工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

CLARO (クラロウォールナット)

CLARO1
写真は2mを越える大きなテーブルです。天板には1枚板のクラロウォールナットという樹種が使われています。
入手しましたのは10年以上も昔のことです。原木に出会ってから製材にいたることについては「工房 悠サイト」の参照)の項にコラムとして記してありますが、写真のものはこの時の製材で最大にして、無欠陥の板です。
木末(上部)の部分、中央に節のように見えるのは、接ぎ木された痕跡ですね。その上部は色調が異なることが視認できると思いますが、これは台木(木元側)とは明らかに細胞が異なることを示しています。
下の写真はその後に入手した原木のほうです。こちらは残念ながら長さがあまりありませんでしたが、しかし太さは1.2mを越え、木味はご覧のように様々な杢を醸し、CLAROの特性を十二分に示してあまりあるものでした。
完全にこのCLAROにいかれてしまったボクはその後数回原木を求めました。今に至るも様々な材種を求め続けてきましたがこのCRALOに勝る材種には出会っていません。
CLARO2


木の魅力というものは、様々な要素に支えられています。
展示場などで、良く「この木は堅いのですか?」と聞かれることがあります。つまり家具材としての堅牢性を問うてきていると思われますが、もちろん堅さというのも家具材としては必須の要件でしょう。
しかし堅さがあっても、脆く、ねばりの無い木も少なくありません。
またあまり堅いものは鉋の刃がたたないものもあり、つまり加工性に難があるということになります。
ブラックウォールナットは気乾比重は0.63ほどです。広葉樹のなかでは中庸かあるいはやや重い部類です。しかしこの木はあまたある材種のなかにあって最も靱性が高いものです。つまり脆さが無く、粘りがあるということです。
銃床に用いられるのはほとんどがブラックウォールナットであるということはこの靱性の高さによるのです。
また美的価値ということでは人それぞれ好みの要素は異なりますが、その色調、決して単一ではない色調、チョコレート色〜赤紫色までの様々に絡む色調は人々を魅了して止まないものです。
またボクたち木工家の特権として、この木の特性を最も深いところで知り得ることができます。鉋やノミを入れることができるからです。
刃物を入れることによってはじめてこの木が決して堅すぎず、ねばりがあり、均質で、緻密な細胞をしていることが身を以て体得することができます。ほれぼれして頬ずりしたくなってきます。
オッと、ここはCLAROについてのお話しでした。
CLAROは上述したこのブラックウォールナットの特質をさらに高度なところで示してくれるのです。ブラックウォールナットの特質を全て満たしてなおそれに加えて、ということになります。
2つは似て非なるものと言っても過言でないかもしれません。
単に見た目の違いだけではありません。
鉋を当てるとしっとりとねっとりと刃に絡みついてきます。これ以上考えられないくらいの緻密さを持っています。
板面には様々な杢(縮み杢、玉杢、コブ杢[burl]、など)がありますが、これらも切削作業でも決して欠けることなくしっかりと刃物についてきてくれます。
このあたりのことはボクの稚拙なテキストとして記してしまうと気の抜けたビールみたいなものでしかありません。どうぞご自身で求めて加工してみてください。
うちにきて「木っ端を分けてくれ」といっても応じません。捨てるところがないからです。お宝ですもの。
ただちょっと高価な材種ですので、ボクの力ではなかなか売り切ることも叶わず数枚まだ残ってます。
しかし、Webサイトの検索で探している人もいまして、東京からその日に東名高速を飛ばして見に来てくれ買い上げてくれた人もいます。
ところで最近あるWebサイトでこのCLAROに関する解説を見ましたが、何とボクの記述とほとんど同じであることに驚きました。
このサイトはボクのWebへの記述よりはるかに後に構築されたサイトです。
日本のサイトでこの材種について詳しく触れた記述はあまり無いので、参考にされたのでしょうか。一言断っていただければ快く同意したのですが、何やら気分良いものではありませんね。
下に引用します。
あるサイトから

ブラックウォールナットの亜種であり、主な産地は北米西海岸。幼木の頃に、北米産のブラックウォールナットに西欧のウォールナットを接ぎ木したもので、樹高は低く、大径木にはあまりならない木です。その性質は、最高級と言われるブラックウォールナット以上に粘りがあり、きめが細かく、耐久性に優れます。色調はとても複雑で多くの色が絡み、独特の木味を醸し出します。また、幹には大きな瘤(burl)とを作り、製材したとき綺麗な瘤杢が現れます。
クラロウォールナットは入手困難で大変貴重な材種であり、高価なため、その多くは突き板や合板にされ、家具や高級車の内装などに用いられます。

「工房 悠」サイトから

ブラックウォールナットの亜種だが大変貴重な材種。主に北米西海岸に産する。幼木の頃、米国産ブラックウォールナットに西欧のウォールナットを接ぎ木したもの。(その痕跡が板上にくっきり残っている)
性質もブラックウォールナット以上に粘りがありきめが細かく、色調もとても複雑で多くの色が絡む。そのほとんどにちぢみ杢、こぶ杢などのさまざまな杢をかもす。入手困難で高価なためそのほとんどは突き板、合板にされ高級家具となるが、私の場合は丸太原木を入手し厚板、一枚板に製材している。

   *緑色文字は全く同じ語彙、表現
      語彙の用いかた、表現のクセ、など…。

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  • クラロ板に余裕ありとの事、是非お譲りいただきたい。サイズ価格等の条件をお知らせいただきたい。貴方の気の変わらないうちにご返事いただければ幸いです。
    2005/12/8  杉  源嗣

