工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

コーヒーテーブルHASHIBAMI

HASHIBAMI
ギャラリー 一会個展のDMに使った小さなコーヒーテーブル、およびアームチェアLam06。
自然光+ストロボをバウンズさせたものの、照明が最悪。
俯瞰しての撮影なので脚部デザインは良く分からんね。
天板形状はあまり鮮明ではないが、なだらかなカーブを描く、いわゆる太鼓になっている。
色が濃く、その分かなり緻密で重厚なウォールナットだった。
ウォールナットという材種も本当に様々だ。
概して色の薄いものは軽量軟弱で濃いものほど重硬といって差し支えないだろう。
ただこれは一定の樹齢を有したものでのこと。
若い樹はどんな樹種でも目が粗く、重いものだ。
樹齢を重ねることで年輪は詰んできて、枯れて暴れも少なくなり、軽くなっていく。人間と同じだよ。
ボクの拙い知見によればウォールナットという樹種の色を語るとき注意せねばならないことがある。人工乾燥のシステムによって大きく変容するということ。
このBlogを以前からご覧いただいている人には既知のことだろうからここでは詳しくは述べないが、日本国内で流通している多くのブラックウォールナットは本来有するはずの色調が残念なことに失われてしまっている。
本来の色調を求めるならば、一定の樹齢を越えた原木を見つけ、製材しよう。
Lam06についてのコメントは省略。デザインと掛け心地とコストパフォーマンス。
手前右は展示室に常設してある常滑の大きな壺。

コレクションテーブル(個展出品作)

コレクションテーブル1
岡崎市での個展はまずまずの成果で終わったが、ここに出品したいくつかの作品を紹介する。
会場スペースの制約で画像のアングル、撮影ポイントなどが良くないことはあらかじめお断りせねばならない。
まずこちらは「コレクションテーブル」
いわゆるセンターテーブルであるが、幕板部分をガラス張りの収納スペースとして構成したものだ。
内部をアクリル板で区切り、コレクションの小物をディスプレーする。ここへのアプローチは天板の長手方向に丁番を付け、扉とすることで解決。当初引きだしでも良いかと考えたが、側板を板にするのではなくガラスでいきたかったがためにこのように上部からのアプローチとした。
コレクションテーブル2材種はブラックウォールナット。底板部分はブラックウォールナットの厚突きを張ったランバーコア。
脚部のラインはエレガントさをねらったが果たしてどうだろうか。
因みに上部天板の留め部分の接合は鼓を裏に打ち込んで堅固なものとした。
ガラスは強化ガラスとしたので、Topをテーブル的使用に供してももちろんOK !だ。
制作上のポイントはやはり脚部のデザイン処理とガラスの収まり部分になろうか。

個展来訪者に感謝

展示会も最終日を迎え多くの来訪者にめぐまれた。
遠くは東京、京都、そして岐阜、長野などからお越し頂いたようだ。
実はこうした展示会では良くあることだが、同業の知人友人、そして若手の作り手も興味深く来訪し、ためつすがめつチェックが入るということになる。
知人友人とはあたたかい邂逅の場であり、厳しい先輩、師匠筋からは厳しい批評眼に射抜かれることとなる。
そして総括すれば、材木屋からはこの価格では材木の価格にしかならない、と叱られたり、テーブルなどの展示方法は間違っている、あれこれと小物を置くべきではない、と。
もっと作品としての品位に合わせた展示を心がけるべきではないかと言う。
まだまだ試練が足りませぬ。反省 \(__ )
このように厳しいアドバイスを頂くと共に、一方では購買意欲のある客と同席すると、作品の解説を出品者に替わりしてくれたり、材種によってはその入手の困難さを説き明かし、価格でもいかに安価に設定しているかを話してくれたりもするので、ありがたい。
今回来訪者の新しい現象としてやはりこのBlogの読者が大勢見に来てきれたことだ。そのほとんどはコメントなどのアクセスはいただけなくとも興味深く見続けてくれている読者だったのだろうと思う。
残念ながら顧客との会話、打ち合わせなどで、そうした方々との十分な交流ができなかったのは残念であったし、申し訳なかったことと思う。
できれば積極的に声を掛けてくれさえすれば、快く応ずることもできたかと思う。

