工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

A[H1N1](新型インフルエンザ)にどう臨む? その2

(承前)
〈 対応策を考える (処方薬の問題)〉
次にタミフル、リベンザなどの抗インフルエンザ処方薬について考えてみたい。
あらかじめ論旨を示せば、これら抗インフルエンザウイルス薬品がインフルエンザウイルスへの特効薬であるかの如くに喧伝されていることへの疑義についてである。
独ロシュ社が製造・販売する(日本では中外製薬が輸入・製造販売)タミフルは全世界に販売されているが、ここ数年、タミフル服用によるものと考えられる事故が日本に集中しているという実態があることはメディアでも大きく取り上げられ知られるところとなっている。
残念なことだが、まずこの処方後の異常行動の問題から見ていかねばならない。(毎日jp:新型インフル:発症後の異常行動、全国で151例
こうした問題の因果関係を検証するのはなかなか困難なことだが、2007年、中学生がタミフル服用後にマンションから転落死するなどの事故が相次いだ結果、かねてよりその副作用問題の深刻さを指摘した専門家からの度重なる追求を受け、厚労省としてもこれを無視できず注意喚起をすることになった(厚労省:タミフル服用後の異常行動について[緊急安全性情報の発出の指示])。
この度の2009A[H1N1]患者に対するタミフル服用でも、同じ問題が起きている。(読売:基礎疾患ない5歳女児、タミフル処方後、死亡
ただ、こうした意識障害、精神神経系の異常症状というものは、インフルエンザの疾患においても希に見られるとも言われていて、これらの事故はタミフルが原因ではないとの一部専門家による見解があるのも事実で、現時点では必ずしも決定的な解明ができているとは言い切れない。
しかし一部、厚労省担当官もその因果関係を認めざるを得なくなっていることも確かで、今後の専門家による検証が望まれるところだ。(新型インフルエンザに感染した患者の死亡について:PDF
やはり重要なのは、医療現場、所轄官庁、あるいはメディアにおいては、こうした事故を隠蔽することなく、市民の前に適切に情報開示し、さらには専門的立場から科学的、医学的なメスを入れ、その因果関係を究明してもらわねばならないだろう。

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〈 ウイルスの変異とタミフル耐性ウィルスの発現 〉
さて一方、パンデミック宣言(09/06/11)を前にした本年5月にWHOは強毒性ウイルスへの変異への危険性を指摘していたのだ(RETERS:新型インフル、強毒性ウイルスへの変異も=WHO)が、事実国内でもタミフル耐性のウイルスが確認されつつある。
岩手、大阪、新潟、大分、滋賀などと続々と報ぜられている(毎日jp)(毎日jp)(asahi.com
これは専門家からすれば驚くに値しない推移であるらしい。常に変異を辿ると言うのがこの種の感染症の特徴であるのだそうだ。
〈 タミフル:世界の75%を消費する日本 〉
ところでタミフルの全世界での需要の75%が日本に於けるものだという恐るべき実態についてはよく語られているが(子どもへの使用量はアメリカと比べ約13倍とされる)、なにゆえに日本だけが突出して世界の75%も消費しているのだろうか。
まず1つだけヒントを。
このスイス、ロシュ社が製造販売するタミフルだが、開発製造特許は元アメリカ国防長官のラムズフェルドが会長だったギリアド・サイエンシズ社である。ここはその販売額の10% のロイヤリティーを受け取っている。
さてラムズフェルドとコイズミ、アベ、フクダの関係性は今さら語るまでもなく新自由主義の下、固い絆で繋がっていたということは忘れもしない。
民主党政権になった今、あまりに分かりやすいこうした構図からはそろそろ脱却し、これまでの蜜月を解消しても良い頃ではないのだろうか。
こうした“分かりやすい”背景説明に依らずしても、近代医学を取り巻く問題、医薬産業と密接に繋がる政権筋という図式から見え隠れする、本来の医とは無関係な政治とカネにまみれた闇の世界は、結局は医療の現場を蝕んでいくのも必然であるのかも知れない。
これまで国内に限ってみても様々な医療被害、薬剤被害が起きてきているが、その多くは所轄監督官庁の厚労省の厚い壁に阻まれ、なかなか真相へと辿り着くことできず、被害者はいつも泣き寝入りしなければならなかった。
これは人の命を相手にするはずの医薬業界というものが、巨利を掴むために「医の倫理」を超えて、あるいは資本の論理を超えたところで安全性を軽んじた薬漬けの医療に奔走し、また監督官庁もこれと癒着し腐敗していくという長年にわたる歴史から生み出されてきたものでもあるだろう。
(asahi.com:タミフル研究班、別の教授にも6000万円 中外製薬
(バイオハザード予防市民センター:タミフルの副作用を調査する厚労省の研究班ならびにその協力者らに、中外製薬から多額の資金が提供されていた
ある局所的な臓器の病変への解明に研究と治験が施され進化してきたのが近代医学とするならば、その1つの結果として臓器ごとへの薬漬け医療となり、またそのことにより必然的にもたらされるのが副作用であり、これを省みないというのが西洋医学というものの宿命であるとするならば、何と不幸なことなのだろう。

