工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

鉋 vs スクレーパー

タイトルバナー
Scraper(スクレーパー)という道具がある。
様々な用途で用いられるので、木工とは関係のない業務、あるいは広く生活面でも活用されているものの1つだ。
ビルメンテナンス(お掃除するおじさん、おばさん)、駅の掃除やさんが必ずポケットにしのばせておく便利道具。多くは床にへばりついたガムをこそぎとったりするアレだ。
家庭でも台所でこびりついた汚れを取るのに使っている賢い奥さんがいるだろう。
冬場の朝の車のスタートにはウィンドーに張り付いた結霜をサイフから取り出したカードのエッジでこそぎ落とすこともままあるだろう。これもスクレーパーに含めるのは間違いではない。
産業界でも様々なところで様々に活用されているはず。
木工でも板剥ぎの際にはみ出したボンドをこそぎとるのにご登場願ったり、作業台にこびりついたボンドやら汚れやらを取り除くのにも便利な道具だ。
ホームセンターに行けば、カッターなどの棚、あるいは塗装用品のコーナーなどで用途に応じた様々なものがあるだろう。
さて今回は木工の仕上げ加工に用いられる「Scraper(スクレーパー)」について少し考えてみる。
最近あるWebサイトのBBS(KAKUさん)でこのスクレーパーについて語られていたことに示唆されたからでもある。
2回ほどこれに介入し、思うところを書き込んだのであったが、場所柄十分に伝えるということも叶わず、あらためて考えるところをこちらで記してみたい。
これは日本の歴史と伝統の中に色濃く定着している木に関わる古層の文化に深く関わる問題に繋がることでもあると考えるので、単に技法的なことに留まらない関心領域を持つ。

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くるみ ラウンドテーブル

ラウンドテーブルここ数日お天気も安定していたので、中断していたテーブル天板の加工仕上げが進み完成した。
先に報告したウォールナットのコーヒーテーブル“端ばみ”とほぼ同様の脚部デザインを持つ、ラウンドテーブル。
1.100φの天板サイズなので4人掛けの大きさになるだろうか。

■ くるみラウンドテーブル
■ 1.100φ 700h(天板部:今回は3枚矧ぎ)
■ 本クルミ
■ オイルフィニッシュ(ウレタンオイル)
【構成】
ラウンドテーブルはかなりのボリュームになってしまうので、天板+脚部2枚 の3分割 ノックダウン方式。
ノックダウンは対角線に相対する2本の脚部を貫で接合されたものと、クロスされた吸い付き桟が付加した天板、という構成。
脚部と天板の結合は貫の相欠き部を嵌め合わせた後、専用の金具で行う(*1)
幕板がないのですっきりしていて良いですね。しかもノックダウンとはいえ、構造的な安定度は完璧。
ウォールナットのコーヒーテーブル“端ばみ”で〈反省〉したことはここでも同様(苦笑)
対角線上で視覚的に良いと思われた反り具合もこれをクロスして結合、天板を付けて見ると、そのテリ具合は緩やかになってくるね。(この視覚的な違いは大きい)
それぞれ1脚づつの制作であったが、2種の加工を可能な範囲で並行して進めることで生産性を上げ、コストを押さえると言うこともボクたちのような仕事には必要だ。
なお、脚部の断面だが、内側は大きな角面、外側は蟇股(カエルマタ)形繰りにした。それぞれの稜線は崩さないようにするのがポイント。

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*1 :吸い付き桟に埋め込まれた雌部と脚部頂部に埋め込まれた雄部を嵌め合わせ、六角スパナで締める、という簡単なもの。緊結度は比較的高く信頼性は高い。
(レッグジョイント /野口ハードウェア

コーヒーテーブル(HASHIBAMI)

