工場では普段音楽を流しているが、番組によってはNHKラジオをかけることも多い。
この夏休みの時期、「夏休み こども 科学電話相談」という毎年恒例の人気番組を聴くことがある。
超長寿番組なのでご存じの方も多いだろう。
珍問、難問が飛び交い、楽しく、刺激的でもある番組だ。
好んで聴くのは自身がこどものようなものだし（やっぱり、そうか、などと言ってる御仁はどなた？）、この番組は程良いお勉強になるからだが（笑）…、
サビついた頭には適度な刺激が与えられ、こどもの質問内容の意外性と、各分野の専門家の回答は大いに楽しめる。
こどもの科学に関する質問など、たわいないものと侮るなかれ。
昔こどもだった頃には、今とは違い世界はたいそう狭いものでしかなかったかもしれないが、その狭い世界での事象全てが感動的で、希望と夢に胸膨らませたものだったろうし、不思議なことばかりの科学に興味が湧き、これらの謎を解明されたときのときめきと感動は大いに少年の頭脳を活性化させたものであったろう。
長じて大人になり、その世界は拡がり、さまざまなことへの洞察力も高まったかも知れない。しかしその頭脳にも、いつのまにかつまらないジャンク情報ばかりが張り付き、加齢に伴う劣化も手伝い、ボロボロだ。
さらには大人の常識とやらが事の本質を問うことを妨げたり、俗説を信じ込んでいたり、知ったかぶりのつまらないおやじになってしまってるのではないか。

そうしたオトナに張り付いた属性を取り払い、こどもの心性と好奇心を取り戻すことが出来たなら（そんなことは無理な話だが）、世界はもっと違って見えてくるだろうし、老いた精神も輝き始め、未来を信じることに恥じることも無くなるかも知れないではないか。
また回答者の答え方もとても興味深いものがある。
こどもからの質問への回答は、こんなことは常識のことだろうから…、共通認識があるだろうから…、といった前提はあらかじめ排除されねばならない。
まさにこどもの質問だから、ということではぐらかすことも出来なければ、日々おかあさんが、お父さんが、「今忙しいから、また今度…」とか「学校の先生に聞きなさい」という避難も許されない。
真っ向勝負、ガチンコで回答せねばならない。
如何にかみ砕いて、本質から逃げることなく、正しく導くことが出来るかどうかは、その先生たちの真の意味での豊富な知力、理解力、指導力というものが問われる。
聴いていて、すばらしい回答を与えることも多いが、時として、もっと適切な回答があるではないか、と思わされたり、あるいはまたこどもの質問の本旨からはずれた回答でこどもを落胆させることもある。
長年、毎年のように断片的であるけど聴いているが、こどもの世界は社会の変貌に晒されながらも、それほどには変容していないのかなと思うことで安心することもある。また日本人としての特性のひとつだろうが、まだまだコミュニケーションの力、自己表現の力が他国のこどもと比しても貧しいのではと思うことも多い。もちろん大人顔負けの自己表現力、質問内容の専門的なことには驚かされることもしばしばだ。
現代日本社会でこどもがこどもらしく、伸び伸びと育つための環境はむしろ貧しくなっているという現状もあるだろうし、学力低下が叫ばれてもいる。青少年犯罪が社会問題に躍り出ることもしばしばだ。
これらは全て大人社会の反映であり、こども達は被害者であろう。
こどもは大人社会でに存分に庇護され、愛情に包まれ、またひとりの自立した個人として生きる権利と、学ぶ権利を保証してやるのが近代社会、民主主義社会の基本だろう。
この電話相談でこどもらしい質問に励まされたり胸熱くなったりさせられ、さびついたオトナの心性と頭脳も少しだけリフレッシュされた番組だった。
■ 番組サイト（参照）
■ Topイメージ画像はフリー写真素材より

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