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〈 インフルエンザ対策の基本的な立場〉
あらためて確認すれば、インフルエンザ対策の一般的な処方、つまり、普段から体調に留意し、健康に過ごすことが重要であることはもちろんのこと、蔓延期には罹患した患者との過度な接触は回避し(罹患したら咳などの排出には十分な注意を。またマスクは十分なものではない)、罹ってしまっても、慌てずに、温かくして、睡眠と栄養をしっかり摂り、睡眠時の「ぬれマスク法」や、引きはじめの早めの市販の風邪薬の処方などを心掛ければ、数日すれば熱も下がり、快方に向かうものとされているように、これはA[H1N1]とて基本的には同じこと。
タミフルが例え効果があるとしても、この闘病期間を数日短縮するだけの効用であることは専門家の指摘するところだ。
さて、このようにBlogで整序できるほどに問題は簡単ではなく、感染症の専門知識、科学的な検証、あるいはWHOから提供される情報、勧告、さらには厚労省のサーベイランスでの報告、医療現場からの声、また患者団体からの悲痛な叫びなど、様々な角度からの検証を経なければ、説得性のある客観的で適切な情報を整理することは困難であることも明らか。
この度、数日前からいくつかの情報サイト、医療専門サイトへとアクセスしただけでも、かなりの程度に理解が進んできている積もりではある。
つまり今や、インターネットを介して世界中からの美味しい情報が取得できるという環境を獲得しているのだが、
とりわけ本件のように殊日本に於ける情報操作、いわば、ある種の傾向的で恣意的な情報がたれ流されている現状を考えれば、これらの偏倚は私たち市民側の努力で正さねばならない。
意欲的にアプローチすればかなり高度なレベルで自己武装できることも確かであると感じられた。
結論的にまとめれば、まずは大手メディアから流される単発的で未整理な情報などに踊らされず、その背景を含めた実態に深くアクセスし、常に思慮分別と批評精神を持って解読することがキモだろう。
〈 人間社会とウィルス 〉
あえて大きな物語として捉えるならば、いわば人間社会とウィルスとの攻防は、有史以前より続いているのであって、今後も無くなることなどあるはずもなく、自然界に生きとし生けるものが背負っていかねばならない宿命にあることを銘記すべき、ということ。
問題なのは、ここに資本の論理、国家の論理、あるいは国際関係などといった、理化学、医療、薬学などとは本来無縁の要素がが介在してくることでややこしくなり、その結果が75%という不可解な数値であり、成田空港での赤外線検温センサーであり(罹患後の潜伏期を無視したパフォーマンス)、桝添厚労相のパフォーマンスであり、大手メディアの恣意的な情報提供ということなのではないだろうか。
それとともに今回のA[H1N1]はメキシコで発生した豚経由のものがヒトに感染したと言われているが、上下水道の設備なども未整備で、不衛生な環境の下で、囲いもないようなところで放牧されているメキシコの劣悪な養豚事情というものを見たとき、素人目ながらも、あれじゃ、種を超えて感染するのも避けがたい、と思ったものだ。(豚はヒト・インフルエンザを容易に感染してしまう)
これらの豚肉はメキシコにとって米国向けの主要な輸出品目の1つであることを考えたとき、その国際的な経済関係の非対称性は目がくらむほどであり、こうした南北関係が続く限りは、常に人間社会を窮地に追い込む芽は絶えないのだろうなと強く感じたものだ。
衛生ということでは国内においても同様なことが言える。
インフルエンザを蔓延させないためには、まずは生活環境を改善させ、良質な住宅環境、労働環境を提供し、そして適切な医療を提供することも重要だろう。
莫大な費用を投下してワクチン、タミフルを世界からかき集め、備蓄する前に、まずもってそうした基礎的な環境整備に目を向けることも忘れてはならないように思う。
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〈 最後に 〉
さて、寒冷期に入り季節性のインフルエンザの発症も多くなる時期となり、A[H1N1]の感染者数の推移も気掛かりであり、また医療現場ではワクチン接種も本格的となってきて、A[H1N1]をめぐる問題はより深く、また拡散していくことになるだろう。
どのような事態になっても、冷静に、適切な情報を収集分析し、対処することが肝要であることは言うまでもない。
懸念されるのは、集団感染のリスクが高い幼稚園、学校などでの父兄の対応だが、ワクチン接種、タミフルなどの投与などはそれぞれの個々の対応に依るべきであり、決して集団で抑圧するようなことが無いようにと切に願いたい。
「クラスの花子さんちだけがどうしてワクチン接種しないの?、私たち全員が迷惑だわ‥‥」などといった愚劣なことが起きないように願いたい。
実は、6月、WHOからパンデミック情報が出された時点でボクが懸念したのは、バンクーバー五輪は果たして無事に開催されるのだろうか、ということだった。
確かにカナダ国内でもこのA[H1N1]は蔓延しているようで心配であることに違いはないが、しかし冷静に見れば季節性のそれと大きく変わるものではないことも徐々に分かってきたので、6月時点でのボクの懸念は払拭されることを信じたいと思う。(五輪の開催そのものの評価は別だがね)
あ、なお、ボクは軽度ながらも慢性化した呼吸器疾患を抱えているが、ここ数年は風邪も引かず、いたって元気に過ごしているので、異常接近しても全く問題ないことは言い添えておかねばならなかった。
飯は旨いし、酒も美味く、健康な日々を送っているからね。
(今回のエントリは少し疲れたけれど・・・読者を巻き込んでしまい、すまないことです)
〈 * 関連情報 〉

(以下の関連機関、個人サイトを参照させていただきました。 感謝 !! )

■ 国立感染症研究所「感染症情報センター」 パンデミック(H1N1)2009
■ 厚労省「新型インフルエンザ対策関連」
■ 厚労省「新型インフルエンザ」入門
科学ニュースあらかると
木村盛世Webサイト
新型インフルエンザ・ウォッチング日記(近畿医療福祉大学 勝田研究室)
■ Yahoo ![新型インフルエンザ対策関連情報]
「薬のチェック」(浜六郎 氏運営)
バイオハザード予防市民センター

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