工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

千切り(ちぎり)による結合

千切り1
ある円弧状の部品を制作する場合、繊維方向に直行する木目が出てしまうことがあります。これでは割裂、破損してしまいますね。
そこで、これをいくつかのパーツに分け、接着結合させることで解決させるという方法を取ることも少なくありません。
今回の「千切り止め」という手法は最も強度の高い緊結方法と言えます。
今回の千切り止めは、「鼓(つつみ)」、とか「アレー型=職人は<おしゃぶり>などとも言います」と称される方法です。
他にも似たような「蟻型の千切り」というものもあります。これは天板などの割れ止めなどに多く見られるものですのでご存じの方も多いでしょう。
しかし鼓の方は見ることは少ないでしょう。何故ならあまり見付(正面など見えやすいところ)などには用いられず、裏、陰などで使われるからです。
今回もミュージックスタンド(譜面台)の脚部(畳摺り)の結合ですので、裏側に施しました。


簡単に作成プロセスを記述します。千切り2

  1. まず緊結させる部材に墨付け。丸い頭部の芯にセンターポンチ。
  2. 頭部のボーリング(部材の厚みの2/3ほどの深さ)。径はケースバイケース(接着面積に相応させて)
  3. 2つの頭部を結ぶための小穴を穿つ(頭部のセンターにジャスト合わせて)。小穴の幅は頭部の径の1/3ほど。ルーターマシーン、カッターなどで。
  4. 次は千切りですが、材種はねばりがあり靱性の高いもの(メープル、樺、カシなど)が良い。
  5. 必要な幅、厚みに木取る(この際、メスより絶対に大きく木取ってはならない。0.3mmほど小さめに木取るのが緊結度を高めるコツ。大きくすると接着面が吸い付いてくれない)
  6. 次に中間部をカッターなどで落とす(この部分もあまりタイトに厚みを残そうとするのではなく、やや薄目(ー 0.1mm)に残すこと。タイトにすることは悪いことではないが、そのことで打ち込みが望むようにいかないことになりかねない。
  7. 頭部の成形は坊主面取りカッターがあれば全て機械加工で完了する。外側は上下2回の成形加工で問題ないし、中間部側もカッターを大きく傾斜させることで完璧に中間部を残しながら円弧成型が出来る。

これで全てOK !
千切り3
おっと、1つご注意を。
木取りですが、繊維方向を間違わないようにしてくださいよ。(アホなボクは逆に木取ろうとすることがあります)
ボクがこの千切りを用いるのは、こうした部材の結合の他には、やはり額縁ですね。
大きなサイズの留め部分の結合であったり、あるいは座卓などの天板において、鏡板にぐるりとカマチを鉢巻きするような時の留め部分などです。
<閑話休題>
一昨日の製材の際の事前の作業、皮むき作業で普段使わない筋肉を使ったせいか、肩がいやに重い。
これをしておかないと、間違いなく虫害に合います。
ただの50肩という陰口もありますが…。
今日はこれをエントリーしたらMacの電源を落としてTVでロバート・デニーロの映画でも観ましょう。
Mac OS X10.4 の方は ONTV JAPANのテレビ番組表を表示する「Widget」がありますので使ってみませんか(各地域をサポートしています)
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