“手作り家具”と機械設備(その14)
機械設備と電動工具の差異および選択基準(その3)
〈加工プロセス〉
〔ホゾ加工〕
無垢材における木工加工において、もっとも重要で基本となるものがホゾ加工であることに異論はないだろうと思う。
この最も重要な加工だけに要求される精度は高いものがある。
したがって必然的にこのプロセスは丸鋸昇降盤、および角鑿盤という機械での加工が基本となる。
対し、電動工具でこれを代替させるものとはどのようなものがあるだろう。
まず丸鋸昇降盤に代替できる電動工具では、電動丸鋸を取り付けることの出来るスタンドがあるようだが、これがどの程度精度も含めた実用性があるのかは知らない。ただ職業木工家がこれを使うと選択はあり得ないだろう。
角鑿盤という機械に対応するものでは、海外の電動工具メーカーから様々なタイプのものが販売されているようだ。
一般の角鑿盤と較べればその使い勝手に大きな差異があるのは仕方ないだろうと考えられる。
機械の角鑿盤と大きく異なるのはパワーもさることながら、やはり移動定盤の機能がない、あるいは加工材の固定システムの使い勝手が悪い、といったところであろうか(これも使用したことがない)。
したがってホゾを主要な接合方法とする場合では生産性において機械でなければならないだろう。
電動工具の方はハイアマチュアでの選択となる。
ただ、一般の角鑿盤では困難な懐の深い部位へのホゾ穴穿孔では、この電動工具の角鑿を改良して作ることも可能だろうと考えられる。
以前世話になった木工所でも同様なものを機械屋に作らせていた。
さて本Blogでも過去数回取り上げてきたFESTOOL社のDominoという電動工具だが、ホゾ加工をこれで代替させるということも、新たな選択肢として大いに考えられる。
ただしかし、ホゾという接合の構成と較べれば、接合される2つの部品、双方ともホゾ穴を穿孔させ、これにダボを咬ますというものであるので、その緊結力はやや劣ると考えるのが公平な評価となるだろう。
またスミ線に対しての精度の優位性などにおいても一般の機械加工に較べればややセッティングが困難なことなどを合わせ含め考えるならば、少し劣ると言わねばなるまい。
しかしそうした客観的な比較評価とともに、電動工具の世界でこのようなホゾ加工に限りなく近い加工を満たす工具が出現してきたことの意味は大きいと言って良いだろう。
機械設備されているところでも、ケースによってはこのDominoの活用が有益なところもあるだろうし、試作などに活用されることにもなるだろう。
(まだ試用していない人にはぜひ一度その加工精度の高さ、および使い勝手に見られるドイツの電動工具の現在というものに触れてみることをお奨めしたい)
このDominoの登場前には、ビスケットジョイナーという平ダボを穿つ電動工具があった。
要するに接合部位への雇い核をイージーに加工する電動工具だが、その機構上、および精度からして板剥ぎを除く多くの加工部分をDominoにその席を譲ることになってしまうだろう。

acanthogobius
2008-2-12(火) 22:58
上の写真では昇降盤によるホゾ取りの様子が写っていますが
artisanさんはこの方法を良く用いますか?
ホゾ取りは他にホゾ取り盤を使うとか、定盤傾斜の昇降盤の横に
付いているホゾ取り装置を使うなどあると思います。
写真の方法で四方胴付きのホゾを取る場合がありますか?
長手方向は問題なくても妻手方向は難しいと思うのですが。
もちろん、ケースバイケースでしょうがartisanさんの場合は
昇降盤の横に付いているホゾ取り装置も使いますか?
artisan
2008-2-12(火) 23:30
テーブル傾斜の補助軸でのホゾ取りは、その機構からして、幅の制約がありますね。せいぜい45mmほどでしょうか。
それ以上の幅のものは、この画像のような方法を取ることが一般的ですね。
この画像は実はテーブルの長手方向の幕板の加工途上のものなので、1,700mmほどの長さがありますが、安定的にスライドさせて抜いています。
四方胴付きでは、長手方向を画像のような手法で行い、幅方向は補助軸の方で行うなど使い分けています。
ちょっと話しが変わりますが、
例えば椅子の台輪の傾斜したほぞなどには、補助軸に複数枚の鋸を取り付け(間にスペーサーを咬ませ)、ジグを使いながら一気に取ってしまう。
あるいは補助軸に丸鋸ではなく、カッターを取り付けて、間を抜く、などと言った方法をとることもあります。
様々に、ケース by ケースで使い分けてます。
AUDIN
2008-2-16(土) 20:59
ほぞ加工はバンドソーと手鋸と鑿でやっています;
ペティワークに載るサイズだと生産性が格段に上がります(笑)
ウチでの主要な接合方法とは何だろう?
とあらためて考えたのですが
ほぞによる嵌合というよりも込み栓・しゃち栓や
鼻楔によるものが主でした;
「懐の深い部分への(ほぞ)穴あけ」に
DOMINOが使えるんじゃないか?と考えておりました(ポータブル角ノミ風に)。
そういった場合、ガイド枠等を作っておいてから
ルーター等で掘る方が普通なのかもしれませんが。
設備にかける予算が厳しくなっているため
効率化・省力化の為の機械や工具は後回し、というか
正直 しばらくの間は無理ですが
予定外の出費が重なった中でも
古くなったオービタルサンダーの買い替えや
木取りに使うジグソーとプランジソーが
新規に導入できたのは幸いでした。
今までそれが無くても何とかなっていた所に
新しく物を入れるのは なかなか難しいです。
artisan
2008-2-17(日) 00:29
DOMINOでの「懐の深い部分への(ほぞ)穴あけ」は有効ですね。
近くまた記事にしたいですね。
>今までそれが無くても何とかなっていた所に新しく物を入れるのは なかなか難しいです。
そうですね。業務上であれば、導入による生産性向上、快適な仕事環境の整備などと限られた予算を考え合わせ、決断ですね。