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岡崎の個展では‥、

ローズウッド
昨日個展初日を迎えた。
この会場「ギャラリー 一会」はとてもユニークなギャラリーだと思う。
オーナー夫妻が本当に美術骨董を愛し、そのすばらしさを多くの人々に伝えようと生活のそのほとんどをこれらの普及に投下している。
ボクは書画骨董は門外漢ではあるが、美術愛好家の端くれであることに変わりはなく、ここに訪れる度に多くのことを学んでいる。
また初日もそうであったが、この地域で活躍している様々なプロフェッサーとの接遇を仲立ちしてくれる。
これらのことは必ずしも木工芸への直接的示唆になり得ないものであっても、木工芸と人間との関わりの深い部分を掘り下げるものになっていることは自分に照らしあわせても経験的に知っている。
以前、個展の案内に関する記述へのコメントで貸し画廊と、企画画廊の違いについての話があったが、企画画廊ならではの作家との強く深い関係性の形成をこうしたところに感ずるのも確かなところだ。
工芸という人間臭い仕事には工房に閉じこもっていただけでは掴みきれない何ものかがあることも同じ意味で確かなところだろう。
画像はローズウッドのキャビネット。
ある来客がこのイメージで仏壇を造ってみたいとささやいていた。

働き蜂の如くに(個展が始まります)

bees1
明日からの個展へ向けて会場への搬入、セッティングを行う。
「ギャラリー 一会」での個展は一昨年に続き2度目。家具の展示会ともなれば、これぐらいのインターバルが適切なのだろうか。
前回はかなりの点数を持ち込みコーヒーショップの方にまであふれさせてしまったのだったが、今回はやや控えめに、というアドバイスにも関わらず、会場狭しと並べてしまった。
しかし新作をこうした会場で展示させていただくことで、その魅力も問題点も露わになれば、ありがたいことではある。
既に地元紙を初めいくつかのメディアでも紹介していただいているし、やや遅くなってしまうが来週半ばには「朝日新聞 全国版 マリオン」でも画像入りで紹介していただけるようで集客にも期待したい。
ところで会場へのセッティング終え、オーナーにチェックしていただいた感想が新作へのお褒めの言葉と共に「杉山さんの価格設定は少し安すぎるのでは」という一言があった。
故無しとしない。
作品において価格というものが持つ要素、そのメッセージはに大きいものがある。
無論、一定の相場という相対的なものもあろうし、コスト計算ではじき出される絶対的な価値基準というものもあるだろう。
しかし作品ということになれば、家具相場というよりも制作者の表現行為の重要な要素として価格というものが意味づけられるのであり、「安すぎるのでは」という一言が意味するものは大きい。
自身の作品に込めた物量と家具作家としての自負をあらためて考えると言うことも必要なのかも知れない。同時にそれはさらなる研鑽を自身に課すということが伴うことを銘じなければならないということでもあろう。
さて、会場には明日と、来週末、土曜、日曜と立ち会う予定。
どうぞお出掛け下さい。
【杉山裕次郎 木工家具展】
会 場:ギャラリー 一会
    Phone:0564-51-3193
    愛知県岡崎市向山町1- 9  

会 期:10月22日(日)〜10月29日(日)
    11am〜6pm
在廊日:22日、28日、29日、
画像は本記事とは無関係の花の蜜を収集する蜂のスナップ。
数日前の撮影だが、働き蜂としては冬へはいる前の重要な時期にあたるのだろうか。
ボクも彼らに負けじとしっかり成果を出したいものだ。
ご協力の程、ヨロシク(苦笑)。
bees2

