工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

再進出のIKEAに行ってみた

IKEA港北店を訪ねる機会があった。
わずかに1時間ほどの視察であったが、なかなか楽しめた。
広大な敷地を持つ2階建ての店舗だが、主要な商品を展示してあるのは2階。1階は買うべき物が決まった客がセルフで搬出する巨大なストレージとレジ、他にグリーン、飲食施設などがある。
したがって家具を展示するのは1フロアであるが、どれだけの広さがあるのか不明だが、かなりのものである。
元は「ヤナセ横浜デポー」という施設があった場所だそうだ。
視察とは言っても日曜日という繁忙日のためとても混雑していて、人いきれで疲れてしまったこともあり、わずかに1時間ほどのものだったので、詳細な紹介をするほどのものでは無い。
ただ雑誌などでの紹介記事、あるいはIKEAのWebサイトからだけでは伺えない現場視察ならではの獲得物も少なくなかった。
まず何よりもそれは、上述したようにまともな通行もままならないほどの混雑ぶりに示される人気スポットになっていることの実感である。
昨今、さっぱり家具が売れない、国内工場は疲弊する一方、といった消費不況とは一体どこの国のこと?とほおをつねりたくなるほどの“好況”ぶりを見せつけてくれていた。


つまり家具の需要が急激に落ち込んできているのではないのかということは産地でもある当地の見本市への出展企業の減少傾向、あるいはバイヤーの来場数の低減から明白に感じさせられることだし、また工房家具と言われるボクたちの周りでもそうした傾向から免れているわけではないことも確かなことであるが‥‥、
しかしIKEAのこの盛況ぶりを見る限りでは、どうも家具需要が一律に落ち込んでいると見るのは果たして本当なのだろうかという疑念に襲われてしまう。
これはしかし当然と言えば当然。
消費者は確かに購買意欲においてかつてほどに勢いは見せないとはいえ、家具を必要としなくなったのではなく、若い年齢層、特に新しく家族を構成したニューファミリーと言われる若年ファミリーを中心とし、ネット販売なども含め、良質で廉価な家具を探す資質を持ちつつあり、その購買方法の多様化にビビットに対応してきているのだろう。
そうした消費者を対象としたマーケティングをつぶさに分析し、莫大な資金を投入したこの度の再度の日本進出となったのだろう。
IKEAの家具販売の特徴である、セルフビルド、持ち帰り、をむしろDIY感覚で楽しめる若い購買層にターゲットを絞り、世界市場を相手として積み上げてきた膨大で緻密なマーケット戦略に裏付けされた商品群の展開はある種成功を約束されたものであったのかもしれない。
家具が売れない時代にもかかわらず、何故か書店にはインテリア雑誌は花盛りで、若年層にも北欧家具はちょっとおしゃれで、クール、といった情報は意外にも知れ渡っていることなのかもしれない。
この本場からやってきたIKEAともなれば、実は生産拠点が例え東南アジアでのものであったとしても、ある種の信頼性を託し、購買意欲が掻き立てられるのは理解できるところだ。
いやいや、IKEAは決して世界市場のスタンダードをそのまま持ち込んできたわけでもなく、日本の住宅数百軒を訪問し、日本人の望むインテリアについて徹底したリサーチを行い、出展準備をしてきたというから客が大挙して押しかけるのも理由があろうというもの。
具体的な商品についての評価はあらためてにしたいと考えているが、IKEAの商品展示において特記すべきこととしてまず上げねばならないのは、例えばある規模のダイニングキッチンのモデルルームを設え、ここにシステムキッチン、カップボード、ダイニングテーブル、チェア、あるいはまな板1枚に至るまで、丸ごと全て、ハイ、150,000円です !
という部屋単位での価格設定をしている点である。
ダイニングセット1セットいくら、というのではなく、部屋丸ごといくら、という単位。
これには口あんぐりで、言葉を失う。
IKEAストレージ
これらを購入したいと思う客は店内至る所に置かれているショッピングリストに、その商品のIDを書き込み、1階の商品ストレージへと向かい、極限的にコンパクトに納まった(フラットパック)目的の商品を自分で探し、キャリアに載せレジへと向かう。
レジでは「IKEA FAMILY」カードを提示し、決済の後、自身でキャリアで駐車場まで運ぶ。
こうしたシステムであることは知ってはいたが、実際に間近にこれを見せられるとあらためてその合理性と低コスト化へのあくなき追求というものに感じ入る。
IKEAの経営戦略についての分析は海外でも盛んに行われているようだし、国内経済誌にも探すことは出来るだろう。またWebにも興味深い裏話が転がっているので、それらを参照するのも良いかも知れない。
しかし‥日本の消費者がスウェーデン、オランダの企業経営者へとせっせと円をつぎ込んでいる姿というものは、少し悔しいじゃないか。
*画像はIKEA港北、1Fストレージ(セルフサービスエリア)

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  • とはいえ、まだ見たことが無いので
    一度、行こうと思ってますわ。
    なるべく、空いているときを狙って。
    まあ、実際に買うものは無いでしょう。
    「見てるだけー!」

  • IKEA港北は火曜、木曜の午前中が比較的すいているそうです。
    皮革のソファ、買って試してみていただきたいですね。 kentoさん。

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