工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ちょこっとハイスツール、やや高Version

Hi Stool 2type

Hi Stool 2type

家具の寸法バランス、というものはなかなか微妙だね。

家具制作に携わって間もない頃の話になるが、和家具設計に関わり、指物職人にアドバイスをもらったことがあった。
いくつかのポイントの中で印象的だった話しの1つが寸法とバランス。

寸法、つまり見付け、見込み、その厚みを含む寸法。
それに寸法バランスのことだね。

精緻な作りではあるのだが、なぜか収まりが悪い、視覚的に落ち着きがない、といったことも起きる。
つまり、部位寸法と、それらで構成されるバランスが視覚的に快く無い、ということだね。

帆立の見付けの厚みが8分、棚板は6分、棚板の間は7寸〜8寸、台輪は1.8寸‥‥なんてね。

こうしたことは人間生活の諸空間において、知らず知らずのうちに意識下において美しいと感じ取る基準のようなものが備わっていて、そこで対象物を前にするとき、そうした深層から呼び出された美意識をはかりとして、参照し、美醜の判断を下すというわけだ。

うちのスツールの定番「ちょこっとハイスツール」だが、今回、かなり高い座のものを受注し、制作した。
ご覧の画像、手前が標準的な高さのハイスツール。奥が今回拵えたスーパー(?)ハイスツール。
脚部の高さを違えただけで、座は同一のもの。

Hi Stool 2type back Hi Stool 2type 2type Hi Stool overlook

ま、前段の寸法とバランスの話しからすれば、ちとそっけない展開になってしまったが、こうしたデザインのハイスツールであれば、脚の高さの変化さほど大きく美醜に影響を与えるものではなさそうだね。

そうはいっても組み上がるまでは、やや心配だった。

実は現在取り掛かっているキャビネット(李朝風の飾り棚)だが、寸法とバランスを注意しなければと、少し緊張しながらの作業が続いている。
昭和初期に発刊された「寸法録」を参考にしながら、また旧い李朝家具の資料をめくりながら、よりよいバランスを考える。

こういう世界のものは、ちょっと下手をすると数寄者から笑いものにされるだけだからね。
怖い世界でもある。
日本人の美意識というものは、恐らくは中世期(奈良平安時代)において、ほとんど確立し、その後はむしろ衰退の一途を辿っている?かな。かな?

hr

《関連すると思われる記事》

                   
    

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.