  • 杉 さま
    大変申し訳ありません。
    このエントリー記事は4月ですが、その後この記事のTop画像にあるものが2台売れまして、既に1台は納品。もう1台は数日前から削り始めたところでした。
    実は同じ原木からのものが、もう1枚ありますが、材木として売る積もりは全くございません。
    テーブルなり、何なり、製品として完成させて販売するものです。
    お望みでしたらもちろん製作いたします。
    なお、形状の異なるものでしたら、まだ数枚残っています。
    詳細情報必要でしたら、別途、メール、あるいはお電話でお問い合わせください。
    なお添付されたメルアドは正しくないようです(文字化けします)ので、ここで回答させていただきました。
    ありがとうございました。

  • お返事を待っていましたが今日までこのページに解答が出ていることを知らずに失礼いたしました。貴方からの返事はいただけないものと思い込み、直接カリフォルニアに発注いたしました。第一便はすでに手元に届き、第二便の荷待ちの状態です。ご心配をかけました件、お詫びいたします。
    確かに貴方が記載されている様にかなり小さな細工(複雑)な工作にも木がついてきてくれますね、私はもっぱら趣味で工作をしており、箱物を中心に作っています。貴方に商品の発注をというより、下手は下手なりに自作して楽しんでおります。どうかご理解いただけましたら幸いです。
    2006/1/10 杉  源嗣

  • 杉 さま 行き違いがあったようで申し訳ありませんでした。
    直輸入されたそうで、何よりです。
    どのようなCLAROウォールナットであったのか興味ありますね〜。
    どうぞ楽しんで製作してください。
    なお繰り返しで恐縮ですが、メルアドは半角で入力するようになさってください。
    これは当ブログに限らず、IT社会共通のルールになります。

  • たびたび登場してすみません。
    貴ブログを拝見しているうちにウオールナットも使ってみたいと
    思うようになりました。
    ただ木工房から材料を買おうとは思いませんので安心してください。
    クラロは私などには手の出ない値段だと思いますので通常のブラック
    ウオールナットの話だと思ってください。
    一枚板で天板にするようなものは別にして貴工房で購入するウオールナットの丸太はどの程度の径のものですか?
    逆にいえばどの程度の径があれば使える質の材が取れるものでしょうか?
    作るものは椅子や箱物だと思ってください。
    経験上の話でも教えていただけるとありがたいです。
    INTELMAC出ましたね。6月ごろと思っていましたので早かったです。
    350MHZの初代G4をまだ使っていますのでMAC MINIのINTEL版でも
    出れば換えたいと思っています。

  • acanthogoblusさん
    現在 ウォールナットという材種の市場に於ける流通は様々ですが、大きくわけて3つほどになります。
    1,原木を材木市で入手(直接、あるいは業者を通して)
    2,この原木から国内において製材、乾燥後、板材として流通
    3,米国本国で製材、乾燥後、板材として輸入、販売されるもの
    ということになります。
    それぞれの特徴がありますが、ここでは詳細な記述は無理ですね。
    質問の範囲で回答しますと、1,2,の材木の径は30cm〜70cm。
    3,は丸ッ挽き,耳スリ、限らず15cm〜30cm,といったところでしょう。因みに厚みは1"〜10/4"ぐらい。
    3,は概して若い木です。
    さて重要なことを記さねばなりません。3,は乾燥材であることを書きましたが、この乾燥過程で人為的な操作が行われます。若い木ですので、当然白太が多い。他の材種と比較してウォールナットは白太はまずい。そこで歩留まりを良くするために、赤身から白太に色を移すのです。そのため白太も使えるようになりますが、良いことばかりではありません。残念ながら赤身部分にあった本来の色調は消失してしまいます。
    輸入される製品(乾燥材)のほとんどはそうしたものとお考えください。(業者ごとの差異はもちろんありますが)
    Intelプロセッサーへの全面移行はこの夏までにはほとんど完了するのではないでしょうか。ボクもこの隣→のAppleアフィリエイトボタンをプチッしちゃいそうな誘惑と闘っています。

  • 有益な情報ありがとうございます。
    以前、大阪の材木店の方からサクラ材を茹でるとか煮るとかして
    辺材を赤くして売る所があるという話は聞いたことがありますが
    輸入材でも似たようなことが日常行われているとは驚きです。
    ウォールナットは貴ブログでも記載があったように人工乾燥による
    退色があるようなので丸太で購入製材して気長に天然乾燥するのが良いのかもしれません。
    ただ、辺材が多いと歩留まりが極端に悪くなりそうですね。

  • 追記させていただきます。
    最近知ったことですが、ブラックウォールナットの入手ルートとして、最近注目されているのが、何と中国からだということなのですね。
    意外でしょう。しかしここにも 中国経済のめざましい飛躍的な発展ぶりを見る思いです。
    かなりのボリュウムで米国から中国へ渡っているようです。
    したがって中国で製材されたものが日本へと輸入されるルート(日本の業者が中国へ買い付けに行く)が開拓されているのです。

  • ウォールナットを人工乾燥の過程で赤身から白太へ色を移す操作が行なわれているとは知りませんでした。
    artisanさんが 「ウォールナットは丸太を製材して自然乾燥」 にこだわる理由のひとつはそこにあったのですね。
    そしてそれは、私を含め家具制作に携る者の大多数がウォールナットの本当の色艶を知らないのだということになりますね。
    なんだかちょっとショックです。

  • この問題 ↑ は意外と材木業者も良く理解していないということもあるようです。
    そうしたところから購入するのはアブナイですよね。
    なお、価格も大きく異なります。
    現地製材、乾燥、製品の方はウォールナットとは言っても意外と安価です。
    数倍の価格差があると考えられます。
    良く知っていないと騙されますよ〜。
    過去記事http://www.koubou-yuh.com/information/monologue.main02.html#Anchor-35882

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