工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

休日には‥‥

紅梅
世の中は今日は祭日のようだが、うちでは終日工房に入り浸り。
休まない理由はいくつかあるが、納期に迫られているものがあるのもその1つ。
工房の湿度計の針は40%を指している。
板差しのキャビネットの仕事をしていると框モノに較べ大気の状況にかなりナーバスになってしまうが、ここ数日乾燥した大気に包まれているので加工も快適に進捗している。これはとてもありがたい。

以前、こうした木工作業にとって環境の良い秋から冬にかけて板差しのキャビネットをやってしまおうという考えのもと、集中的に実践したことがあったが、なかなかそうした戦略も継続できるには至らなかった。

ボクたちのように幾分創作的な仕事をしていると、工房に閉じこもっていただけでは良い仕事はできない。
ボクぐらいのキャリアを積めば加工工程などある種ルーティンワーク的に進めることが出来ないわけではない。
精度においても、品質においても高いレベルを維持し、しかし決してストレスを感じることなく淡々と進めることはできるものだ。
しかし、それはただそれだけで、それ以上ではない。
求められるのは、それ以上のクォリティー、かなりの部分で創作的な領域のところに踏み込んでいくことであろう。
そうした自覚に殉ずるのであれば、知見を豊かにする、美意識を鍛える、といったことを日常的な活動の中で課さねばいけない。
工房だけに閉じこもっているだけではそうした世界への扉は開かれない。
あるいは外から誰かが持ち込んで来てくれるというほど甘いものではないだろう。
時には工房を閉め、業務とは直接関係しないジャンルの美術展、あるいは音楽会でも良いだろうから足を運び、何らかの直接的な示唆を受けたり、そうでなくとも美意識を涵養できる場へと向かっていくのは必要なことだ。
いやむしろ木工という専業に活用できないか、というような目的意識を離れたところで、素直に耳目を喜ばせてやることの方が良いだろう。 
今は様々な情報がネット上にあふれかえっている。検索ツールを適切に使いこなすことで、かなりの程度での有用な情報も取得できるかもしれない。
しかしそれはただそれだけ。
時にはネット接続を切り、沈思黙考(木考?)するのも良いだろうし、買い求めただけで全く手の着いていない本を開くことも重要だろう、あるいは気が置けない友人とのたわいない会話も良いものだ。
せめて休日は工房を閉め、ネットを切断し、違う世界へと向かわねば……。

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