工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

〈 ZDP-189 〉の切り出し

1月は記録的な豪雪、新燃岳噴火・降灰などの自然災害、あるいは鳥インフルエンザの発生などと、2011年も多事多難な船出となっているね。

今日から如月2月。
数日後は節分、そしてその翌日には立春。
この頃になれば、寒さも一段落で、少し気温上昇も期待できるとのこと。
残念ながら冒頭のほとんどの問題は、月をまたぎ持ち越しになっていくのだろうが‥‥。

画像は朝の工房内の光景。
薪ストーブに火が入ると、ブリキのバケツに水を張り、ボンドをジャポンッ。
過度な低温では、全く言うこと利いてくれないからね。

それにしても木工作業において低温はまだしも、すさまじい乾燥が続いているのがはなはだ都合が悪い。
当地域、1月の積算降雨量 ゼロだよ、0.0mm !! 。

サスリで接合したはずのものが数日もするとメチがでてきちゃう。
部材の巾が100mmも超えると、この過剰な乾燥状況では仕方がないか。

抽斗の仕込みも悩ましいね。
あまりタイトに仕込むと、これは間違いなく梅雨時にはウンともスンとも動かなくなるぜ、誓ってもいい(なんか、妙な自信だけれど‥‥)

さて、今日の話題は特殊鋼

先に抽手の加工について取り上げたが、この素材、うちのお宝、ローズウッドを使っている。
親しい銘木屋に、この色目は今ではなかなか手に入らないローズだよ。大事に使わなくちゃね、なぁんて言われて、その後は木取りにもストレス抱えちゃっているわけだが‥‥。

さて、このローズウッド、比重が1近い堅い木だと仕上げもなかなか大変。
サンドペーパーもかなりの番手で追っていかないと本来の木味は出せない。

そんな時、意外にも良く切れる刃物で仕上げることで巧くいくことが多い。
画像は“切り出し”で抽手形状を修正、仕上げしているところ。

ただ、相手は堅木だ。
いわゆる炭素鋼の刃物ではすぐに切れ止む。
ここで使用しているのは《ZDP-189》という鋼材から作られたカスタムメイドのもの。

ZDP-189

〈ZDP-189〉の切れ味


現在、ステンレス鋼系では最高の鋼として評価の高いもの[1]
かなり昔、このBlogで取り上げたこともあったと記憶する。
黒檀、ローズウッドといったような堅い材種の手加工にはもってこいの鋼だね。
とても良い切れ肌に仕上がる。逆目であっても、すいすいなんだ。

この《ZDP-189》、その多くはカスタムナイフとして趣味人のために使われことが多いと聞くが、こうして職人の手に持たせてやるのも、鋼にとっては悪かろうはずはない。

“切り出し”であれば、特に形状とか鞘とか気にしなければ、素材を入手し、ご自身で刃を付けることもできないわけではない。
ただめちゃくちゃ堅い鋼なので簡単ではない。
相応の集中力、根気が求められる。

ボクの場合、たまたま個展会場にいらっしゃったカスタム刃物制作者で木工も得意な人の手によるものをいただくという幸せに浴したのだった。
hr

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❖ 脚注
  1. ZDP-189:日立金属開発の粉末鋼材
    ロックウェル硬度67~68(銀紙1号で59〜61、ハイスで61〜63)
    長切れがし、しかも十分な靭性を有する []
                   
    

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