面処理の大切さ

蛙股
家具制作における造形的作業のなかで、面処理というものは一見些末な部類に入るかも知れない。
しかしこれが意外に重要。
面処理が如何に丁寧に考えられて施されているのかどうかで、その家具の品質にも少なからぬ影響を与える。(と、考えている)
一般に量産家具においては多くの箇所がいわゆるボーズ面で処理されていることが多いだろう。
あるいはまた様式家具などにおいては銀杏面、さじ面などといった様々な伝統的な造形様式からくる面処理がなされる。
これらはその家具のトータルなデザインにほどよくマッチし、ディテールそのものが伝統的様式の美しさの重要なポイントになることも多い。
逆にモダンなデザインにおいては、こうした様式家具に用いられる面処理はそぐわない。ミスマッチになることが多い。
しかしだからといって何でもかんでも量産家具のようにボーズ面だけで良しというものではないだろう。
面処理が全体的なイメージに影響を与えるということはモダンなものであっても変わるものではない。
適切で美しいものでなくてはならないのだ。
かつてご一緒した家具展で隣接したブースのある工房の家具の後ろに1週間座ったことがあったが、それらの家具の背面は一切の面処理がされていなかったのには驚かされたことがあった。見えない部分は省略という訳だね。しかし搬送作業などでそこを掴めば痛いだろうな。ピンピンだもの。
このことはこの本件記事の意味するところからは余談に過ぎないが、工房家具と自称しているからには、丁寧な仕事を旨としたいものだ。
さて画像はCLARO卓の板脚部分。
側面をいわゆる蛙股(カエルマタ)型に繰り出している。これが正しく面処理という範疇に入るものかどうかは問わないで欲しい(苦笑)。
伝統的な様式の部類に入るかも知れないが、ボクは板脚に良く用いる型だ。
シャープな感じが出て、また陰影も豊かだ。
角度は20°だがほど良い傾斜だと思う。
中央の穴は貫の寄せ蟻部分。
残るは塗装。
実は今日前回のBlog画像を見たお客からこれを買い求めたいという要望の電話が入った。
完成前に押さえられるというのも希有なケースだがありがたいと思う。
Blogの効果でもある。
その電話で塗装についての要望があった。
通常ボクはテーブル天板については例え良質なウォールナットなどの濃色材であっても、耐水性、耐熱性、耐薬品性などへの配慮からウレタンをミックスしたオイルを用いることが多いのであるが、今回の要望は純粋な植物性オイルで塗装して欲しい旨の依頼であった。
顧客からこのような要望を受けるのは大変ありがたい。
メンテナンスが大変ですよ、と恐る恐る申し出ると、ご自身で慈しみながらオイルを塗りたいと仰る。
CLAROを身近に置き使っていただくにふさわしい顧客があらわれたことは実にありがたいことだと感謝している。
実は昨年同じCLAROの卓を購入していただいた顧客は自動車関連産業の経営者で、業務においてこのCLAROを用いた部品も製作していて、その魅力に取り憑かれていた人であった。
しっかりとしかるべき手法を用いて広く訴えれば稀少な材種を用いた価値のある家具と稀少な顧客との出会いという一見して困難なマッチングも可能であることをあらためて教えられた。
さて、個展が間近に迫っているということもあるのだが、今朝未明、近親者の訃報が飛び込みそれによる繁忙でしばらくは更新が滞ってしまう。

秋真っ盛り。

烏瓜
スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋、と様々に形容される秋ですが、ボクに言わせれば、やっぱり仕事の秋、木工の秋ですわ。
大気が乾燥していて、暑からず、寒からずの陽気であるため、体調がごきげんであるとともに、木も快適のようで暴れたりしない。
おとなしくしてくれているので管理がラクチン。
でもこんな条件の良い時季はほんの一時。あれよという間に季節は移ろう。
今年の個展がこのような時季に準備できるのはありがたいことだ。
今日は先に記事にしたCLAROの卓の脚部加工。順調にいっている。
先のBlogをご覧になった東京方面の客から、ぜひこれを見たいという電話が飛び込む。個展に出品する前に決まっちゃうかも知れないな。
もう同じ原木からの板の上質なものの在庫は無い。

