工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

駿河湾、5月の海の美しさと、放射能漏洩への懸念

昨日は好天に恵まれ海に出た。
この辺りでは昔から良く知られた海水浴場、静波。
夏ともなれば関東圏、中部圏域から多くのカッパ達で賑わう。

静波は海水浴場ではあるが、オフシーズンといえば、もっぱらサーフィンの良いポイントだ。
昨日は大会が開かれ、うちのHくんもエントリーしているというので、カメラを担いで出掛けたというわけだ。

ただ昨日は、ちょっと気分が違った。
海への誘い(いざない)が作用するハイな気分だけではない。ここから海岸沿いを南に走ること15Km地点。そこにあるのが中部電力・浜岡原子力発電所である。

5月6日、菅総理が中部電力に対し全原子炉の運転停止を海江田経産大臣を通じて要請。これに対し中部電力は5月9日「現在運転中の4号機、5号機を停止する決定」。

そして13日、4号機を停止。
続いて翌14日、5号機を停止。

こうした、いわばハピーなニュースが流れる中の翌15日のサーフィン大会だったというわけだ。

サーファー達にとっては晴れ晴れとした気分でのトライだっただろうし、見晴らしの良い突堤にキャプテンチェアをどっかりと置いたギャラリーとしても、サーフィンに興ずるにしては静かすぎる波に、3.11以降、ここ数ヶ月の疲れた心身を癒やされ、波を捉まえようと身構える選手達にカメラを向けたり、ぼんやりと新書を読みふけったり、野点の珈琲を楽しんだりと、良い時間を過ごしたのだった。

サーファーのすぐ隣には、アサリ採りで忙しい入漁権を持った漁師たちがいたり、テトラポットの下を覗きながらのカニ採りおじさん、小さな熊手での潮干狩りに興ずる家族連れがいたり、と、きらめく5月の陽光の下、太平洋に向かい実に平和で美しい光景が拡がっているのだった。

ところが帰宅後、地デジアンテナの取り替え作業などで費やした後の、高利得で見事な画像に回復したTVが伝えるニュースには腰を抜かしてしまった。(中日新聞:「復水器に海水400トン漏れか 浜岡5号機、冷温停止は完了」

前日14日の、5号機停止作業の過程で、復水器から海水400トンが混入。
19時間も発表を遅らせていた、というもの。

多くの人が、時が時だけにこのニュースには注目したかと思うのだが、事故の発表を長時間にわたり公表しなかったという「情報公開」に反する所業はともかくも、事故そのものの問題に、ボクは愕然とした。

復水器から海水400トンが混入したということは、原子炉への塩害のダメージの想定はむろんだが、ボクの拙い知見では、この事故、数万本といわれる細管で構成される復水器の破断(中電側もそれが原因としているが)の原因はこれから点検精査されるのだろうが、腐食であったり、様々な理由から減肉、破断へといきついてしまったのだろう。

3万本とも言われる復水器の細管、1本1本を丁寧に調べるというのも、ほとんど神業に近いものがありそうだが、ここではその難しさ云々ではなく、復水器において海水側から穴が空いた細管を流れる冷却水に漏れ出したということは、逆に高濃度の放射能で汚染された冷却水も海水側へと流れ出しているということは無いのだろうか、ということへの強い懸念である。

ネット上で、いろいろと情報を集めるも、メディアは中電の「放射性物質の漏えいはなかった」とする発表を鵜呑みにしての報道だけで、専門家のコメントは見付けられていない。

相互の水圧の関係、細管破断の程度、過去の事故履歴等、ぜひ専門家は然るべく精査して明らかにして欲しい。

先のフクシマメルトダウン、という発表。
実は3.11〜3.12で既に起きていたことを2ヶ月も経過してからやっと認めるという不埒な情報隠しは、多くの人々を暗澹とさせたのだったが、中電よお前もか、と言わねばならない事態には、いやはや、電力会社というものの体質にはほとほと脱力し、怒る気分さえ萎えさせてしまうお粗末さではある。

美しい海辺と安全な海水は何としても守らねばならない。
サーファーを「炭鉱のカナリア」にしないで欲しい。

中電の公開資料から ー 緑の○が「復水器」部分


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  • 原子力発電のシステムそのものの脆弱性を疑わせるような
    ニュースが続いていますね。
    平常時の運転停止もまともにできないのか、という印象です。
    さらに、福島も実は津波が来る前に壊れていたような感じです。
    日本の原発は全て危ない、と思われても仕方が無いですね。

    先日のNHK ETV特集を見ていましたが、情報を絶たれた市民は本当に
    犠牲者です。
    もうあの土地には何十年も戻れないのではないでしょうか。

    • 平時での稼働においても実は様々なトラブルを起こしてきたというのが偽らざる実態でしょう。
      これまではそれらをスルーしてこれたのが、フクシマ状況下という事情から、衆人環視の下では誤魔化しきれなくなっている、ということもあるでしょうね。

      >福島も実は津波が来る前に壊れていた

      〈地震による被災〉ではなく、〈津波による被災〉が「想定を超えたもの」とする免罪符として使われていることは、とても残念なことです。
      圧力容器、格納容器それぞれの溶接部、あるいは配管接合部、長大なパイプなどが「地震」で大きな損傷を受けていた可能性を指摘する専門家も少なくありません。

      事象に真摯に立ち向かうという、科学者としての使命感、倫理観を良く考えた上で情報提供してもらいたいものですね。

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