工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

黄砂襲来と、笑っちゃう手押し鉋盤

RENNGE
何やら遠い大陸からやってきた黄砂の襲来とともに春への歩みが加速しているようだ。
彼岸入りとともに、一気に春の陽気。
大阪へと走らせるために早起きした昨日早朝、陽の光は光源がそこにあることを教えてはいるものの、その輝きは全く判然としない、ぼんやりと拡散する朝の光の放列は、今年初めての黄砂による現象だった。
しかしそれも西へ西へと走らせるうちに太陽の明るさは増し、黄砂による視野障害も気にならなくなっていった。
大阪での仕事を済ませ、往復700kmの走破を終えての深夜の帰宅だったが、良い知らせのメールが受信トレイにあった。
PowerMac G5の修理完了、返却手続きの知らせだった。
(先月末に襲ったトラブルだが、その後2個のCPUを交換修理するも、不具合は解消せず、改めてこの月曜日に入院手続きしたところだった)
修理報告には、プロセッサーの再度の交換を実施したことが記されていたが、果たして……。
この2月から今月に掛けて公私にわたり疎ましい案件が相次ぎ、精神衛生上、はなはだしくよろしくない状態が続いていた。当然にも本業にも支障をきたすほどのもの。
でもこれらも春の到来と共にほぼ解決を見つつあり、平穏な日々が戻りつつあることはとてもありがたいことと感謝している(敬虔さというものを獲得してこなかったボクのような者にとって、一体何に感謝するのか?)
Macトラブルもそうだが、倉庫移設問題も9割方終えた。
残るは手押し鉋盤の修理。


以前このBlogでも取り上げた件だが、前後のテーブルにねじれがあり、様々に調整を試みるも、結局微小なねじれは解消せず。
仕方なく、専門業者の手を借り研磨することで、平面性を確保することにした。
これを機械屋に依頼したのは昨年12月はじめの頃で、あまり影響のない1月冒頭にやってしまおう、ということになっていたが、機械屋の都合で延び延びになり、実際に機械を引き上げたのは先週末のこと。
そこで機械屋も研磨修理期間、手押し鉋盤が無いのは困るだろうと、あるメーカーの300mm幅のものを貸与、設置していってくれた。
ありがたいね。これもまた感謝せねばいけないね。
手押し鉋盤と、ところが……、
もう数日もすれば研磨され捻れが修復された状態で戻ってくるだろうからそれまでの辛抱さ。
早くしてくれ〜。
おやおや、代替の機械があるのに何故急ぐのか。
この貸与された機械、とても家具職人がまともに使える代物じゃないことを教えられたからだ。
全くと言って良い削りが出来ない。
逆目が止まらない。削りのフィーリングが重い。削り肌が悪い。
Iという名の通ったメーカーのそれなりの製品であるようだが、現在修理に出しているこれまで20数年間使い続けてきた「大洋製作所」のものとその品質は雲泥の差だ。
これほどメーカーによる削り品質の差異があるとは思いもよらなかったぜ。
「大洋製作所」製作による木工機械は業界では決して一流ではなく、桑原などの後塵を拝するメーカーである。
比して、このIの品質はいわゆる建築、大工さん向けのものという概念は当初からあったものの、これほどに悪いとは思わなかった。
品質の悪さはどこにあるのか、恐らくは機械製造における全ての項目、つまり部品、機械構造、機械精度、製造管理、などに及ぶものと思われる。
大体、鉋胴も一回り細いしね。裏刃の設定もめちゃ甘そう。
テーブル昇降のシステムもハンドルではなく、バーだもんね。細かい調整など考えられていないようだ。
“怒ると言うよりも笑っちゃう。”
あごが外れる前に、戻ってきてね、「大洋製の手押し」ちゃん。
そんなこんなで、疎ましい年度末・3月になってしまっているが、嗚呼‥これもまた人生か……。
*画像
・上:近くの畑のレンゲ草
・下:手押し鉋盤一時交換

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  • I社の手押し、しっかりトラックの脇に写ってるじゃないですか。(笑)
    まあ、I社と言えばこれしかないか。
    artisanさんの機械の評価、とても参考になります。
    日本でも木工機械といえば、ほとんどが建材用で、その中
    から家具に使える精度を有する物を探し出すのは難しそう
    です。
    4月からは良いスタートがきれることを願っております。