蔓切れてはね上りたる烏瓜  高濱虚子

画像は工房脇の名も知らぬ木に巻き付いて、毎年この時季に楽しませてくれる朱色の烏瓜の実。(昨年もupしたっけ 苦笑)

CLARO天板鉋掛けの妙

CLARO鉋掛け
台風通過中ですね。皆さまのところでは被害がありませんように \(__ )
こんな湿潤な環境なのに、天板削ってるんです。
展示会まで時間があまり無い。削っているのは クラロウォールナットという米国材。この樹種はとても安定していて比較的環境から影響を受けにくい。
荒木で幅が1,250mm(この原木はつまりは太さが1.3mを越えるものだったということだよね)、長さ1,500mmのもので厚みは60mm。これをポータブル電動鉋→手鉋で平滑性を出し、仕上げていく。1,250mmという幅であるにもかかわらず、歩留まりは良く50mm以上には仕上がってくれた。
この地域では900mm幅までのものであれば削ってもらえるプレナー屋がある。(バーチカルではなく普通の自動一面鉋盤)
この範囲内であれば、片面の基準面を出し(平滑性を出す)、持ち込めば綺麗に削って貰える。後は手鉋で仕上げればよい。
しかしこれを越えるとなると両面ともえっちらおっちら、定規で平滑性を精査しながらポータブル電動鉋と手鉋で基準面と反対側での厚み決めをするしかない。
でも何故かあまり苦ではない。にやけた顔をしながらパワフルに削り作業に専念する。

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木彫アクセサリー 上條宣子個展

上條さん
             ピーピッピッ  桑
知人の木彫アクセサリー作家、上條宣子さんの個展のご案内です。
このジャンルでは日本を代表する上條さんですが、アイディアとユーモアにあふれた作品には、木への慈しみと、枯渇することのない想像力を強く感じさせ、いつも圧倒されます。
木彫に興味にある人も、そうでないアクセサリー好きなだけの人もみんな虜にしちゃいます。
どうやって造ったのか“不思木”な世界なんだな。
【 木彫アクセサリー 上條宣子個展 】
会期:2006 10,13 FRI ─ 18 WED
会場:銀座 陶悦
    東京都中央区銀座2-6-5 越後屋ビル2階 Tel:03 3561 0790
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らくちん胡桃(クルミ)の板

座繰り
無垢の座を持つ椅子の加工工程で最も疲れるのが座繰りであることは言うまでもないことだが、あらためてこの工程で材種による鉋掛けでの難易度の大きな違いを知らされる。
うちでは様々な材種で木工家具を製作している。
椅子においてもこれは同様だ。硬いものからリストすれば‥‥、
みずめ樺を筆頭に、真樺、みず楢、ブラックウォールナット、たも、胡桃、などと言ったところか。
胡桃は最も鉋掛けが容易な材種。サクサクと削れる。
作業量、疲労度を考えれば、みずめ樺と比較して 1/3 〜 1/4 ほどか。
そんなに ??と思われる向きもあるだろうが、そんなに違うものなのだ。
胡桃を用いたのは椅子という人体を支える家具として要求される堅牢性が、靱性が比較的高いことで条件を満たすという性質からのものであることも1つの要因だが、やはり加工において生産性が高い(加工が容易)ということも重要なファクターであることは言うまでもない。
つまりそれだけより廉価で供給できる。
材木価格も他の堅木と較べても安いし、それ以上に仕上げ切削などでの作業性の高さ(生産性の高さ)が設定価格低減に寄与しているということだね。
ここ2週間ほど何故か右上腕に痛みがきていた(五十肩だって?)。ありがたいことにそのような体調ではあったが今回の材種が胡桃であったのでこの座繰りの工程は無事済ますことができた。
ま、明日は腕が腫れ上がっているだろうとは思うが、構わず仕事をすればそのうち痛みも忘れるだろう。
今日は1日ぐずついた天気であったが、10月を迎え爽やかな大気の中で木工ができるのはありがたいことだ。秋に感謝しよう。
(画像はスローシャッターでの撮影だったが、スロー過ぎて手の中の小鉋[四方反り台鉋]が見えない 苦笑)