端ばみ
今日は夏至。
一昨日19日はとんでもない陽気だった。それまでの雨があがったのは幸いであったのだが、一転乾燥した大気に取り囲まれた。湿度計の針は40%の下を指している。
こんな状況では木はめちゃ動いてしまう。(画像の1部、ピーカンの太陽が写り込んでる)
でもしがない木工家はぶつくさ云いながらも仕事に励む。
先日来制作していたテーブルの1台が完成。
もう1台はメチャ乾燥問題で、作業中断。
【仕様】
■ THE 端嵌(ハシバミ)なんちゃって。コーヒーテーブルだ。
■ 材種 ブラックウォールナット
■ 寸法 850 × 850 × 700 mm
■ 仕上げ オイルフィニッシュ
名称は天板の構成そのものを表しただけ。
450mm幅ほどの良材を本核(ホンザネ)で合わせ、これを共木で端嵌して天板を構成。
前回エントリー記事内画像にあったように円弧のデザインのクロスした貫で固めた4本の脚部、その頂部に施した2枚ホゾを天板部端嵌に指す。
このような端嵌で構成するというのはめったにはやらない。今回幕板無しにすっきりと構成したいと思い、このようなデザイン、構造にした。
ここでテーブルなどの端嵌の考え方について記してみたい。
今回のように2枚の板で構成するテーブルTopなどの場合では端嵌は外側1/3位までのほぞ部分にはボンドを与えるが、中央部、および剥ぎ部分にはボンドは与えない。
これは環境変化による板の伸張、収縮を中央部に逃げさせ、外側の接合部位は固定させ影響を及ばさないと云う考えによるもの。
端嵌のほぞは40mmほど入れた(分割で)ので効いてくれるだろう。
ほぞもう1つの注意点は接合部の面処理について。
基本的には面一(ツライチ or サスリ、などと呼称)にするが、この接合部位にはあえて面を施す、ということが重要だろう。
伸張、収縮が起きるということが前提にされた仕口であるので、あらかじめこれを想定したところで納めねばならない。
指物的な仕口においては、木口側のハシバミを見付側から見えないように内部に施す、という手法を取ることが一般的だが、このようなテーブルにおいてはそのようなことはしない。
面は今回は0.5分(=1.5mm)ほどの角面を取っている。ハシバミ部位、および矧ぎ部位も同様。
優れた木工をする人には、こうした「逃げ」を忌避する傾向があるのかもしれない。板の接合部をガッチリ固めてしまっているがために収縮によって切れてしまっているところを見かけることは屡々。こんなところはあらかじめ本核(ホンザネ)で納め、面を取っておくことで、切れても決して見栄えが悪くなるということはなくなる、という手法を取るべきだろう。
全体的なデザイン、バランスとしては脚部の傾斜角度がもう少し欲しかった。
貫はやや重たく感じるので、もう少し細身にすべきか。
              画像下は天板、端嵌部位と脚部ホゾ

工房取材の雑誌発刊

雑誌以前触れた雑誌メディアの取材による掲載雑誌が発刊されたようで、出版社から贈呈本が送られてきた。
◆『WOODY STYLE週末工房 No.5
誠文堂新光社
「Studio Furniture / 家具工房」というコーナーでの紹介。
5頁にわたる記事で、過去に他の雑誌の取材でも訪問いただいた編集人による記事なので、弊工房を昔から良く知悉したところから編集されたもので内容的にもとても良い紹介記事になっていた。
画像は雑誌著作権の問題もあるだろうと思い、サイズを小さく、イメージだけ。
どうぞ書店で手にとってご覧いただきたいと思う。
この号では同じコーナーで「小島伸吾」さんの紹介記事も来ていたので、いささか臆しないわけでもないし晴れがましいものもあるね。
このような木工関連雑誌では他にどのようなものがあるかは詳しく承知していない。
以前には他の複数の雑誌があったように思うが出版業界の浮沈、購読者数の頭打ち、趣味投資のIT関連分野への集中、などいくつもの難題を抱えながらの出版活動と感じられるが、ぜひ継続出版を願いたいところだ。
本誌では宮本良平さんによる「アマチュアのための工房つくり」という連載記事もあるので、これから趣味で木工を始めたいという人には有益だろう。
ボクの記事などは、しかし果たしてどれだけ有益なのだろうか?(少し首を傾げてみる)
日本には良質な関連雑誌が無いと嘆くのは良く耳に届くところだが、考えてみればそれもボクたち木工家の社会的地位の反映でもあるだろうから、天に唾するようなものかもしれない。
ともに盛り上げていこうという姿勢が肝要だね。

職業としての家具作りについて(10)

「家具工房」という生き方について

幸せで豊かな人生を送りたいと思うのは人として誰しも共通の願いだ。
しかし「幸せ」も、「豊かな人生」もその基準はとても茫漠なもので人によっても、考え方によっても様々だろう。

