工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

私たちに決定的に欠けているのは、このような怒りなのかも

3.11から140日経過。
震災復興という名の戦後処理は遅遅として進まず、原発事業主体の電力会社と地元自治体首長、そして所轄官庁(原子力安全・保安院)の腐臭きわまる癒着、馴れ合いがあからさまな形で暴露され、「この程度の線量では安心」と繰り返されるメディアには、今や誰からも信用されていない。

真実はどこにあるのか、子供を守るためにはいったいどうすれば良いのか、自分の選択はどうあるべきなのか、3.11以降というもの、様々な問題に行動と思考が縛られ、奪われ、ついには思考停止に陥るという悪循環と、こんなことでどうするのかという自己嫌悪、強迫観念がうずまく。

恐らくはその多くが震災復興、およびフクシマ3.11後の帰趨を握っているはずの政府当局者および与野党の政治家諸君の非徹底な取り組み、サボタージュ、怠慢が大きな障害になっていることだけは明らかなようだ。

稲わら汚染で窮地に至ってしまった酪農家のあの苦渋に満ちた相貌は見るに堪えられない。
ボクは彼らを責めるなどということがどうしてできようか。
責任を負わねばならないのは東電であるし、そして適切な防染対策の指導を怠った政府当局者なのだ。

筵旗を立て霞ヶ関に大挙して抗議の嵐が巻き起こらないのが不思議なほどに、彼らは従順で、物言わぬ民なのか。

ここに、一人の放射線を専門とし、毎週のように南相馬市に出掛け除染活動に従事しているプロフェッサーがいる。
2011年7月28日、衆議院厚生労働委員会に参考人として意見陳述している児玉龍彦(東京大学先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)さんである。

この怒りをボクたちもフクシマ県民とともに共有したいと思う。

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=eubj2tmb86M[/youtube]

クォリティーへの評価(オリジナリティーとの対比において)              ── 村上富朗さんの仕事 ──

ボクはウィンザーチェアについて特段語るべきことを持っているわけではない。
今日の考察については解釈における間違いが含まれるかもしれないが、そこは知見を持つ人からのコメントで補強していただければありがたい。

他でもない、さっさと現世からオサラバしてしまった村上富朗さんの仕事、その主軸であった彼のウィンザーチェア作りについて考察することで、ボクたちの木工への関わり方、その制作のスタンスについて考えてみたい。

この記事は、かつてこのBlogで記述を重ねた〈論考「職業としての家具作り」〉を補完するものになれば良いと思っているが、果たして‥‥。

ボクたち木工職人、あるいは「木工家」でも良いが「職業としての家具作り」に臨むにあたり、人生の選択としての「木工」というものの可能性、あるいは社会的な存在様式というものについて様々な角度から考えてきたのが、上述のBlog論考であったわけだが、村上富朗さんの仕事とそれら業績を検討することを通して、木工職人、木工家の可能性というもを考えてみたいと思う。

既にネット上でも多くの哀悼の言葉が並び、ボクもRSS取得しているいくつかのサイトの記述に触れて感じることは、その多くが彼の人柄にフォーカスを当てたものが主要なものとなっている傾向に、やはり村上さんらしさが出ているなとほっこりするとともに、また一方、モノ作り、家具制作に少しでも関わっている者であれば、彼の仕事の本質に少しでも迫るようなところからの言葉があっても良いのにな、との思いがよぎってしまったというのが正直な感想だった。

まだ四十九日も経ていない時期であればそれも当然かも知れないけれど、彼の仕事を良く知る立場の人からぜひ彼の業績についての詳細な解説と評論があれば、彼の業績もより明確に定着し、彼を慕う若い椅子づくりの方々から、広く一般に木工家具、木製椅子に関わる社会的知見も深まるのではとの思いもしてくるというものだ。
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Mac OS X “Lion”がもたらす快適環境



Macの新OS、Mac OS X “Lion”が先週20日にリリースされた。
ボクは週末にインストールしたが、戸惑いを覚えながらも新機能チェックを行っているところ。

