工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

The New DOMINO XL (DF 700) ・その2

DF700 中国向けWebカタログ

DF700 中国向けWebカタログ


はじめに

New DOMINO XL、関心は高いものがあるようで、コメントを含め、アクセスがめちゃ多くなっている。

昨日のエントリだが、昨夜から今朝にかけ、画像を含め、いくつか追記させていただいている。
特段、新たなことを記述したわけでもなく、理解しやすいように追加修正したに過ぎないので、あらためて読むことも無いです。

さてところで、この〈New DOMINO XL〉のリリースにあたって、マシンそのもの、FESTOOL社の販売戦略、情報提供についてなど感じることをいくつか上げてみよう。

マシン本体

まずマシン本体のことからだが、やはりあらためてすばらしい電動工具であると思った。
〈DF500〉のユーザーであればこそ、理解できるところでもあるのだが、この新しいマシンは、ただ単に大型になった、ということに留まらない、使い勝手の向上、補強などを見ることができる。
外観もメカニカルな美しさを持っていて良いと思う。

素材における金属材質、樹脂材質の選択による高硬度の剛性、とことん作り込まれた機能による使い勝手の良さと高精度の実現。
これらが工業製品としての完成度の高さ、デザイン的なクールさを生み出し、高品質なマシンを作り上げている。

これらは、徹底したユーザーサイドに立った研究開発によるものだ。
背景にはもちろん、ドイツというモノ作りにおける歴史と誇りというものが伺えると言って良いだろう。

DOMINOに機構的に似た電動工具、ビスケットジョインターの場合、ラメロというマシンを嚆矢とするが、その後欧米の各メーカーを含め、国内電動工具メーカーも、ほぼ同様のマシンを製造してきている。
良くは分からないのだが、これは特許権の問題があるのだろうか。
ラメロに遅れること、数年で様々な派生品が出回るという経緯。

このDOMINOもそうした経過を辿るのだろうか。
DF500が出て、5年。追随しようというメーカーはいまだ見えない。

ただこれと同等品を造るには、かなりの勇気と努力が求められるだろうね。
一方その間にもFESTOOL社は一歩も二歩も先を走る。

つまり今後数10年は、現在のような市場は続くということになるのだろう。
(これらの特許に関する情報をお持ちでしたら、ぜひご教示いただきたい)

Festool社のWebコンテンツについて

さて次に、FESTOOL社のWebコンテンツの豊富さについて。
いまさら、な話しだが、このFestool社の情報提供はすばらしいものがあると感心している。

それぞれのマシンの紹介においては、詳細なデータ提供はもとより、機能の紹介、使い方などにおいては新しい機能のWebコンテンツを駆使し、アニメーション、動画などで、微に入り細を穿つ情報が上げられていて、とても好ましく思う。

印刷のカタログも300ページに及ぶものだが、それらはWeb上からもPDFで漏れなく提供されている。
しかも言語展開も豊富である(しかし残念なことに日本におけるカタログは、全く別の編集となっており、貧弱)。

今回の〈New DOMINO XL〉で見れば、言語展開は以下のようだ。

Australia 、Austria 、Belgium NL 、Belgium FR、China 、Czech Republic 、Denmark、France 、Germany 、Great Britain 、Italy 、Netherlands 、Poland 、Russia 、Spain 、Sweden、Switzerland DE、 Switzerland FR、 Switzerland IT

以上、16ヶ国、19言語である。

さて、これを見れば、EU各国への先行リリースは当然としても、それ以外で上げると、スイス、オーストラリア、ロシア、そしてアジアからは1ヶ国、中国が入っていることが見て取れる。

米国が遅れているというのは意外な感じがしないでも無いが、強大なマーケットであることを考えれば、準備万端の整備で臨む、ということで理解できないわけではない。(現在、ユーザーへのモニターキャンペーンの準備中)

それと日本の家具職人からすれば、なぜ日本へ向けての情報提供が疎かであるのかは、大きな?として書き残して置くべき事かもしれない。

中国が対象とされているのに、なぜ日本が、とはいうつもりは無い。
マーケット規模でいうなら、彼の国は恐らくは桁違いの商圏であることは論を待たないだろうからね(ひがんじゃ、いけないよ)。