「家具工房」という生き方はそうしたあいまいなものというよりも、より明確な基準として考えてみたとしても十分に魅力的な生き方ではないだろうか。

確かに拝金主義が全盛の世の中にあって、経済的見返りの少ない「家具工房」という生き方は一般的評価においては社会的に低い地位に位置づけられるものかもしれない。
しかし金銭的な欲望などに人生のほとんどを費やすなどということが果たして「幸せ」で「豊かな人生」なのだろうか。逆にそのことの追求途上で失うものは少なくないかもしれない。

ライブドアの堀江貴文、あるいは村上ファンドの村上世彰のような巨万の富を手にした成功者がついに塀の内側に捕らえられことを指すだけではない。彼らのような「金融界の寵児」であれば極限的なところへまで金儲けに走るのは戦略的な裏付けと強い意志とを持つ志向的な人生の過程での破綻だったわけで、自業自得的な側面があるが、市井の人々の金銭的追求などかわいいもので、額に汗しながら日々の生活を維持するための労働に身をやつすというのがごく一般的な姿だろう。昨今では以前のように年齢と共に所得が自然増する高度成長の時代とはうって変わり、大企業の労働者ではあってもボクたちの世代ではもはや昇給も頭打ちで、家事専業だった妻たちもパート労働に出なければ持ち家住宅購入のローンも払えないという状態だ。
このような労働と生活を支配する経済環境の激変の時代にあって、生き方そのものが問われてきているように感じるのはボク一人だけではないだろう。

この課題を詳しく解き明かすのは本稿の領域を越えることなのでまずは留保したいと思うが、「家具工房」という生き方、工芸を生業とする生活は、これまでのそうした現代的な消費経済生活のある種の限界というものを措定した上で、「可能性の開かれた生き方」であることを提示したいと思う。
いわば消費経済生活万能社会というものに主軸を置くのではなく、もの作りの本質を日々追求することを通した本来の人間らしい生活の獲得という道筋のことである。

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梅雨空を仰ぎ見る

当地域では昨夜は豪雨。皆さんのところではどうだったでしょう。被害がないことを願います。
時節柄このような雨も仕方ないところ。
しかし木工という業務になれば、いくつもの制約の発生に頭を悩ませる。あれもできない、これも止めておこう。
加工工程で出来ることといえば湿潤な環境にも影響されにくい框ものの加工ぐらいだろうか。
仕事を終えれば、全ての機械の定盤部位を合板などで覆い、プレナーなど主要な機械には厚い布団を掛けたりもする。以前これを怠って、一晩で定盤を錆び付かせてしまったことがあった。
先に上げたテーブル2種の制作は天板を除きほぼ加工工程も終わりつつある。晴れてくれればイッキに天板を加工しようと空を仰ぐ日々だ。
アジサイ1庭の萼紫陽花の花が満開近い。以前もこのBlogで画像を添付したが、実はあの時は本当の花の方は蕾だった。
あらためて咲ききったところで撮影したが、しかしやはり蕾の段階の方が綺麗だね。


アジサイ2ところで紫陽花の花の色は土壌のPHで決まるとの説があるが、信憑性としては如何なのだろうか。ほぼ同じところに植えてある同種の紫陽花が全く異なる色であったりすることも多いが、どのように説明が付くのか?
やはり遺伝的なものではないのだろうか。

脚新たなデザインでのコーヒーテーブルを制作しようと考えている。
構成としては4本脚、幕板なし、シンプルでモダンなもの、という要件でいこうと思う。
そこでまず脚部から木取り、加工。概ね思い描いていたデザインでいけそうだ。
設計はラフスケッチからはじまって3面図で詳細を決定していくのだが、家具という立体造形では、ボリューム感とか、3次元での見え方など図面段階では図ることの出来ない要素があることも事実。
この程度の設計では、いちいち模型を作るなどと云うことはしない。
いきなり良材を木取ってしまうのがボクのやり方。
実はこのデザインは工房 悠の家具としてはユニークなものでもなく、良くあるパターンで、ディテールにいくつか新しいところがあるだけなのだがね。
反り脚、テリ脚、そして稜線を活かした大きな面処理、というのが妙味。
今回はさらに幕板を設けずにダイレクトに天板(端バミ)に接合させようという企みだ。
天板は太鼓型のラインを持った4角形と円形の2種にしようと思う。
完成後、全景を見ていただこうと思う。
仕事は辛いが、このような構想から加工に至る経緯の高揚感は失いたくないものだ。

