工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ルーター整備は続く

先のルーターマシーンのダンピング用ワイヤーの取り替え作業も終わりその後快調に使用していたのだったが、少し調子を崩した。
ゼロアジャストがどうも不安定。
ルーターマシーンの機種の中で最も普及しているテーブル昇降の機構を持つタイプは、テーブルを設定値の最上部まで上げ、テーブル昇降操作のペダルを固定位置にすると同時にほんのわずかではあるが(0.5mmほど?)下がってしまう。
これは例えばお盆のような底をさらうような加工の場合、回転刃を降ろした箇所(テーブルを上げて刃が当たった箇所)にその刃径のマークが残ってしまうということになる。
しかし、主軸を最底部まで降ろしたとき、戻ることなくそのままの位置を確保してくれ、刃のマークなど残らないというのがこのヘッド昇降タイプの優れた機構だ。
このヘッド昇降機構、木工機械の教科書などによればテーブル昇降機構のマークが残ってしまう問題を改善させるために開発されたとあるが、その真偽のほどは不明。
ルーター修理1この優れた機構がどうも不正常、ビミョウに主軸が戻ってしまう。。
いろいろとワイヤー長さの調整を軸に試みるも芳しくない。
結局ダンピングワイヤー操作のフットペダル機構にちょっとした細工を施すことで解決を試みた。
踏みしめたところにストッパーを付けることにした。
踏み代が、規定のワイヤー伸縮範囲にそぐわないのだろう。
具体的にはペダルのベース部分にWナットで8mmのボルトを植え込む。
ベースの然るべき箇所にタップを切り、8mmボルトを切り、植え込む。
ベースはタップを切り、ボルトを植え込むにはやや薄い鋳鉄だったが、何とかWナットのボルトを支えるだけの強度はあるようで安心した。


ルーター修理2そしてあらためての再調整。今度はバチッと決まった。
ゼロはあくまでもゼロでストップしてくれた。
しかし何だねぇ。このルーターマシーン、ボクが使用しているのが約20年。しかし中古で求めたものなので、恐らくは40年以上は使用しているのではないだろうか。
まるでヴィンテージもの(?、苦笑)
使われているボルトなどはMネジではなく、インチだもんね。
劣化が心配される部分と言えばまずは主軸だが、この主軸の潤滑方式は他機種で広く見られるオイル循環方式ではなく、密閉ボールベアリング方式で、高速回転用のグリスを封入する方式。
一般には寿命は長くないとされているようだが、一度もベアリングを替えたこともなく、快調。
グリスアップも半年に1度だけ。
また主軸とモーター回転部を繋ぐ布製のエンドレスの特殊ベルトも全く劣化がない。
持つものだねぇ。
ベルトはヘッドの昇降によって常にその位置が変化させられるし、かなりのテンションが掛かるという過酷な環境におかれているものだが、この耐久性はベルト自体の品質の高さとともに、この機械の機械精度の高さを物語っていると言えるのかも知れない。
なおここでは詳しく触れる積もりはないが、職業木工家でこのヘビーデューティーのルーターマシーン(ピンルーター)を設置していない人はぜひ考慮されたい。
ハンドルーターに比し、その切削性能、汎用性、安全性、いずれもグン、と増強されることを請け合おう。
この機械はキケンだ。怪我するから使うのは避けたい、などといった根拠の無い誤謬があるとするならばはなはだ残念だし、快適に使用している職人からすればこの恩恵に与れない状況はとても‥嗚呼モッタイナイ。
(職業訓練校の一部では設置してあっても生徒には危ないからといって使わせないこともあるようだが、そうした指導の在り方は如何なものであろうか)
年末の大掃除の際にでも時間的余裕があれば、あらためてこのダンピング機構を一旦解体、オーバーホールしたいものだね。
摺動部、回転部などの部品は洗浄し、あたらめてグリスアップして組み直してみようか。
機械というものはそれを使う作業者による手入れという愛情の注ぎ方で機嫌良く働いてもくれるだろうし、不調な状態を放置していれば悪化の一途を辿り、作業者の思いも伝わらず、良い加工はできなくなり、さらには機械の取り返しの付かない故障へと繋がったり、あるいはまた作業者へと牙を剥き大きな怪我をさせることにもなってしまうかもしれない。
ここ1週間ほど天気が優れず、気分も爽快とはいかなかったが、明日からは高気圧が張り出して晴れ上がってくれそうだ。
壁を見ればカレンダーも残すところ1枚だけになってしまったね。明日からは悔いを残さず気分良く年越しを迎えることのできるように心機一転がんばりましょうか。
一段と寒さも増してきたので諸兄も風邪引かぬよう留意していただき、忙しくなる師走に元気に向かっていただきたい。
・画像上:ダンピングを掛ける前のヘッドの上がった状態。ペダル矢印部分が埋め込んだボルト。
・画像下:ダンピングを掛けてヘッドが降りた状態。矢印が降りた主軸ヘッド部分。

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