以下、現時点で確認されたところを記述してみよう。

インストールはAPP Store、つまりネットから

今回のOS更新の目玉の1つともなっているのが、ディスクを購入しての光学ドライバからのインストールというこれまでの方式では無く、ネットからのダウンロードという方式に変更されたということ。

一般的なアプリであれば既に半年ほ前に誕生したAPP Store[1] からダウンロードするのが当たり前になってきていたとは言え、まさかメジャーOSの更新データまでがネットからダウンロードさせるとは思い切った決断だと思った。
データ量だけでも3GBを超える容量なのにである。

昨秋に光回線を導入しておいて良かった。ADSLではダウンロードだけでも1時間を超えそうなデータ量だからね。
とても日中には試みることはできず、夜間、睡眠中の作業とならざるを得なかったかもしれない。
光回線の環境でもダウンロードだけで20分近く掛かった。
下り50Mbpsを超える環境なのに、どうしてそんなに掛かったの?
リリース直後で回線トラフィックの容量からのものだろう。
少なく見積もっても全世界から数100万人の人がアクセスしていたようだからね(「Lionのダウンロード、初日で100万件を突破」

なお、ダウンロードにあたっての動作環境だが、メモリーは2GB以上を推奨とのこと。
因みにうちのかみさんのiMacは購入時のママの 1GBしか搭載されていず、慌てて2×2GBを購入せざるを得ない羽目に(苦笑)。
このあたりもネットからダウンロードという方式の制約だろうね。

またサブマシンのMacBook Airは光学ドライバが搭載されていないのだが、ネットからのダウンロードと言うことであれば、他のマシンと同等の環境[2] ということで、密かにほくそ笑んだ。
因みに、Apple社とのIDが同一のマシンであれば1単位のダウンロード購入で複数マシンにインストールができる。

その価格だが、なんと、破格の2,600円。
それまでのディスク版のMac OSの価格と比べると半額ほど。
これはディスクからネットダウンロードに切り替わった経費削減の効果とともに、円高レートでの価格見直しがあるようだ。(マシンの価格も同様に見直されるのだろうか?)
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❖ 脚注
  1. Apple社が運営するMac関連のソフトウェアの販売サイト。楽曲を販売するiTunes Storeと同じようなシステム []
  2. 正しくは、同じ環境とは言えない。
    LANポートが無く、USBアダプタを介してのもので速度は半減。
    USBからではなく、MacBook Airの基本的考え方であるWi-Fiからでは、さらに数倍の時間を要するだろう []

鰻はやはり “石橋のうなぎ”

うなぎの石橋



日曜日のことだったが、土用の丑を前にして「うなぎの石橋」の鰻を堪能。
この日は午前、午後、会場(劇場)を代え、二本の映画を楽しんだ帰路に立ち寄る。
(映画については、またあらためて書いてみたい)

夕食どきにはまだ間があるものの、市郊外に立地する古民家風の佇まいの店外にも大勢の客があふれていた。
日曜日とあってか、駐車場の車のナンバーを見れば、その多くが首都圏からのもの。
覚悟はしたものの、1時間ほど待たされた後、カウンターに席を取る。

例によって、まずは麦茶とお新香が運ばれてきても、酒などのサイドオーダーが無ければただ黙して鰻の長焼きの定食が運ばれてくるのを待つだけ。

混雑していたので普段より時間も掛かったが、30分ほどすればメンパ(曲げ物の器)からあふれんばかりのご飯、肝吸いが運ばれ、その後、数分もすれば黒織部の皿からはみ出た長焼きの鰻が運ばれてくる。
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ワークベンチ・ショルダーバイスの効用

ショルダーバイス

圧締工具というものは木工作業には欠かせないものだが、作業台においても圧締機能はとても重要な要素となる。

手鉋で削る、手鋸で切る、ノミで穴を穿つ、さらには電動工具での切削工程でも被加工材の圧締は重要だ。
これらの作業の基本となるのが、被加工材の安定的な固定だ。
これが不安定では目的とする寸法精度、平滑性など高精度、高品質な加工は前提において崩れる。
そもそも作業者は快適な加工環境になければ疲れ、ストレスがたまるだろう。

