カタログハウスの商品開発力とは
さる7月2日、『株式会社 カタログハウス』の商品開発室 室長・堀本 卓 氏の講演を聴く機会にめぐまれた。
ボクはいかに著名な会社であっても、よほどの内容でもなければこうした企業の講演などを拝聴するほど良い心がけを持つ者ではない。
しかも業務を離れられるほどスケジュールに余裕がある状況では無かった。
しかし、この『カタログハウス』は、ボクにとってはそうした不義理、あるいは制約を超えてもぜひ拝聴せねばという意識にさせる何ものかがあった。
恐らくはこのBlog読者の少なくない人たちにとってはなじみ深い社名であり、また実際に定期刊行物を購読し、紙面からお気に入りを見つけては発注した経験もおありだろう。(あの和田誠さんによるユニークなロゴは見覚えあることだろう)
つまり雑貨、電化製品、ファッション etc、様々なものを取り扱う通信販売会社であるが、競合他社が少なくない中にあって、なぜに「忙中閑 ! 」などと自己に言い聞かせながらいそいそと出掛けることになったのかには、いくつかの理由がある。
・古くからの購読者(=通信販売利用者)であった(ボクより、妻の方だが)
・その取り扱い商品のユニークさ(他のところでは取り上げられない品々)
・社風のユニークさ
・『カタログハウス』誌のユニークな紙面構成
といったような国内通信販売会社として図抜けたユニークな商品開発方法、販売方法、そしてそれらに貫かれる社風というものは、ミーハー的な興味も手伝って、ぜひ知っておきたい、この機会を逃すまい、と言うことになってしまったのだった。
会場は「静岡県工業技術研究所」。主催は「ユニバーサルデザイン工芸研究会」
講演は前段、「ユニバーサルデザイン工芸研究会」の研究テーマの紹介、スタッフの紹介などがあった。
その後の約1.5時間ほどの時間枠で「カタログハウス商品開発の実際」とタイトルされた講演になった。
商品開発室 室長・堀本氏の話しはとても興味深いものがあった。
冒頭、堀本氏自身の入社時に感じさせられたいくつかのユニークな社風の開陳にはのっけから惹き込ませる要素に満ちていた。
社内の議論、提案などは口頭ではほとんど上司からは省みられず、全ては文章化して行われる。
社員の多くは中途採用で、またそれらのプロフィールの多くが何らかの表現者として活動してきたような人たちであるらしい。
商品開発とは言っても、驚く無かれ、決して市場分析はしないのだという。
何が今売れているのか、薄型TVが売れているらしいからそれを扱おう、といった提案などは、社内では最も蔑まれる対象という。
そうではなく、『カタログハウス』が扱うにふさわしい王道をいくための研究開発が重要。
そのためには、多くの文献、紙誌を読み漁り、アンテナを張って、『カタログハウス』が責任を持って提案できる高品質なものを探し出してくる。
ご存じのように、そうした商品を実際に使用している著名人にカタログに出てもらい、その「個」の語り口で需要を喚起する、あるいはより客観性と説得性を持たせるためのその商品の納入実績を併記する。
こうしたいくつかの独自の商品開発の手法と企業理念のユニークさというものは、ボク等にとっても多くの示唆を受けるものであるように思えた。
他社の真似事はしない、既成概念にとらわれない、個性を大切にすること、つまりは普遍性を求めるということに繋がる話しであろうと思う。
(講演で用いられた資料の多くが「社外秘」と赤く押印されたもので、ここでお披露目するには憚れる内容であるため、直裁には語れないのが残念である)
ところで、今回の講演内容の対象ではなかったが、ボクが評価する『カタログハウス』の社風のユニークさのもう1本の柱が、リベラル、反戦平和とのガチンコ編集構成であることは触れておかねばならないだろう。
しかし多くを語るつもりはないので、最新号の目次だけを上げるに留めよう。
・深刻化する日本の貧困問題を考える
・「死刑制度」は存置すべきですか?廃止すべきですか?
・「会計検査院」は税金の使い方をどこまで監視できているのだろうか
・松崎菊也の公共事業クイズ
・フェアトレード応援企画「途上国の女性がつくっている食品を買う意味」
・できるだけ原発に頼らない生活「市民風車に出資しませんか」
・イラクとドイツ平和村の子どもたちにカンパを
etc.etc
講演を受けてあらためて紙面を繰れば、とても興味深い記事が満載。
あるいはセミナー開催、対談、インタビュー、等々。その多くは確かに環境問題だったりするのだが、それらも決して肩肘張ったものというのではなく、視点がユニークで、また読みやすく、説得性も豊かで、共に考えようというスタンスであるところが良い。
最後に明かすと、実は「定期購読」とは言っても、勝手に送ってくるのだね、これが。
基準がどこにあるのかは知らないのだが、ある程度商品購入の実績がある客を対象に無料配布しているのだろう。
(無料配布とはいっても、内容の薄っぺらさは微塵もない。濃厚な記事が盛りだくさん)
*参照
■ 株式会社 カタログハウス Webサイト
ユマニテ
2009-7-5(日) 18:46
以前大好きだったラジオ番組にゲスト出演した
いとうせいこうさんの話に感銘を受け
カタログハウスでビルマ民主化支援Tシャツを買いました。
あのアンダーカバー製作なんです。
私のお気に入りの一枚です。
artisan
2009-7-5(日) 22:37
ユマニテさん、いとうせいこうさんの「ビルマ民主化支援Tシャツ」買っちゃいましたか。
ボクたち生活者が海外での様々な不当な問題に関われることは限られていますし、そうした行為は小さなものかも知れませんが、しかし寄せ集まることで大きな力になりますし、カンパをするという意識の在りようは、自己への問いかけを通し、同じ時代に生きる他者への想像力を喚起させるものとしてとても健康的だと思いますね。
因みに本文に上げた「イラクとドイツ平和村の子どもたちにカンパを」の募金額は、現在1億2,400万円。
ドイツ平和村へのカンパは3億近くになろうとしています。
社会、政治関連組織によるものではなく、雑貨商品を扱う1営利企業が主体となっているところがおもしろいよね。