  • acanthogobiusさん、
    >機械の評価、とても参考になります
    いやいや、使用感を書き散らかしただけですので、そのように受け止められますと、面はゆい。
    実は今日、研磨し終わった機械が戻ってきました。
    本Blogを機械屋スタッフに見せたところ、苦笑いしながら言いました。
    「家具屋が使えるのは桑原と、大洋、そして服部くらいでしょうか、後は皆これと似たようなもの」
    なのだそうです。
    やや誇張も含むものでしょうが、実際使い較べると良く分かるものですね。
    勉強になりました。
    なお、研磨後の大洋は完璧な精度が出ていましたので、大いに安堵させられました。
    ありがたや、ありがたや。
    >しっかりトラックの脇に
    そうですかぁ〜

  • こんばんは。
    考えは様々あろうと思いますが、建築、大工云々の行は
    安直な表現に感じられてなりません。
    主張も過ぎると中傷になりはしないでしょうか。

  • しろうと さん(何か、こういう呼び方になるのも困りますが)、
    コメント感謝です。
    気に触った物言いであったようで、済まなく思います。
    木工機械メーカーも、対象業種によって、機械精度の品質コントロールをしているというのは事実でしょうね、
    何でもかんでも、桑原のような超一流のものでなければならないというのではありませんので。
    それぞれの仕事で求められる品質に見合う程度の機械を選択するというのが、現実的な判断であろうと思います。(これは当然コスト意識が反映したものです)
    仰るところを敷衍すれば、
    建築業界でも、求める品質は様々だろうと思いますので、その点、一括りにしてしまうのは間違いであることはその通りですね。
    しかし一方、概念として、本文中での物言いのようなことが一般的な了解であることも偽りのないところです。
    そうした前提に立っても、表現には注意せねばならないことは仰るとおりです。
    気を引き締めて参りたいと思います。
    コメントありがとうござました。

  • こんばんは
    いつも覗かせていただいております。
    私はI社の鉋を使用しております。仰るとおりラフな作りの部分も多々あるのですが、それも含めまして気に入っておりました。私はアーツ&クラフツにおいて、精度とダイナミズム(動的ポテンシャル)は反比例すると考えております。器用な我々ニッポン人の作品は往々にして後者が足りない場合が多いのではないでしょうか?我々の文明は過去の歴史を見れば明らかのとおり、幾度と無く変革、破壊を繰り返してきました。そしてこれからもそれは続くでしょう。私なりの結論を急ぎますが、肩の力を抜いて「ちゃちゃっ」と仕事をテキトーにやるのもまた良いものですよ。いずれ壊れるのですから

  • れもんちゃん さん、なかなか含蓄あるコメントを感謝です。
    >精度とダイナミズム(動的ポテンシャル)は反比例する
    >器用な我々ニッポン人の作品は往々にして後者が足りない場合が多い
    ご指摘、分かるような気がします。
    製作精度追求の余り、もの作りの本来の品質追求が疎かになる、という理解はできますが、れもんちゃんの仰るところは、それを越えた何ものかがありそうですね。
    機会がありましたら、詳しくお話ししていただきたいですね。
    >肩の力を抜いて「ちゃちゃっ」と仕事をテキトーにやるのも
    >いずれ壊れる
    秀でた職人的アプローチと、ある種の開き直り、でしょうか。
    なかなか含意がありまする。
    (落合恵子の昔のニックネームはこのハンドル・ネームと同じでしたね)

  • ここでコメント投稿者に感謝の弁を少し‥‥。
    記述内容の甘さ、やや一面的な見解、誤解を招く表現、などへのご指摘、ありがとうございます。
    不見識ながら、こうしたことで普段見えない読者の姿が垣間見られたことはありがたいことです。
    今回のように問題のある記述への指摘でないと頂けないコメントというのも、ネットコミュニケーションの一般的傾向であるとの認識はさておき、そこに留まらず、普段の好感が持てる記事へもフレンドリーなコメントがいただけるように、管理運営者・artisanの記述を心がけるということでしょうね。
    いずれにしましても、ネットの先には多くの読者がいらっしゃるようですので、それに見合う責任を果たすことの重要性をあらためて感じているところです。
    今後も手厳しい叱責、ご指導を願いたいと思います。
    ありがとうございました。

  • こんにちは、
    私も(株)太洋製作所製を使っておりますが、比較がないので、(訓練校で他社製を使っていましたが、記憶にありません)悪さ加減が判りませんが、うたい文句の定盤に吸い付くと言うのは実感できています。

  • 松本さん、コメントありがとうございます。
    同じものでしたか。
    なかなか気に入っているようですね。
    廃業したメーカーのものですので、大事に使っていきたいです。

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