ところで、いわゆる日本の当て台と呼ばれる作業台にはこうした圧締機能は付属していない。
ボクが基礎を学んだ信州松本地域の当て台には、木工作業に便利な万力を取り付ける機構があり、従来の当て台を改良して補助的に圧締機能を付加させているところがユニークだった。

一般には立ち台の作業台に万力を取り付けたりして、補助的に圧締機能を備えていることが多いようだ。

これに対し、欧米ではあらかじめ様々な圧締機能を持たせた設計と構造のワークベンチが一般的だ。

今日の画像は、そうしたワークベンチの中でもより使い勝手が良く、木工作業の快適で安全な環境を提供してくれる、スカンジナビアンタイプのワークベンチの「ショルダーバイス」を用いた工程の1つ、扉のヒンジ取り付けのためのルーター切削工程である。
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FIFA 女子ワールドカップ 日本初優勝の背景で(追記あり)

世界を驚かせた日本女子サッカー

FIFA Women’s World Cup 2011 決勝戦、劣勢を跳ね返し、何度も追いつき、ついにPK戦まで持ち込んだ結果、初優勝を飾った日本チーム。本当におめでとう !

今大会、決勝リーグ以降はビデオ録画観戦で楽しませてもらったが、この決勝戦は、後半5時頃からLIVE観戦。ハラハラドキドキの1.5時間。
最後は各選手の笑顔での泣きじゃくりに、こちらももらい泣き。

恐らくはスポーツ専門のオッズ、あるいは巷間でも日本チームがこれほどの戦いぶりを見せてもらえるとは考えていなかったはず。
ボク自身、この女子サッカーには男子サッカーほどの関心も無く、日本代表チームがFIFAランキング4位と言われてもピント来なかったし、男子サッカー、世界戦レベルにおける血湧き肉躍る戦いほどの魅力を感じることも無かろうと考えていた節がある。

しかし決勝リーグで見せられる各国代表チームの技術、あるいはスピード、チームワーク、いずれもとても魅力ある、見るに値するスポーツとして繰り広げられていくのに驚き、目を見張ったものだ。

ブラジル、MARTA選手の個人技、そしてUSA Abby WAMBACH選手の豪快なシュートなどに代表されるパフォーマンスはボクの女子サッカーへの偏見を木っ葉みじんに打ち破る魅惑的なものだった。

もちろん日本チームも下馬評をことごとく覆す活躍ぶりで、勝ち上がるごとにパフォーマンスにも磨きが掛かり、強豪勢を前に一歩も引かず、守りに守り抜き、パスを繋ぎ、チームプレーに徹し、結果、多くは無い好機をみごとに得点へと繋ぐ力量を発揮してくれた。


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キャビネットの扉も佳境に‥‥いやまだまだ

猛暑ではあるけれど、湿度は40〜50%あたりを推移。
身体さえ耐えられれば、木工に支障をきたすほどの過酷さではないので、大汗しながらがんがんと仕事に打ち込む。

いくつかの問題を抱えながらの扉ベニアリング加工だが、プレス作業も終わり、“板”まではできた。
途中、その新たな問題。プレス機のリミッターが不具合を起こし、上下動する定盤が限界を超え駆体上部まで届き、マシン電源部のリレー(過剰電流)が働きやっと止まるという、ちょっとあってはならない怖ろしいトラブル。

ストッパーのマイクロスイッチ、機構部分の機械的損傷によるものだ。
この修復に3時間ほど要した。
仮復旧ではあるが、当面は機能する。
しかし遅くならない内にこのリミッターの交換が必要。
機械屋にアドバイスを受けながら、自作することも考えて見よう、
自力更生こそ、基本姿勢でありたいからね。
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滅入る、この寒さ(稀少材の破断)

もがれるように折損してしまった破断面


連日35℃を超える猛暑のこの時節。

前回のエントリの続きで、ベニアリングのためのCLAROウォールナット単板を作っていた時のこと。
ムラ取りした単板をプレナーに通そうとしたところ、バリバリッ、メシメシッ、と怖ろしい異音が。
プレナーから出てきた単板、先端部分、約40mmほどが消失しているではないか。
それは心臓が凍り付くほどの衝撃。