梅雨入り時季の草花「ムシトリナデシコ」

ムシトリナデシコ1
「ムシトリナデシコ」、ちょっと変な名前の草花。
今、近くの一級河川「大井川」の中州の河原一面を彩っている。
一昨日から梅雨入りした東海地方だが、今朝は晴れ間も覗く曇り空。
朝、家人を駅まで送った帰り、河原に降りての撮影。
2週間ほど前から色鮮やかになってきていたが、梅雨入り後の豪雨で水没する前にと撮影してみた。
遠目に見れば鮮やかな赤色はややケバく見えるので、必ずしも好ましい感じを持っていたわけではないが、画像下のように(クリックで拡大)花弁が判別付くほどの間近に見れば美しい草花だ。
紅色と淡いピンクのものが多いが、白色に近いものもあるようだね。
名称の「ムシトリ」の意だが、決して食虫植物というものではなく粘液を出してこれに虫がくっついてしまうことからの名称のようだ。
欧州南部が原産の帰化植物で、江戸時代に観賞用として入ってきたそうだ。
入梅という季節は爽やかなイメージにはほど遠いが、しかしこの時季ならではの美しい花々も少なくはない。
紫陽花、花菖蒲など。
明日の日曜日は梅雨も一休み。晴れ間も期待できそうなので近くの里山を散策するのも悪くないかもしれない。
さてしかし、さっそく好ゲームが組まれている2006FIFAワールドカップの深夜〜未明のTV観戦如何だが…。
ムシトリナデシコ3ムシトリナデシコ2

家具メーカーにみる経営戦略の苦闘

「大塚家具」「ニトリ」そして新たに進出した「IKEA」と、大規模展開の家具販売が全国的に制覇しつつある中で、国内家具メーカーの経営戦略も苦闘を強いられている。
たまには地元の家具メーカーの展示会へと、いくつかの所用を兼ねて「静岡家具メッセ2006」へ出掛けた。
毎年この時期に開催される産地静岡の最大のイベントだが、ここ数年足を向けることがなかった。
静岡家具のイメージは全国的に見た時、残念ながら業界の人間でなければ判然としないのではないかと思う。
企業であればマーケティングリサーチに基づいた商品戦略を展開するのだろうから必然的なことなのかも知れないが、ここ数年は1つのメーカーであっても、猫の目のように毎年のようにコンセプトを変えて出してくるという傾向が見られ、全くそのメーカーの顔というのが見られないということに陥りがちに感じている。何が売れるのか戦略を絞れないままに専属デザイナーの提案に踊らされているということもあるのかも知れない。
このような中堅メーカーが数社に零細企業が乱立。静岡に限らず家具産地というところはいずれも似たような状況かも知れない。
今日はそうした中で意外に好印象を残してくれたのが大手メーカーの1つ。起立木工の商品群であった。

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Lam03の改良は巧くいったのか

lam06e
アームチェアLam03の座の張りが仕上がってきたので、取り付けての掛け心地チェック。
なかなかGood ! ですよ。
この機会に工房前で撮影。
改良部位は
・間口を少しサイズダウン。
・笠木をややサイズアップ(長さ、高さ)。
・背束のデザイン変更(ストレートを逆台形に)。
・座枠の幅拡大
lam06aこのうち、改良の最大の眼目は剛性の強化。
そのために座枠の幅を拡大することで耐捻れを強くするというものだった。
結果、かなりの強度が出た。またサイズ変更で、バランスも良くなった。
やや低めの座高と、広めの座、書斎などでのパーソナルチェア、あるいはダイニングチェアなどとして幅広く使える。
馬蹄型の畳ズリで接地するので畳上でもOK ! だね。
この畳摺りと座枠をラミネート成形で構成することで、柔らかい曲線を描き、これに前脚をやや傾斜させて結合させ、緊張感のあるフォルムを生み出した。
皮革シートのベースには伸縮性(ストレッチ性)のある素材を使い、少しクッションストロークを確保した。これにより座り心地の高級感が出た。
lam06bとても良い掛け心地だ。しかも綺麗でしょう。
ラミネート加工による成形は強度的な問題を指摘する向きもあるようだが、なかなかどうして最初に設計制作してから3年経過するものの、何らクレームもなく快適に使って頂いているようだ。(無論3年ではとても検証できる単位ではない、せめて30年後ぐらいの単位で確認したいところ)
昨日の名古屋丸善での椅子展にも刺激を受けたので、またあらためて新しい椅子のデザインを考えねばいけないな。


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