代理店・HÄFELE社のマーケット戦略について考える

そうしたマーケティングの側面から、このDOMINO販売戦略を考えて見た場合、日本の総代理店であるHÄFELE社の営業戦略は、良く分からん、というのが正直なところだ。

米国のようにモニターキャンペーンを展開する、あるいはDOMINOを積極活用した家具制作を広く呼びかけ、展示企画を展開するなど、さほどの経費を掛けずしても、需要喚起に繋げることは可能だと思われるが、FESTOOL社との代理店契約がなされた2007年以降、そのような動きは寡聞にして知らない。

むしろ聞こえてくるのは、欧米での販売価格を数倍するほどの価格設定への落胆の声であり、そうした営業戦略への批判である。

数年前から、円高還元と称する新価格設定で割り引きを行っているようだが、「円高還元」という呼称は、あまりに消費が伸びないことへの対応策としての理由付けにされたに過ぎない感じさえする。

右画像はDF500がリリースされた2007年の価格表。
当時米ドルでは $700 だったが、その内外価格差には失神するほどに驚かされたものだった。

巷間喧しいTPPではないが、こうした工業製品における過度の価格差は非関税障壁とも言うべきもので、決して望ましいものでは無いだろう。
ユーザーが困惑するだけでは無く、マーケット戦略としても、これがどこにそれほどの合理性があるのかは理解に苦しむ。

無論これはHÄFELE社だけにその責めを負わすわけにはいかないかも知れない。
Festool本社の海外戦略における締め付けということも絡むものと考えるべき事だろう。

結局は自己防衛の観点から、ボクを含め多くのユーザーが欧米から直接個人輸入するという煩雑な手続き、それに伴う経費の負担を強いられつつ、対応せざるを得ないという状況下にあるという現状。

ネットに繋がるコピューターと、クレジットカードさえあれば、広く誰でも海外から買い求めることができるからね。

確かにFESTOOL社の場合、海外への個人輸出は、各国代理店を保護するために抑制させられているのだが(2007年の頃から)このシステムを逃れ、国際的な運送代行を使えば、いくらでも突破できる。
これは決して望ましいものとは思えないのだが、仕方ないだろう。

数日前、あるブランドのスニーカー(MERRELL)をネットから購入したのだが、国内価格の半額で買うことができた。
最初はなぜこれほどに安価なのかは分からなかったが、どうも中国から個々に送られてくるようなのだ。

であれば、こうしたFESTOOL社のマシン購入は、これからは中国から、というルートもありうるのかも知れないね。既にそのルートで入手している、スマートなユーザーもいるのかもしれない(こっそりボクに教えてください ! )

賢い消費者にならなければいけないね。
いやいや、本来であれば、国内メーカーのものを愛好し、大事に育てるというのが望ましいわけで、ぜひ国内の電動工具のメーカーも斬新なマシンの開発を、と願って、2回に渡るこの記事は終わることにしよう。

hr

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 気になりましたので、日本へ出願されている特許を調べてみました。
    出願人を「フェスツール」と親会社の「フェスト」で検索してみましたが、
    それらしい物は出願されていないようです。
    出願人が違うのか、売上げの少ない日本への出願は不要と判断したのか、
    はたまた作れるものなら作ってみろということだったりして。
    ユーザーとしては競合してもらって価格、機能、性能、入手性など
    選択肢が増えて欲しいのですが。。

    • mooseさん、わざわざ調べ上げてくれたのですか。

      DOMINOほどのユニークなマシンですので、国際特許は取得しているでしょうね。
      DOMINOに関する特許の文言は「Festool’s patented cutting method」などとネット上でもたくさん見つかります。

      因みに米国の場合は発足から20年の存続期間ですね(日本も同様)。

      こんな掲示板もありますよ(「When Festool’s patent on the Domino expires……」

      20年は長いですね〜。

  • そうですね、間違いなく欧州や米国での特許は取得済みでしょう。
    個人的にはエスプレッソで有名なイタリアのilly社のように無償で情報を公開する姿勢に共感しますが、この業界ではなかなか難しいでしょうね。
    DOMINOによって広がった加工の幅を利用してユーザーメリットに繋げていきたいと思っています。