手持ちの虎の子、CLARO・バール杢単板からギリギリのところで木取りしたもので、ほとんどと言って余裕が無く、この1枚の単板の破損は寒気をもよおすほどの打撃。

うちのプレナーは求め得る国内最高水準のマシンと認識しているので、機械のせいでは無い。
問題はCLAROの木理の方。
CLAROのある特有の個所、例えば根っこに近い部分、あるいは今回のようなバール杢(瘤杢)、この板面に表れるのは、板目、柾目、コブ、時には木口に近いものまでが複雑多様に分布し、このことにより得も言われぬ豊かな表情を醸すわけなのだが、逆に一方、物理的特性としては脆弱な個所を含むことがある。

今回の破損、一部消失というのは、これを原因とする。

ただ、これが一定の厚みがあれば特段問題になることは無いのだが、今回はわずかに1分強の厚みとあれば、この脆弱さがモロに表れてしまったというところ。
また一定の厚みのベニアに練り上げれば、こうした意図せぬプレナーの“暴れ”は回避できる。
要するに今回の失敗はわずかに3mmほどの厚みであることの切削困難と、CLARO複雑木理であることの困難の二つが掛け合わさった結果だ。
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クラロ単板をシコシコと

CLARO単板つくり


梅雨明けの猛暑の中、クラロウォールナットの厚板(plankだね 苦笑)を抱えて、知人の木工房へ出向く。

うちの機械設備では手に余る400巾の単板を作るためである。
バンドソーでの挽き割り作業なのだが、うちのはわずかに305mmが限界というヘタレなもので、これを超える幅割きをしなければならない時、ハンパな機械を導入してしまったことを毎度悔いる。

片やこちらのものは比較的最近導入したというバンドソーなのだそうだが、鉄車で製材専門という感じの頑固な機械で400mmまで挽ける。
導入後の使用頻度は低く、刃も研磨されていないというので少し心配させたが、まずまず所期の目的は達したというところ。

先取りを手伝いながら心配そうに見ていた工房主も安心したようで、ヨカッタヨカッタ。

1分(≒ 3mm)に仕上げるものなのだが、1.7分(≒ 5.2mm)ほどの厚みに挽く。
帰宅後詳しくチェックすると、やはり少し鋸が踊っていたようで、いったん全て片面のムラを取ることにした(手鉋シコシコの画像がその作業)。

切れが芳しく無かったこともあるのだろうが、やはり一般のバンドソーではこの程度の精度が限界か。
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フリッチ、語彙としての誤りについて(お詫びと訂正)

前々回のエントリ「フリッチからはじめよ」について、このタイトルの「フリッチ」(Flitch)ですが、語彙として誤りです。
本来はコメントを寄せていただいたたいすけさんが用いた「plank」(厚板)、あるいは「塊」が適切な語彙であり、用法です。
ここで間違いについてお詫びをし、訂正させていただきます。

誤りを指摘していただいたのは、何かと教えを頂戴しているデザイナーのAさんですが、以下に指摘していただいたところを一部引用させていただきます。

Flitch: 平角材 - – – ピン角・なで角でSliced 単板・Sawed Veneer を挽く木取り材
化粧材・役もの(杢板)がとれる上等なGood quality Material ,年輪幅で製材するものでたんなる「塊」Block ではない。

実は私もたいすけさんからのコメントの「plank」にビビッときて、あちゃ、間違いだったかと思いつつ、しかし決定的な誤りとの認識に及ばず放置。

分かりやすい事例を挙げますと‥‥、例えば(これも間違いだと指摘されてしまうかもしれませんが)、
「ピーラー」と呼称される米松がありますが、あのような目の詰んだ、柾目が通ったものなどを「Flitch」と呼ぶ。ということで良いと思います。

指摘していただいた師匠からは、他にも関連する興味深い話しもありましたが、いずれあらためて別項設けて記事にしましょう。

語彙について、ややアバウト(というより誤り)なところがあり、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。以後、注意したいと思います。