工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

豚インフルエンザ・パンデミックの怖れとは

WHO(世界保健機関)は昨27日、緊急委員会を前倒し開き、パンデミック・アラートをそれまでのフェーズ3からフェーズ4に引き上げた。
このフェーズ4という警告は何よりもメキシコで高い死亡率を示していること、さらにはメキシコから拡大を防ぐ手だては既に遅きに失し、世界大的な拡がりを見せつつあるということでの懸念からのものという。

「大流行」前提に対策を/スペイン風邪発生時に酷似
押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「感染の拡大状況だけを見れば、(最高の警戒レベルで新型インフルエンザが一般社会に急速に拡大する)フェーズ6のパンデミック(世界的大流行)になっている」と感染拡大のスピードに注目。「日本にもウイルスが入ってきているかもしれない。確認されるまでは冷静に行動しなければならないが、パンデミックになることを前提に対策をとることが必要だ」と指摘。また、米国が非常事態宣言に踏み切った点を評価し「日本政府が(フェーズを引き上げる)WHOの宣言を待っているとすれば逆に間違いだ」と迅速な対応を促した。(毎日.jp

まさに「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(REUTERS
ボクがこの「パンデミック」という言葉に最初に接したのは作家・辺見庸氏が「しのびよる破局」(NHK ETV特集 09/02/01)という番組の中で象徴的に用いた時のこと。


この感染爆発を意味するパンデミックという言葉を象徴的に用いることで、現代社会の“破局”状況を言い表そうとしたのだが、米国に発する昨秋来の世界的な金融破綻というものが、経済的破局に留まらず、人間そのものの内面の崩壊が同時的に進行しているのではないかとの警鐘だったと記憶している。
ここでは深く立ち入らない。
ただ、まさかスペイン風邪の如くの感染爆発、パンデミックが、この放映から数ヶ月で現実化しようなどとは思いもよらなかった。辺見氏自身もさぞや驚いているのではないだろうか。
状況は刻一刻と変化しているので状況を定常的に捉えることは困難。
鳥インフルエンザはここ数年来警戒されていたが、まさか豚インフルエンザが種の壁を越えてヒトからヒトへ感染するに至ったとのニュースには本当に驚かされた。
豚のインフルエンザは当たり前のようにあり、また豚からヒトへの感染もあったようだが、これがヒト同士で感染するウィルスに変異しちゃったらしい。
3月にメキシコで発生確認された豚からヒトへと感染するという新種のインフルエンザにる集団発生は、今日28日現在、メキシコでは152人の死者、2,000人〜の感染疑い、米国、カナダでは50人の感染確認、ニュージーランドで66人の感染疑い、スペインで27人の感染疑い、他イギリス、フランスなどで数名の感染疑い。感染疑いの患者がある国は13ヶ国にのぼる(28日22時現在)
日本国内では現在のところ確認されていない。
しかし判らないことだらけの豚インフルエンザだ。
メキシコでは高い死亡率を示しているが、その多くは若い年齢層だという。つまりH1N1というウィルスの型の抗体を持っていない身体だからだろうと想定できる(1940〜1950年代にこのH1N1型のインフルエンザが蔓延し、罹患した人には免疫がある)。
一方で少なくない数の感染者が確認された米国を始めとする他の複数の国々では死者は出ていず、さして重篤でもなく軽症だという。
つまり限定的であるのだが、これが単に発生数の違いによることなのか。
WHOでも、メキシコでの死者数の内、どこまでが本当に豚インフルエンザによるものなのか、あるいは豚から直接感染した患者であるか、人から感染したものであるのか、確定的ではなく、調査中であるとのこと。
懸念はたくさんある。
政府はこの豚インフルエンザ対策に万全を尽くすと語っていて、ワクチンの製造も視野に入れたとは言うものの、残念ながらワクチンが市場に出回るのは6ヶ月〜後のことになるのだという。
そもそも製造に欠かせない種ワクチンのためのウィルス株の入手は全くこれからなのだというので、驚く(現在は米国のみが製造可能であるとのこと)。
暫くは経過を追いながら、状況によって対処するということになるのだろうか。
冷静沈着に、流言飛語に踊らされず、結局は通常のインフルエンザ対策において有効な“手洗い”、“うがい”を励行し、不要不急に人混みに出ずに、体調を整えておくという基本が大事ということに尽きるか。
*関連記事
■ REUTERS、「豚インフルエンザ特集」
■ AFP BB News 「豚インフルエンザが経済に及ぼす影響」
国立感染症研究所、感染症情報センター
鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集

《関連すると思われる記事》

                   
    

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.