    • illy社のエスプレッソマシンですか、とてもスタイリッシュなマシンというイメージでしたが
      無償での情報公開ということは知りませんでした。
      興味津々。使ってみたいですね。

      私もIT関連においては、Linuxはさっぱりですが、Firefox、Thunderbird、あるいはこのBlogのWordPressなどはいずれもオープンソフトで、好ましく思い、積極活用させていただいているところです。

      私もDOMINOに関わる記事を上げるに当たっては、その活用法なども公開すべきところでしょうね。
      ありがとうございました。

  • 突然の質問で申し訳ありません。以前からフェスツール商品がきになっているのですが、海外通販では購入することが出来ず、困っております。アメリカ在住の友達がいるのですが、頼んで送ってもらうことは可能なのでしょうか?

    • ムラマツさん、何度もコメント入れていただきスミマセン。
      お初のコメントと思われますね。最初だけ管理者による承認手続きが必要ですが、これ以降は即表示されます。

      さて、Festool社製品の個人輸入ですね。
      仰るように、他社製品とは異なり、Festool社のものは国外への輸出に規制を掛けているようです。
      しかしながら、個人輸入は可能だと思います。

      米国からの輸入はいくつかの方法がありますが、友人に依頼して買い求めるのは良い方法ですね。
      また、米国内で展開しているいくつかの個人輸入代行業者を介して輸入することも、まったく問題ありません。(これはネット上に多くの情報があります)

      ただこれらの場合、製品保証の問題がやっかいになりますことは言うまでもありません。

  • コメント何度も入れてしまいすみません。
    いつも悠悠さんのブログを見て
    勉強させてもらってます。

    早速の丁寧なコメントありがとうございます!
    友人に頼んでみる事にします。
    なるほど、個人輸入代行業者という手もあるのですね。
    参考になりました!

    • ご友人に手配いただけるのが、もっとも安心な方法ですね。
      Festool社のものを取り扱っている米国内Web店舗もたくさんあります。
      amazon.comなどもその1つですが、価格的には1つの基準になろうかと思います。
      (3年間でずいぶんと値上がりしていますね)

      どうぞこれからも気安くコメントください (^_^)v

  • はじめまして。おはようございます。
    DOMINOで検索していてこちらにたどり着きました、
    趣味で家具作りをしている36歳の素人です。
    コメント失礼いたします。

    DOMINO、素人にはかなり高額な機器の
    部類に入りますが、とても興味深いですね。

    実家の父がペティワーク・ワタシがDELTAの角のみを
    持っているのですけど、なぜか昇降盤がありません。。。

    なのでホゾを実験したとき、メス側は角のみで容易なのですが
    オス側の精度を出すことがナカナカ難しく
    結局ダボでやっちゃったりしています。(つい最近)

    そんなんで中古の昇降盤の購入を検討していたところに
    DOMINOの存在を知り、心揺れています。
    昇降盤買っても使いこなすには技術的なスキルアップが
    求められるのだろうからな〜 とか考えると、機械に
    できることならやらせてしまえば・・・なんて考えたり。

    優先順位で考えればやっぱり昇降盤でしょうか?

    これからちょくちょく拝見したいと思います。
    よろしくお願いします。

    では〜♪

    • do、さん、ようこそ ! 初コメントの方ですね。

      〈DOMINO〉を刺激的に解説してしまう、というのも、
      功罪 両面あるかもしれませんね。

      確かに欧米では比較的一般的なモータイザーという機械に替わる、
      高機能なものあるにもかかわらず、ポータブルマシンですから、魅力たっぷり。

      ただしかし、昇降盤と並べた場合、まずどちらを選択するか、といえば、
      やはり〈DOMINO〉は後回しになるでしょうか。

      昇降盤は圧倒的に高い汎用性を持っていますからね。

      価格的にも、〈DOMINO〉の購入金額に少し加算する程度で、
      中古の昇降盤が入手できるかも知れません。

      では、大いに木工を楽しんでください。

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