工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ハードウエアの準備はお早めに

現在は「座布団椅子」、「フロアスタンド」、「センターテーブル」など、それぞれ数Lotを並行して制作しているが、いくつかのことで想定外のことが起き、やや停滞気味。
1つは金具が入手できなくなっていること。
「ディスプレーフロアスタンド」の照度コントロール付きスイッチを固定するためのナットが手に入らない。
それまではスイッチ製造販売業者から40円@で入手できたものだが、ナットは既に在庫が切れ、今後の製造の予定はないのだという。
おいおい、困るよ。もう木部刻んじゃってるもん。
このスイッチ部分は、木部を彫り込んで、完全に内蔵させる設計であるのだが、スイッチ操作部分の外部露出のところで木部と固定させるためのナットが必要。
画像をご覧頂ければお分かりのように、ネジの本体側(オス)は短く、木部埋め込み構造を満たす長さのナットが必須。
したがってちょっとばかりこのナットの形状は特殊なものになる。
このナットの安定供給を前提にした設計なので、これが入手できないということになると‥破綻だよ。-_-#


スイッチ泣いていても解決しない。作ってもらうしかない。
近くのネジ専門の問屋に出向き、いくつかのところに見積もりをしてもらうことにした。
ところがこのスイッチのネジは、M9という規格ではあるもののネジ山のピッチがかなり細かい。つまり特殊なものと言うことで、製造工場の多くはそんなバイトは持っていないと言う。
結果、とりあえず制作個数を50個ほどにして、約600円@になるとの見積もりが出た。ハハ、既製で入手してきたものの15倍の価格。
しかしこの価格評価は恐らくは妥当なものだろうと思う。
製造工場は制作に掛かる時間を見積もってはじだした数値。新規導入するバイト代も含むだろうしね。
何千個、何万個というLotでの制作と、わずかに50個ほどのLotでは15倍もの差が出ることは‥受忍せねばいけないだろう。
そもそもの問題はこの既製のものが未来にわたって安定供給されるだろうという前提そのものが間違っていたわけだからね。
しかし一方、金具供給を巡る状況は、こうした話しを決して特異なものとはしないといった傾向にあるのも確か。

一般に金具関連の価格高騰は中国因子が強いと見られており、確かにそうした見解は間違ってはいないのだろう。
しかしこうしたことも、降って湧いてきた事象とみるべきことではなく、ある種の歴史的必然性と考えた方が賢明だろう。
こうした新しい時代以前のボクたち日本の経済環境というものは、世界の資源を優先的に使うことのできる過度に恵まれた(他国との比較関係に於いての)ものであったということを知らしめられているということなのだ。

今後は、これまでの当たり前としてきた前提を、まずは疑って掛かり、全ての条件が満たされるようになってから木部制作にかかるべきという、大いに反省させられた事態ではあった。
もう1つは座布団椅子の座布団を作ってくれていた、おばぁさんが、もう作れなくなってしまいました、との連絡を受けたことである。
この縫製を商う女性は、ある知人からの紹介ではあったが、もはやリタイアしたいという女性に無理強いもできず、またあらたに探し出さねばならない。
例え良い人が見つかったとしても、当然にも恐らくはコストアップとしてもたらされるだろう。

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