工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

IKEA商品群への評価は・・

製造会社を明記した上での商品の評価というものは、なかなか難しいものがある。
しかしこのIKEAの商品群というものは、徹底したコストカットでは世界大的規模においての業界の雄であるだろうから、様々な家具制作のスタイルの中での一方における象徴ということでこれを適正に評価することは重要なことだと考える。
またIKEAという企業規模からすればある種の社会的公器としての位置づけがなされて然るべきでもあるだろう。
さて、こんな怖じけた前振りで始まったが、しかし驚くね。
家具制作に従事しある程度の内部事情に知悉している者として、やはりその価格設定について目を見張るものがあるのは事実だ。
例えばIVARという椅子の場合、わずかに¥2,490。
最も廉価なものの1つだが、一応は無垢のパイン材が使われている。
流通コスト、原材料費を除けば果たしてここから製造経費を賄えるものなのだろうか。
確かに組み立てはユーザー側に負担させることが基本のIKEAではあるし、学童椅子のようなチープなものではあるが、一応は椅子の機能は持っている。
ポエング アームチェアあるいはポエング アームチェアという天童木工ばりの積層合板でのリラックスチェア(画像右)なども、なかなかくつろげる良品と思われたが、これも8,000円台から様々なバリエーションで展開されている。
材種はバーチ材突き板とあるが、フェイスがバーチで芯材は何だろう?
また意外に充実しているのがキッチン周りだが、いわゆるシステムキッチンも30万円台から様々に取りそろえる。バブルの頃であれば数百万もしたようなイメージのもので若い女性には強く訴えるのだろう。
北欧企業の設計とあって、スライドレールなど機能性豊かな金具もふんだんに使われているようだ。


ただしかしワークトップを手で触れば、そのほとんどを見たこともないような材種の集成材で構成されているが、大きくでこぼことうねっていた。
恐らくは集成材を製造する際の含水率の不均衡からくるものと、加工途上の品質管理の荒さからのものだろう。
あるいは書棚、カップボードなどを確認すれば、素材の荒さ、加工における徹底した合理性追求(加工プロセスの単純化)からくる味気なさは、普段のボクたちの感覚とは異次元のものと映ずるのは仕方がない。
しかし遠目には専属のデザイナーを置いただけあり、また優れたマーケティングによる成果もあるのだろう、価格を超える品質イメージを提示していると言って良いだろう。
部屋丸ごとちょっと真似できないな、と思わされるのは皮革のソファ。
2人掛けであれば100,000円台からあるのだが、決して安っぽさを感じさせない。
ただソファについては如何に皮革の仕上げがよく見えるとはいっても、問題は内部のクッション。
つまりその弾力性、堅牢性が大切だが、どれだけ信頼がおけるのかは不明。
なお前後するがポエング アームチェアの成形合板のフレームについてだが、一般には左右のフレームは一体成形が当たり前のところ、ここでは中央でジョイント金具で接続されている。
これは運送コスト、倉庫管理経費ををカットするためのものであろうが、“そこまでするか”、という感じではあった。
他にも確認したいことはあるが、わずかに1時間ほどの視察でもあったので、見落としも多々あるかも知れない。
いずれまた、と言いたいところだが、その機会は訪れないかも知れない。
学ぶべきものが無いとは言わないが、しかし人生はあまりにも短い。
このIKEAの他にもっと見なければならないものは多い。
このIKEAからの帰路は、雨に当たったせいもあるのかも知れないが微熱が出てしまった。食傷って奴だったかも知れないと今では思う。
でもレジ前で買ったスモークサーモンは、さすがに旨かった。
そして来月8月1日には第4号店、大阪はIKEA鶴浜店がOPENする。
11月には埼玉、新三郷に OPEN(予定)

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  • こんにちは!
    IKEAの価格設定は、驚異という以前に本当にどうなっているのか不思議ですよね。凄い世界だと思います。
    このポエング、日本の中村さんのデザインというのはご存じですか。マルムステンと、コンストファックで学んだ方です。まだ僕などは生まれてもいない時代です。

  • Ikuruさん、こんばんは。
    ポエングはあの中村昇さんのデザインでしたか。
    1975年のリリースですから30年以上のロングヒット。
    着せ替えというのも人気のヒミツかな。
    なるほど、ですねぇ。

  • 確かこの椅子はIKEAで一番たくさん売れた製品だったはずです。元々は違う名前だったのですが、ちょっと失念。

  • 『北欧スタイル』(07/12)のIKEA特集にこのポエング開発エピソードがあるようです。(中村さんのWebサイトより)

  • 食傷というより拒絶反応じゃないですか?
    家の近くの、確か人工スキー場の跡地に船橋店が
    ありますが、行った事がありません。
    私も人込みは好きな方ではないので今後も行くことは
    ないと思います。

  • acanthogobiusさん、あなたもずばり言ってくれますね。(爆)
    いえいえ、ボクは至って俗物ですので、人の関心のあるものには目がない。
    スモークサーモンが旨かったので、次回はワインとサーモンマリネでも(そんな話しじゃないか?)

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