工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ジュリアン・アサンジと、日本のメディア

WikiLeaks

WikiLeaksサイト


MacモニターではAFCアジアカップ決勝戦、日本 vs オーストラリア戦がキックオフ。
オーストラリアがオセアニアグループからアジアへとグループ替えしたその意図がどうあれ、ぜひともその意図を木っ葉みじんに打ち砕いてもらいたい、とホットな胸を抑えつつ、Blogテキストタイプは冷静にいきたい。

さて今日は先週に引き続いてTEDから1つの講演(ならぬ、インタビュー)をお届けしよう。
読者の中には、既に先週のTEDのビデオから今回貼り付けるコンテンツへとアクセスした方もいらっしゃるかも知れない。
何しろ、今をときめく世界的な“ヒーロー”であるからね。
(なぜだか日本国内のほとんどのメディアは犯罪者扱いなのだけれど‥‥ )

収録日はちょっと旧く昨年の7月であるが、決して古びたコンテンツではない。
さっそくご覧いただこう。
Julian Assange: Why the world needs WikiLeaks(ジュリアン・アサンジ 「なぜ世界にWikiLeaksが必要なのか」) 19:34

先週もご案内したように、動画、枠下の〈View subtitles〉からjapaneseを選択することで邦訳字幕が流れます。



こちらに講演の邦訳があります。

なお、今回の記事を上げるにあたってのネット上でのリサーチから〈asahi.com〉に次のような記事がヒットしたのには、驚きに近いものがあった。(【放送】ペンタゴン文書事件からペンタゴン・ビデオ事件へ

このTEDインタビューの中でも取り上げられていたが、「ウィキリークス」によって公開された、内部告発、機密指定ビデオの1つ、イラク、バクダットでの米軍アパッチヘリからの無差別射撃の一部始終をジャーナリズムの立場から解説したものだ。
これをいち早く取り上げ、高く評価した「デモクラシー・ナウ!」のキャスター・エイミー・グッドマンへのインタビューも敢行している。

国内大手メディアでは数少なくなった気骨あるTV記者の一人、TBSアメリカ総局長・金平茂紀氏の「ジャーナリズム」への寄稿である。

もう一つだけLinkを貼り付けておこう。
「ウィキリークス」創設者ジュリアン・アサンジ氏は現在、微罪、あるいは言いがかりかでっち上げの疑いがある[1] 強姦罪なる容疑で逮捕され、その後世界の多くのリベラリストの支援と、逮捕への抗議[2] により、ロンドンで保釈中の身であるが、彼が出頭のその朝(2010/12/08)に故国オーストラリアの新聞に寄せた記事(の翻訳)である。
翻訳はSATOMI ICHIMURAさん。

また米国内でも多くの支援者の名が挙がっているが、次は高名な学者のノーム・チョムスキーらによる支援表明の文書(「Hongo Political Philosophy」による邦訳)

この一風変わったジャーナリストの逮捕の一件はこうして世界を駆け巡ったわけだが、われらが国内メディアでは‥‥ 元ハッカー、テロリスト、性犯罪者、といったニュアンスでキャンペーンを張ることに熱心でも、「ウィキリークス」のその本質へ迫ろうとする姿勢は見られずじまい。
欧米各国ではおしなべて昨年2010年の重大ニュースの上位にリストしていたようで、その影響力の大きさを示していたが、どうして日本ではこうも強いバイアスが掛かってしまうのだろうか。

考えられるところを2つだけに絞って上げてみよう。
1つは、この「ウィキリークス」が公開している内部告発による機密情報のその多くがアメリカ政府当局公電からのものであること。
政権交代の後に菅政権に替わったことで、〈日米同盟〉はかつてない広さと深さをもって紐帯を強めているようだが、アメリカのポチであれば、当然にもジュリアン・アサンジ氏は「犯罪者」扱いされてしまうということか。

2つめは、1と深く関わるが、主要メディアの今の姿勢について考えれば良く理解できる。
例えば普天間問題をこじらすと米国との関係が悪化するとばかりに沖縄県民を切り捨てる論法。
あるいは米国との関係に一線を画そうとする姿勢を見せる民主党元代表・小沢氏への一方的な断罪に紙面を埋め尽くす編集方針で貫かれているようだね。

これらに明らかなように、権力を監視するというジャーナリズムの基本姿勢をかなぐり捨て、既得権益者よろしく権力ににじり寄り、政局を焚きつけることはしても、日本の未来を共に切り拓くための政治経済、社会の再構築へ向けて論陣を張るということは全くできていないじゃん。

だいたい、あのイラク戦争を世界に先んじ手を挙げて支持し、自衛隊を派遣しておきながら、その後、当事者ブッシュさえ、あれは間違った情報からはじめてしまった戦争だった、との全く不十分ながらも総括をしているのに、直接的な責任者・小泉元首相はもはや過去の人だから何も期待はしないけれど、日本政府当局者はこれまで全く反省の姿勢など見せないどころか、ブッシュ支持、およびその結果への一連の過程の検証は何一つとして行われていない。
またメディアのほとんどもそれを追求しようという姿勢が見えない。
健忘症もここまでくると、ほとんど病的。

およそ第二次世界大戦の敗北後も、「一億総懺悔」というわけのわからない責任回避でその責任の所在をあやふやにしてしまう心性と、全く同一の地平を歩んでいるだけなんだな。

大手メディアも、ネット社会の成熟による既製メディアの影響力の低下の中で、既得権益を守ることに汲々としているばかりで、「ウィキリークス」のようなネットジャーナリズムは謂わば天敵としか見られないのだろうか。

欧米の主要メディアでは「ウィキリークス」の情報を得て、共同して、漏洩された機密情報のウラを取るという姿勢を見せ、独自の分析、公開もしているのにである。

恐らくはこのような姿勢では「ウィキリークス」が掴んでいる日本関連の情報は国内大手メディアには届けられないだろうね。
肝心なところはどうせ報じやしないのだから。

(わずかながら救いがないわけではないよ。「東京新聞」にはまだまだ気骨のある記者がいる。例えば「菅首相きょう外交の大方針発表 米国追従いよいよ鮮明に」(「東京新聞」の「こちら特報部」から「米が望んだ菅首相?--漏えい公電”お墨付き”裏付け」)[3]

《関連すると思われる記事》


❖ 脚注
  1. 同意による性交渉だったが、コンドームを着けなかった、あるいは穴が空いていたとの疑い []
  2. 性犯罪へはこれまで舌鋒鋭く告発してきたフェミニスト・ナオミ・ウルフやナオミ・クラインなども、この逮捕劇を批判している(参照:HPP BLOG – チョムスキー、ピーター・シンガー、ウィキリークスのアサンジへの支援を表明(翻訳)) []
  3. Web「東京新聞」は一部掲載だけなのだが、全文を起こしてくれたBlogがこちら(辺野古浜通信) []
                   
    

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