので昨日の休みを利用して出かけた。平日の美術館はゆっくりと観覧できるので休…

  • ようやく観ることができました!
    焼くと須恵器のようにみえる土は加守田氏の作風ととても相性のよいものにみえました。70年ごろの作品で自分の墓石にでもするつもりで作ったのではないかと思える作品がありました。考えすぎでしょうか…。

  • aiさん TBおよびコメント感謝します。
    陶芸家は良く自身のために骨壺を焼いておく、というようなことはあることと聞きますが、“墓石”ですか?スゴイ。

  • 富本憲吉も生誕120年だったのだ

     ついこのあいだまで、「生誕120年 藤田嗣治展」が開催されていた京都国立近代美術館で、こんどは「生誕120年 富本憲吉展」が開かれている。昨日、オープニングレセプションがあったので、行ってきた。藤田と富本は東京美術学校(現芸大)でも同期で、マンドリ

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