みちのく顧客にいざなわれるままに
覚悟はしていたが、やはり陸奥(みちのく)の新幹線駅を降り立つと既に雨がポツポツと落ちていた。
間もなく強い雨脚になっていったが、ホテルのチェックインを済ませ、そのまま向かった盛岡城跡公園の期待していた枝垂れ桜は濡れそぼり、しとどない姿で迎えてくれていた。
それでも手入れの行き届いた公園の様々な品種の桜は、晴れて満開であれば絢爛豪華な絵巻物であろうと想像するに十分な豪華さだった。
昨年初秋のダイニング周りの調度品の納品後、お茶室周りの調度品制作依頼に応えての再度の納品行となったのだが、Yuhさんは雨男?と、訝れながら、運送屋に託した荷を開梱し、座卓(拭漆栃座卓)をセッティングさせていただき、あるいはまた、板戸の建て付け調整に励むこととなった。
当然にも建具の調整は簡単ではなかったが、1.4寸の平鉋、および際鉋を動員し、小1時間ほどで施主にご満足いただける建て付けとなった。
思いの外、建具の摺動はスムースで、これが大きな安堵をもたらしてくれた。
一般の板戸より、ほぼ倍の厚みのものであれば、やはり摺動の重さを懸念したのだったが、これは杞憂であったようで、他の襖と較べても軽く感じるほどのスムースさで深く胸をなで下ろした。
ありがたいことに、この施主、お客様の特段の配慮で夕食の饗応を得ることとなった。
極上のブルゴーニュワインから始まり、陸中からのウニ、そしてまぐろ、鯛のカルパッチョ、メインの前沢牛のステーキ(南部鉄での鉄板焼き?)と進み、締めはウニのクリーミーなパスタ。
地域の食材を活かした心からのもてなしにお酒とともに話しも弾んだ。
このお若い顧客は普段はとても忙しくされていて、こうしたゆったりとした時間は恐らくはとても貴重な時間であるに違いなく、こうした価値ある時間を共有させていただき、加えて次の家具制作の構想を伺うこととなった。
当方の忙しさは十分理解していただいているので、いつ希望に応えられるのかの根拠もないままに、ありがたくその構想に深く立ち入ることとなった。
しかし考えても見れば、同席してくれたギャラリーオーナーの紹介があってのことで、あらためてこの労にも深く感謝したのだった。
(ここまで下書していたら、突然の地震。TVのSWを押せば、震度3とのこと
この辺りでは良くある程度の震度かな?)
そろそろバスタブに浸かって、酔いが覚める前にベッドに潜り込んだ方が良さそう。
明日は昨秋に納品したテーブルトップのメンテナンス(塗り直し)をしなければならないのだしね。
雨男返上で、ぜひ明日はさわやかな朝日で迎えられたい。