工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

「納まり」とは

鉋1昨日に続いて「花台」仕上げ、組み立て工程を。
【角面取り】
昨日も記した角面取りだが、鉋は専用のものがある。
鉋2近年に道具市場ではその多くは刃口幅の調整を真鍮などの金属スクリューで行うタイプがほとんどのようだが、ここはぜひ昔ながらの木のスクリューのものを探して求めたいところだ。(画像1:木スクリュー、画像2:金属スクリュー)
理由:金属スクリューのものは調整部分が2個所になり、またその回転ピッチは小さく、使用感はとても悪い。
比して、木のスクリューの方は、ピッチが大きく、微妙な調整も木ノブの位置で確認できるなど、その使用感はすこぶる良いのだ。
近代化がもたらした恩恵は道具の世界でも少なくないが、ここでは逆に使い勝手の悪い道具として劣悪化の方向を辿っている。
道具屋の開発者のために言い訳を代弁すれば、所詮大工道具などの需要は限られていて、現在の金属スクリューの問題を解決して、より使いやすいものに改良するほどの余力などありはしない、というところだろうか。


少し余談ながら、うちのワークベンチ(作業台)はスカンジナビアン スタイルのものを自作、使用しているが、スクリュー ハードウェア部はもちろん鋼材だ。
しかし、J・クレノフなどの著作紙上に見られるそれは太い木のスクリューになっていることに気づかれた人も多いと思う。(参考
このワークベンチはスエーデンの工房で製作しているものだ。同じものを試用させていただいたことがあったが、すこぶるその締め具合は良かった。ピッチが大きいということ。そして木であることでのかすかな弾力性が、被加工材の木に合っているのだろう。
【角面、サンディング仕上げ補助ジグ】
納まり3角面取り部へのサンディング作業は写真のような補助ブロックを作り、ここにサンドペーパーを両面テープなどで貼ることで、研削工程の生産性とともに、精度が高まる(正確に角面部分に当たることで角度が崩れず、エッジもだれない。(実はこれ、10年近く前にもなろうか『Fine Woodworking』誌に紹介されていたものだ)(画像3)(参考
紹介記事では片面だけだったが、ボクはブロック両面に#180、および#320 の2種のサンドペーパーを貼り付けて荒仕上げ、上仕上げ、両工程をカバーさせるようにしている。
ぜひお試しあれ。
【加工一般における注意 「納まり」について】
納まり4それぞれの部品の木取りの厚さだが、柱の1分角面からそれぞれ、面の大きさ分+α薄く木取っていることが見て取れると思う(面チリ、と呼称する)。こうした「納まり」と言われるところはとても重要。鈍くさく見えるも、美しく見えるも、この「納まり」が大きく影響する。(画像 4,5,6)
一方「面チリ」に対し「ツライチ(面一)」あるいは「さすり」と呼称される平滑な仕上げは、例え精度高く加工し組み上げても必ず微妙に差異が出るもので、その後鉋などで精度正しく平滑に仕上げねばならないという工程が必要となってくる。
納まり5この「面チリ」での「納まり」は、そうした組み上げた後の工程が省かれることで生産性が上がるだけでなく、せっかく部品段階で精度高く仕上げたところをその後の研削工程などでいじることで仕上げ精度を悪化させることもなくなる。
納まり6これはもちろん、全ての仕口をそのようにすべきというものではない。それぞれの設計仕様、デザインに応じて、双方を合目的的に選択活用しようと言うことだ。(「納まり」をキレイにするためには、どちらを選択すれば良いか、よ〜く考えよう)
また加工工程においても無意味に煩雑な木取り(厚み、幅、などが多様に過ぎる)、仕口の無意味な多様さ、なども加工工程の煩雑さをもたらすだけでなく、「納まり」においても無理が生じたり、キレイでなくなる結果をもたらしたりするので、要注意だろう。
言い換えれば、良い仕事をする要諦の1つとして、仕口を中心とする加工技法をしっかり備え、経験を積み、合目的的な設計方針をうち立てることで、「納まり」の良い、美しい仕事が出来るだろうし、結果、生産性も上がり、コストダウンも出来る、といったことに繋がるということだ。
さて、肝心の仕上がりだが、客からの希望仕様に基づいて制作したものの、出来が悪いわけではないけれど、どうもしっくりこない感じがするね。
デザイン的に見たとき、フロアスタンドにおいては格子が効いていたのだが、今回はややうるさい感じがする。
スクリーン的な使い方を意図すれば効用はあるだろうと思う。
 
今日は台風も去り、秋の好日、快適に仕事がはかどった(それにしても雨の多い10月だね)。
久々にプレスを使ったのだけれど、不注意で頭蓋骨を思いっきりプレスに叩きつけてしまった(降りてきたプレス天板が丁度頭の位置だった)。鉄の塊とガチンコしても勝てるわけがない。しばらくすると漫画に良く描かれるような大きなコブが出来ていた。今は痛みはほとんどないものの、これ以上アホになると困るので今後は帽子の着用を怠らないようにするなど注意しよう。
面チリ、面一、および納まりについてもう少し記述したいことがあるが、あらためて…。

《関連すると思われる記事》

                   
    

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.